『策略 ブラック学級崩壊サバイバル術』(明治図書)~最前線の闘い~
新しい学級崩壊で、注目すべき2つがある。
1つ目は、学級のやんちゃな子供たちが、ゲーム感覚で学級を壊しにかかるもの。
2つ目は、「静かなる学級崩壊」と呼ばれているもの。
「静かなる学級崩壊」は、学級崩壊にはカウントされない。
とりあえず授業だけは成り立つからである。
しかし、学級ではしょっちゅうもめ事が起こり、担任はその仲裁に忙殺される。
学級も、「群れ」のまま「集団」になれないで1年間を過ごしていく。
私は、学級崩壊予備軍と呼んできた。
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問題は、ゲーム感覚で学級を壊しにかかる学級崩壊なのである。
中村健一先生が『策略 ブラック学級崩壊サバイバル術』(明治図書)を出された。
今まで出されていたブラックシリーズの到達点のような本である。
この本では、困難校での、ゲーム感覚での学級崩壊に対して担任はどうすべきかを中心に書かれている。
最前線での闘いである。
あえて私は、そう言い切りたい。
これから学校現場が抱え込んでいくリアルな「現実」は、ここに集約されてくるのだと考えているからである。
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学級崩壊は、教師にとっては、死活問題。
生活が、人生が、かかっている。まさに命がけ。
と、書いた。子どもたちにとっては、どうだろう?
学級崩壊は、子どもたちにとっては、ゲームでしかない。
のである。
…………
担任を辞めさせることができるかどうか?のゲームなのだから、たちが悪い。
担任を辞めさせれば、友達の中でステータスが上がる。いや、学校全体でも「先生を辞めさせたすごいヤツだ」と、一目置かれる。困難校というのは、そういう所だ。
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恐らく多くの先生方は、こんなことを聞くと、このすさまじさに恐れおののくことであろう。
困難校で、こういう学級崩壊がでてきている。
新しい学級崩壊と、私は呼んでいる。
私の現役時代には、とうてい予測できなかった事態である。
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中村先生の立ち位置は、はっきりしている。
ちょっと長い引用になるが、勘弁してほしい。
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映画「パラサイト 半地下の家族」を見た。
2020年アカデミー賞で、最高賞である作品賞を受賞した。ご覧になられた方も多いだろう。最近、テレビでもやってたな。
「半地下」に住む家族が「1階」に上がって失敗する話だ。いや、上流階級の「2階」かな。その結果、父親、結局「地下」に追いやられてしまう。
私は、この映画を見て思った。
困難校の教師は、「半地下」に住んでいるようなものだ。
と。
普通の学校の教師は、「1階」に住んでいる。だから、「2階」を目指す。さらに良いクラス、さらに良い授業を目指して、上にのぼっていくイメージだ。
たとえば、「アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)」である。たとえば、「クラス会議」である。
普通の学校なら、こういう「高尚」な実践を追求できる。
しかし、困難校の教師は違う。困難校の教師は、「半地下」で上手くいったからといって、「1階」に上がってはダメ。もちろん、「2階」に上がるなんて、厳禁だ。
「1階」レベルのことを要求すると、子どもたちは反抗的になる。そして、学級は壊れていく。
困難校の教師は、「半地下」でうまくいっていることに満足するべきである。
「半地下」には「半地下」の生き方があるのだ。
さらに、困難校で学級崩壊しそうになったら、次のことを悟るべきだ。
困難校の教師がうまくいかなかったら、「地下」に潜るしかない。
「地下に潜る」とは、教師の理想のレベルをさらに落とすことである。
理想のレベルを「底辺」まで落として、子どもたちに要求しない。とにかく、ぶつからずに、戦わずに済むようにする。私は、こうやって生き抜いてきた。
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よく読んでほしい。
中村先生は、教育界で、初めてこんな提起をされている。
今までは、クラスでうまくいかなかったら、もっと教材研究をするとか、もっと本を読んで勉強をするとか、セミナーに参加するとか、……とにかく「2階」へ上がろうとしてきた。
しかし、中村先生は違う。
「地下へ潜ろう」と提起されるわけである。
ベクトルの向け方がまるっきり違う。
ここに最前線の闘いがある。
恐らくこれからこのような闘いを強いられる教師たちが多く出てくる。
それだけ困難校が増えていくからである。
ぜひとも読んでいただきたい。
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