半分の正答率しかない~全国学力テストの算数問題を見て~
全国学力テストの結果が、新聞報道(朝日新聞)されている。
正答率が悪い問題が、出されている。
直角三角形の面積を求める問題。この問題は5年生で学習する。
何のことはない問題である。
底辺を探し、高さを探し、「底辺×高さ÷2」で求めればいい。
答えは、6㎠。これでいい。
ところが、この正答率が、驚くことに全国平均が、55.4%。
およそ半分しか正答していない。
ということは、半分の子供たちは間違ったということになる。
何が起こったのだろうか。
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底辺はいつも下にあるので、底辺を5㎝としか考えられなかったのでないか。そう予想できる。
しかし、この問題は、三角形の面積を勉強する場合は、普通に練習問題にあるはずである。
そこで、東京書籍と教育出版と啓林館の5年生の教科書にあたってみる。
東京書籍は、この問題と同じような問題を練習問題として1問扱っている。
教育出版は、同じような問題はない。
啓林館は、まとめの練習のところで同じように1問を扱っている。
教育出版には、同じような問題はないが、東京書籍と啓林館は、その単元のところで1問だけは出されている。
問題は、教育出版はともかくも、1問だけ教科書で練習させて、子供たちに学力(長期記憶)として残っていくのかである。
残念ながら、結果は半数の子供が間違っているわけである。
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ここには、どんな課題が投げかけられているのか。
認知心理学でいう「領域固有性」という研究結果がある。
この領域固有性によれば、子供たちの認識の大部分は、状況にものすごく依存することが分かっている。つまり、あることで学んだことが他の状況では通用しないということ。
ここでは、三角形の面積は「底辺×高さ÷2」であることは分かるが、底辺というのはいつも下の辺にあるということが強く認識されてしまう。
ところが、全国学力テストの問題は、実際には、底辺が下にはない。
これは、子供たちにとっては、違う問題になってしまう。
彼らの認識では、「こんな問題習っていないよ!」ということになる。
東書や啓林館では、確かに1問題だけは教科書ではやっているが、記憶には残っていないわけである。
脳科学の法則によれば、同じ問題を最低3回練習すれば、長期記憶(学力)として残っていくと提起されている。
正答した半数の子供たちは、学習塾かその他の方法で、練習問題として3回以上練習をして長期記憶として身に付けたことになる。
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私たちが行ってきた「算数学力向上メソッド」は、この「領域固有性」を意識した実践である。
だから、クラスの低学力児が、テストで10,20,30点から60,70,80点をとれるようになるのである。
ポイントは、もっと子供たちに練習問題を数多くこなさせなくてはならないことである。
これがあまりにも不足している。
日本の算数学習が、数多く問題解決学習で行われている。
1問の例題を多くの時間を使って、「自力解決」させている。
練習問題をこなす時間がほとんどない。
宿題に回されることも数多い。
この結果が、あんな簡単な三角形の面積問題の正答率を半分にしてしまっている。
算数学習は、もっと基本のところから考え直さなくてはならない。
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