明日の教室講座での提案~「その日暮らし」の勧め~
コロナ後の学校現場がどうなっていくのか。
コロナ前に早く戻ってほしいと願っている先生たちは多い。
それでも、もとに戻ることはないと、私は思っている。
ますます困難度が増していく、と。
このコロナ禍は、先生たちひとり一人に「もう一度働き方を考え直せ」と突きつけたのだと考える。
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23日の明日の教室講座(ズーム)で、「その日暮らし」の働き方を提案した。
これは、これからの学校現場で生き抜いていく「働き方」なのである。
私は、ずっと困難校で教師を続けてきた。
その中で身に付けてきた働き方である。
①今日一日で勝負する。
②仕事を絞る。
③子供たちの前では、できるだけ機嫌良く振る舞う。
④子供とは「距離」をとる。
⑤早く帰る。
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この中で一番難しくて、なかなかできないことは、③になる。
「そんなに楽しくもなく、辛いことばかりなのに、機嫌良く振る舞うことなんかとてもできることではない!」と多くの先生は考えられる。
学級が荒れたり、難しくなっている先生たちの顔は苦虫をつぶしたような表情であったり、能面みたいな無表情であったり。
そんな表情を数多く見てきた。
機嫌良く振る舞うなんて、とても、とてもできることではない。
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講座では、大谷翔平のことを話した。
二刀流で、アメリカや日本で旋風を起こしたスーパースターである。
はなっから異次元の人だという思いがある。
ちょうど24日の9:00NHKは大谷翔平のことを特集していた。
4年間に渡って取材してきた特集。
それを見ると、子供の頃の大谷少年は、ひょろりとした、普通の野球少年。
目立ったところは何もない。
アメリカに渡っても、3年間は怪我などにあって不遇の時期を過ごしてきたのである。
4年目の今年が、二刀流の最後の時。
そう覚悟して大谷は始めたことを告白していた。
今年の大谷のスタイルは、機嫌良く振る舞って、周りを揺り動かし、敵の選手や審判をも惹きつけていた。
彼の機嫌良さは、天性のもので、性格の良さを印象づけていた。
だが、私は、それは天性のものではなく、意図的、計画的に演出され、それがいつのまにか普通にできるようになったものだと講座で説明をした。
この大谷翔平のスタイルは、学ぶに値する、と。
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先生たちも、子供たちの前で機嫌良く振る舞っていけば良い。
そうすると、子供たちは揺り動かされる。
「どうして先生はあんなに元気なんだろうか?」
「先生するって、あんなに楽しいことなのか!」
「勉強するって、ほんとうは楽しく、おもしろいものなのだ!」
最初はできない。
だから、教室を舞台に演じることである。
大谷が、球場を舞台に演じたと同じように、先生だって教室で子供たちを前に演じるのである。
それが、いつのまにか自然にできるようになる。
心理学は言っている。
「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる。」
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講座で質問が出た。
「④子供とは距離をとる」についてである。
以前、朝日新聞の「折々のことば」で鷲田清一さんが紹介してくれていたことを話した(2019.2.4)。
お前が絵を描くなら、文章を書くなら、このまちの住人になるなよ。距離を取れ。
陸前高田(岩手県)の写真館店主
鷲田さんは書いている。
「東日本大震災後、消防団長として復旧に尽くした写真館店主は、被災者の言葉を必死で写し取ろうと移住してきた東京藝大の院生(当時)・瀬尾夏美に、そう張りつめた思いを汲みつつも毅然とこう告げた。表現者は土地に密着してはならないと。これがのちの瀬尾の仕事の支えになった。……」
私は、教師もまた同じような立場であろう、と。
ほんとうにそのクラスに関わろうとするなら、そのクラスの子供たちにべったりと張り付いてはいけない。距離をとることだ、と。
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