つれづれなるままに~どうぞ良いお年を~
●「シネマ『お早よう』デジタル修復版」を録画して見た。
小津安二郎監督の映画。
この映画には、当時の名優美男美女である佐田啓二と久我美子が出ている。
久我が、佐田の家に通い、翻訳の仕事を頼んでいる関係である。
この映画の最後の方で、2人の会話が交わされる。
駅で待っている場面。たまたま一緒の電車に乗る2人は、ばったりと出会う。
そこで次のような会話。
佐田「ああっ 良いお天気ですね」
久我「ほんと 良いお天気」
佐田「この分じゃ この天気は2,3日続きそうですね」
久我「そうね 続きそうですね」
佐田「あの雲 おもしろい雲ですね」
久我「ああっ ほんとおもしろい形」
佐田「何かに似ているな」
久我「そう何かに似ているわ」
佐田「良いお天気ですね」
久我「ほんとに 良いお天気」
これだけ。
会話は、ただ佐田の発した言葉に久我が同じ言葉を繰り返しているだけ。
でも、この場面から2人は「愛し合っている」のだという雰囲気が浮かび出ている。
「愛している」という言葉はないが、「言葉のくり返し」が「あなたを愛しています!」という表明になっているのである。
小津監督の、この映画のテーマがここではっきり示されている。
★
小津監督は、つくった作品はほとんど人々、家族の日常の生活を描くことで成り立っている。
見る人にとっては、「何だよ!こんなことばかりでつまんないじゃん!」となる。
もっとそこにドラマを描き出してほしいと期待しているのである。
しかし、目を見張るドラマはない。淡々と人々の日常が描き出されていく。
こんな作品だらけで、小津監督は「世界の小津!」と言われるまでにかけあがっている。 小津安二郎は、この人々の日常生活の中に「人間の本質」があるのだと問いかけたのである。
★
「言葉のくり返し」に戻ろう。
このくり返しを、私は「くり返し話法」とネーミングしている。
教師の場合、問題場面に立ち会う。
問題の子供の呼んで、話を聞く。
そのときに、ついつい「どうしてそんなことをしたんだ!」とか「また同じ事をやってなんでそうなるの?」とやりがちである。
子供は黙り込むようになる。
こんなときに必要なのは「くりかえし話法」になる。
まず、話を聞いて、おなじことをくり返していく。
「あの子とケンカになったのはいつのことなの?」
「今日の休み時間」
「今日の休み時間にケンカになったんだ」
「どこでケンカになったの?」
「あの鉄棒のそばで」
「あの鉄棒のそばでケンカになったんだね」
「なぜケンカになったの?」
「だってあいつオレのことをバカって言うから!」
「そうなの!ばかっていうからケンカになったんだね!」
…………
こんな具合である。
まだるっこいやり方である。
でも、頭ごなしに叱りつけていない。
このくり返しのなかで、教師は、話の子供に「信頼」のメッセージを送っている。
子供は「この先生、信頼できるな!」と。
●こうして今年が終わっていく。
私は2週間ぐらい前から座骨神経痛がぶり返している。
何とか歩くことはできるが、右足のふくらはぎが痛む。
整形に行って、痛み止めの薬をもらって飲み出した。
また、ストレッチなども行っているが、今のところなかなか回復しない。
何とか新年には回復してほしい、と。
今年も、このブログに付き合ってもらい、ありがとうございました。
どうぞ良いお年をお迎え下さい。
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