つれづれなるままに~「ひとりぼっち」になる効用~
●ふと、NHKの「うたコン」を見る。
そこで、歌手の菅原洋一さんの歌を聞く。
8月で90歳になるという。
驚いた。
若い頃の菅原さんの朗々とした歌声ではないが、決して衰えていないのである。
90歳になれば、ほとんど歌の声は出てこないはずである。
それが、90歳の歌声を響かせておられる。
ネットでは、次のように出ている。
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8月で90歳になる歌手の菅原洋一が6日に放送されたNHK総合「うたコン」に生出演。1965年のヒット曲「知りたくないの」をピアノ伴奏のみで熱唱。生涯現役を貫く「菅原洋一さん」がSNSでトレンド入り。「これだけ声が出るのは驚異的」「驚きでしかない」「めっちゃ色気ある声」などの声が相次いだ。
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修練をされているのであろう。
目標があると、その努力ができる。
●「ひとりぼっちとバカにされている!」と思っていた。
4人を殺害した31歳容疑者の言葉である。
「ひとりぼっち」でいることがひどいコンプレックスになっていたわけである。
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4年目になるコロナ禍で、多くの人が自宅への「ひきこもり」を経験したことになる。
私もまたそのひきこもりをしてきている。
要するに、「ひとりぼっち」の経験を数多くしたわけである。
何か不都合があったのだろうか?
私は、このひきこもりの経験は良かったのではないかと思っている。
だって、一人になるというのは、自分と向き合う経験を始終することなのであるから。
ただ、その一人になるという経験を、更なるコンプレックスの深化につなげていくならば意味がないことではあるが……。
かつて思想界の巨人と呼ばれた吉本隆明さんが、15歳の男女4人に対して1年にわたって小さな寺子屋授業を続けられたことがある。それが、1冊の本『ひとり』(講談社)にまとめられている。
吉本さんも、子供の頃、人と話すのが苦手であった、と。
そして、次のように語っておられる。
「 あの人は何もいわないけど、本当は気持ちの中で自分によく問いかけ、自分でよく応え、それを繰り返している。それは言葉に表さなく
ても、行動に表さなくても、心の中でそういうふうにしてるってことがある。
人は誰でも、誰にいわない言葉を持ってる。
沈黙も、言葉なんです。
沈黙に対する想像力が身についたら、本当の意味で立派な大人になるきっかけ
をちゃんと持ってるといっていい。
僕は、うまく伝えられなかった言葉を紙に書いた。届かなかった言葉が、僕に
いろんなことを教えてくれた。自分や誰かの言葉の根っこに思いをめぐらせて、
それを知ろうとすることは、人がひとりの孤独をしのぐ時の力に、きっとなる
と思いますよ」
人と群れることばかりに逃げないで、一人ぼっちになって自分と向き合い、沈黙に対する想像力を持つことなのである。
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そんなときに鷲田清一氏の「折々のことば」(朝日新聞に毎日掲載されている)に次のようなことが載せられている。
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「生まれるときも一人、死ぬときも一人、だから生きているときも一人でいるように」
笑福亭松之助
離れて住む高校生の次女が、友だちが持っているテープレコーダーを私も欲しい
とおねだりしてきた時に、噺家はお金に添えてこう書き送った。誰かが持っている
からではなく「自分が欲しいと思ったから、買ってほしいというようにしなさい」と。
落語、舞台、テレビ、映画の世界で人熱れに年中もみくちゃになっていた人の言葉である。『草や木のように生きられたら』から。
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●読書の欄(2023.6.26)に次のような投稿が出されていた。
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「臨時免許」で教員できるなんて
高校教員 S (千葉県 60)
6日付「教員不足『臨時免許』の先生頼り」を読み、「教員免許更新制度」への
怒りを思い出しました。昨年7月、13年間にわたって実施されてきたこの制度
がやっと廃止されました。この間、私たち教員は、自腹で3万円を払い、免許を
更新してきました。免許を失えば教壇に立てなくなるからです。
にもかかわらず、正規免許を持つ人を確保できない時は、人手不足だから3年
間の「臨時免許」で教壇に、とはふざけているとしか思えません。教員免許を取
得してない方でも「臨時免許」で教師ができるのなら、あの免許更新や大学での
教職課程は一体何だったのでしょう。
これだけ教員不足が深刻化したのも文部科学省の無策のためです。企業が人材
確保のため待遇や労働環境、募集方法を改善してきたのに、文科省や教育委員会
は教員希望者を増やすために何かしましたか。やる気と使命感で教師は働くと、
何人教師が倒れても希望者が減っても、十分な対応をしてきませんでした。
周りにも月100時間超の残業をしている教師がいます。やっと処遇改善の議
論が始まりましたが、取り返しがつかないこともあるのです。
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まったくもって、その通りである。
免許更新制で夏休みに免許更新を受けてきた先生たちは、この臨時免許で唖然としたことだろう。
あまりにもお粗末である。お粗末すぎる。
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