「策略 ブラック仕事術 誰にも言えない手抜きな働き方」(中村健一著 明治図書)をお勧めします!
「策略 ブラック仕事術 誰にも言えない手抜きな働き方」(中村健一著 明治図書)を読んだ。
この本はブラックシリーズの最後の本(?)になるのだろうか。
次のように書いてある。
「『ブラック』シリーズも、本書で9冊目である。毎年、夏休みに1冊ずつ書き続けてきた。だから、もう9年も書き続けてきたことになる。
今年52歳だから、44歳の時からかあ。まさに、私のライフワークと言える作品だ。『ブラック』と書いている間に、私も歳を取ったもんだ。
『ブラック』シリーズが続いたのは、売れたからに他ならない。売れない本は、消えていく。たまたま売れたから、続いたのだ。シリーズ累計は、10万部に迫っていると聞く。本当に有り難いことである」
シリーズ累計が9冊で10万部というから、ものすごく売れたことになる。
教育書では、1万部売れたら、もうベストセラーの部類に入るといわれているので、大変な売れようである。
それだけ興味をひかれた本であったということになる。
この一連の本を読んで、救われた先生たちは数多くいるだろうと思われる。
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この本は、「ブラック」というネーミングが惹きつけたものである。
このような本は、教育界では初めての本。今まで見たこともないものであったことは間違いない。
なぜ、中村健一先生は、このような本を出すことができたのか。
私が考えたことはそこであった。
今までの学校現場を、「家の構造」で喩えてみると次のようになる。
家の「1階」で先生たちは生活している。
その中の一部の先生が、「2階」に上がっていく。
その先生たちは、教育に対する熱意があり、問題意識があって「2階」に上がる。
その2階で、出されている教育本を盛んに読み、セミナーや研修会に参加し、熱心に勉強をする。
その先生たちの一部が、今度は「3階」へ上がり、セミナーの講師を務めたり、本を出したりする。
喩えの話で申し訳ないが、簡単に言うと学校現場は、このような構図になっていたはずである。
この構図の中で、健一先生は、どうしたのか。
2階へは行ったのである。
ブラックシリーズには、そのようなことが書いてある。
だが、健一先生は、それから3階へは上がらず、1階へ下り、さらに「地下」へ下りて行ったのではないか。
その地下で、このブラックシリーズが書かれている。
私の仮説はこうなる。
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今まで学校現場に「地下」という発想があったとは誰でもがまったく予測できなかったことなのである。
健一先生は、「ブラック」と「策略」という言葉と共に地下へ下りていったのである。
その地下でブラックシリーズは書かれていった。
なぜ、そんなことができたのか?
ここには困難校での経験が強くあるのではないか、と私は思われる。
この困難校で、今まで出されてきた教育本が、ほとんど通用しないという経験をされたのではないだろうか。
熱意のある先生たちが鬱病になり、休職したり、辞職していったりする現状に健一先生は絶句したはずである。
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このブラックシリーズで明らかになった、大きな課題が1つある。
今学校現場で、第1のターゲットにすべきは、保護者対応だということ。第2に、子供対応だということである。この順番になる。
今まで(今も)、学校現場は、文科省や教育委員会の行政によって動いてきた、と先生たちは思ってきたはずである。
もうそんなものはなくなっている。
行政が、学校現場を支える存在としては、もはや機能しなくなっている。
学校現場が抱え込んでいる最大の問題を、もう行政が解決できないのだと分かってきている。
今、学校現場を動かしているのは、第1に保護者であり、第2に子供たちなのである。
そこをはっきり健一先生は、このブラックシリーズで明らかにされた。
私は、画期的なことだと、思った。
そこをうまく対応できなくては、もう学校現場では生き抜いていけなくなっている。
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今回のブラック本も、相変わらずの健一節で「策略」を書かれている。
参考になる実践は多くある。
それにしても、学級通信を「ほぼ毎日」、昼休みに子供たちと遊ぶのを「ほぼ毎日」というのは恐れ多いことである。
本来、52歳のベテラン教師ができることではない。
学級通信は、保護者対応を考えられていること。
昼休みの遊びは、子供対応を考えられていること。
今、保護者に対して、何を、どのように対応すべきかはこのブラック本から学んでいくべきである。
「トラブルが起きた時、真っ先に考えなければならないのが、『保護者の怒りを買わないこと』である」
「『初期対応のポイントは、素早い対応。そして、相手が思うより一段上の対応である』」
「『気持ちよく終わるためにも、子どもにお灸をすえるためにも、最後は保護者をヨイショして終わろう』」
これらはすべて保護者対応の極意である。
また、学級崩壊にあわないクラスをつくるというのも、この本から学んでいくことである。
『学級づくりは4月が全て!~最初の1ヶ月死ぬ気でがんばれば、後の11ヶ月は楽である』
『手を抜くためには、学級崩壊させないことが一番大切だ』
『学級崩壊は、担任と子どもたちとの人間関係の崩壊なのである』
『学級崩壊しないためには、教師の笑顔が必要なのだ』
これらも子供対応の極意である。
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このブラックシリーズが、学校現場に与えてきた刺激は、大変なものだった、と私は思っている。
この本を読んで、ぜひとも先生方が過酷な学校現場を生き抜いていってほしいと願っている。
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