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死体を煮ている~ごんぎつねの場面で~

 『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(石井光太著 文藝春秋)を読んでいる。
いろいろ考えさせる、衝撃的な本である。
 読みながら、戸惑っている。

 その箇所は次のこと。
序章の最初に紹介して事例である。
 「『ごんぎつね』の読めない小学生たち」。

 石井さんが都内の公立小学校から講演で呼ばれた折に、国語の授業見学をさせてもらったときのことである。小学校4年生のクラス。
子供たちの発言に耳を疑うような発言が飛び出した、と。

 授業で取り上げられたのは、ごんが兵十の母親の葬儀に出くわす場面。
 教科書はこうなっている。
 ★ ★ ★
 よそいきの着物を着て、腰に手ぬぐいを下げたりした女たちが、表の
 かまどで火をたいています。おおきななべの中では、何かぐずぐずに
 えていました。
 ★ ★ ★

 担任は、生徒たちを班に分けて「鍋で何を煮ているのか」などを話し合わせた、ということ。

 出てきた意見は、次のこと。

 「この話の場面は、死んだお母さんをお鍋に入れて消毒しているところだと思います」
 「私たちの班の意見は違います。もう死んでいるお母さんを消毒しても意味がないです。それより、昔はお墓がなかったので、死んだ人は燃やす代わりにお湯で煮て骨にしていたんだと思います」
「昔もお墓はあったはずです。だって、うちのおばあちゃんのお墓はあるから。でも、昔は焼くところ(火葬場)がないから、お湯で溶かして骨にしてから、お墓に埋めなければならなかったんだと思います」
 「うちの班も同じです。死体をそのままにしたらばい菌とかすごいから、煮て骨にして土に埋めたんだと思います」

 石井さんは、次のように書いている。

 「当初、私は生徒たちがふざけて答えているのだと思っていた。だが、8つの班のうち5つの班が、3,4人で話し合った結論として、『死体を煮る』と答えているのだ。みんな真剣な表情で、冗談めかした様子は微塵もない。この学校は1学年4クラスの、学力レベルとしてはごく普通の小学校だ」

 ★
 「おい!おい!」となる。
 ここに書かれていることへの違和感。
 最初「ほんとなのか?」と疑った。
 私が現役でいたときの15年前には、こうした発言を子供たちがすることはまずありえなかった。これは断言できる。
 
 問題は2つ。
 まず、1つ目は、ここでの担任の課題(発問)「鍋で何を煮ているのか?」はひどいものである。
 「ごんぎつね」では、こんなことを問うていくことではない。
 些末なこと。

 2つ目は、子供たちの発言。
 子供たちは勝手に想像して答えている。
 こんな答え方をさせてはならない。

 国語では、文脈を読み取っていくので、「ここでは○○と書かれているので、○○と思います」という発言をさせなくてはならない。
 書かれている文脈を根拠に答えていくのである。

 勝手に想像したことを発言させることは、国語の授業ではない。
 これでは、読解力はつかない。

 それにしても、その想像したことがあまりにも想定を超えている。
 これはなんとしたことか?
 どうしても、ほんとうなのかというのが疑念として残る。

 石井さんは、次のように答える。

 ★ ★ ★
 おそらく私にとって初めてのことなら、苦笑いして流していただろう。だが、似たような場面に出くわしたのは一度や二度ではなかった。
 ★ ★ ★

 石井さんは、この10数年ほど毎月、全国のいろんな教育機関を訪れ、実際に授業に参加させてもらったり、教員や保護者と語りあったりしている。そこで、たびたび同様なことを目撃していた、と。

 また、講演会が終わって、校長室でこの「ごんぎつね」についての校長の話が書かれている。30年以上の教員経験があり、国語を専門にしている校長。

 ★ ★ ★
 今日のケースは少々極端でしたが、最近は多かれ少なかれあのような意見が出るのは普通です。教員もそれをわかっているので、先ほどの授業でも班になって話し合わせたのでしょう。それでもああいう回答になってしまったようですが……。残念ながら、似たようなことは、私も他の学校でしばしば経験してきました。
 ★ ★ ★
 「おい、おい、おい!」と言うことになる。

 現場は大きく変わっているのだ、と。
 もしこのようなことが普通に起こっているとしたら、子供たちの中で大きな地殻変動が起こっていると、判断する。

 この原因を、石井さんは、国語力の低下だと考え、それを追及をした本がこの書なのである。
 
 私は戸惑っている。皆さんはどうだろうか。

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