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教師の仕事は、種まきの仕事である!

 伊勢原小学校での授業の続編である。
 私の授業を受けた児童が家に帰って、保護者に早速報告したということ。
 「とてもおもしろい先生で、国語がとっても楽しかった、また来て勉強を教えてほしい!」と。

 その児童は、初めての人とは話がうまくできず、緊張してしまうと保護者からも心配だと言われていた、ということである。
 ところが、家に帰るなり、その児童がとてもうれしそうに野中先生のことを話してくれて、驚きましたと、次の日に報告に見えたと、教頭先生から連絡があった。
 
 担任の先生からも、その子については連絡を受けて、気にして授業に入った次第だった。

 1時間の飛び込み授業。多分もう二度と会うこともない児童との、1時間だけの出会い。

 前の日に送ってもらった座席表で、すべての子供の名前を覚えて授業に向かう。
 とくに、緘黙児童などは要注意である。

 授業の中で、「Aくん、そうでしょう?」といきなり名前を呼ぶと、「えっ、どうして知っているの?」と。
 「顔に書いてあるじゃない!」と言うと、その子は手で顔をしきりにふく。
その様子がなんともおもしろい。

 私は、かつて次のようなことを『学級経営力を高める3・7・30の法則』(学事出版)の本に書いたことがある。
 少し長いが引用したい。
 
 ★ ★ ★
 (3)小林先生の話
 私が小学校の3年生のときであった。担任の先生がお休みで、代わりに隣のクラスの小林先生が来てくれた。
 「今日は、お話をします」
 と言って話をしてくれた。今でもそのときの小林先生の身振りを覚えているくらいに、とても興奮するおもしろい話であった。ずっとそのときのことが私の心に残っていた。
 教師になって、そのとき小林先生が話してくれたのは『アリババと40人の盗賊』という本の内容だったことがわかったのである。
 おそらく、この小林先生の1時間のお話がなかったら、私がこうして子どもたちにお話をするということはなかったのだとつくづく思う。小林先生は、たった1時間で、私に種をまいてくれたのである。

(4)名前を知らないその先生の思い出
 小学校2年生のとき、私は、クラスで選抜されてラジオの歌番組(予選会)に出演したことがあった(よく思い出せないが、そんなものだったと思う)。隣の佐賀大学の附属小学校に朝早く出かけていった。
 私たちは、附属小学校の中庭で朝の待ち時間を遊んでいると、そこへ見慣れない先生と子どもたちがやってきて、
 「私たちは、ずっと山の方の学校から来たんだけど、町の子どもたちの遊びがどんなものか仲間にいれてくれないか」
 という申し出があった。もちろん、私たちは、承諾して、一緒に遊んだのである。
 そのときの先生のことがずっと忘れられなかった。なんと素敵な先生だろうと子ども心に印象づけられたものであった。
 ものの15分か20分ぐらいを一緒に遊んだんだろうか。
 それだけである。しかし、教師になってからも、その先生のことが私の心に残り続けた。
 名前を知らない先生である。しかし、私の心にその先生は、確かに種をまいたのである。
 
(5)教師の仕事は種まきの仕事
 小学校のあるとき、確かに2人の先生が私の前をしなやかな印象を残して通り過ぎていった。しかも、ほんの短い時間である。
 そのことを考える。
 お話をしてくれた小林先生。私がまだその話しぶりを覚えているほどに真剣であった。適当な話でお茶を濁すことはなかった。このことから子どもと関わるときには、真剣でならないことを教えてくれたんだと思う。
 一緒に遊びに加わってくれた先生。2年生の私たちに対して、<町の子どもたち>という一目おいた対応をしてくれた。そのことがとてもうれしかった。
 <子どもと関わる>ということの大切な何かをこの2人の先生は、体験的に教えてくれている。だからこそ、私の心の中にいつまでも残り続けた。
 私たちの教師の仕事は、種まきの仕事である。その種がどんな芽を出すのか、どんな花を咲かすことになるのかをほとんど見ることはできないけれど、それでも、子どもたちは、きっとどこかで自分の花を咲かせてくれるだろうという未来にかける仕事である。
 ★ ★ ★

 ★
 教頭先生から連絡があった、I 君のこと。
彼は、授業後の感想で、次のように書いている。

 「きょうは詩についての授業をしてくれてありがとうございます。谷川しゅんたろうさんの詩にかくされているひみつとかいろんなことが分かりました。本当にありがとうございました。」

 教師の仕事は、その子の未来にかける仕事なのである。
 
 


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