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開墾した農園に子供たち招待~「下りの走り」ということ~

 親しい知り合いの投稿が、読者のコーナーに載った。
 「えっ~~」とびっくり。
 朝日新聞。2021年の1月1日。

 ★ ★ ★
  開墾した農園に子供たち招待

                   小学校非常勤教員 高橋定雄
                   (神奈川 69)

 偶然にも近所で開墾できる土地を借りられることになった。畑と田んぼの候補地計2千平方メートル。元々田んぼだったという湿地は35年間、放置されたまま。原野に近い。
 日当たりが悪いため、大きな梅の木を2本切り倒し、枝を払って整理した。周りの竹林や森林も伐採して日当たりを改善し、湿地帯から田んぼに戻す準備をしている。
 私は秋田県の農家の長男として育ち、52年前に横浜市へ出てきた。小学校教員をしながら、市民菜園を20年間続け、退職後は本格的に農業従事者になりたいと思っていた。
 今年は借りた自分の土地を開墾し、一から農業に従事できる記念の年だ。地域の小学校の父親によるボランティア組織「おやじの会」も仲間に入れたいし、子供たちのサツマイモ畑も作ろう。
 昔ながらの脱穀機や風を起こして籾とゴミなどを分けるもみすりなど、伝統的な器具を使い、いくつかの手を通して稲作りに挑戦しよう。近隣の小学生に農業の出前授業もしたい。そうだ、いっそ「さだお農園」に小学生を招待しようか。夢は膨らむ。

 ★ ★ ★

 「定雄さん」と呼んでいる。
 その定雄さんと知り合いになったのは、横浜教職員走友会でのこと。
 私も40歳から50歳までの10年間を、市民ランナーとして過ごしたのである。1年に1回ずつ10回のフルマラソンを走った。
 定雄さんは、サブスリーランナーであった。
 サブスリーとは、フルマラソンで3時間を切るランナーのことであるが、市民ランナーの2万人に1人ぐらいだと言われている。
 副校長や校長時代もずっと走り続けた。
 朝起きて走り、学校へも走って行くのである。
 校長時代には、学校の子供たちを各地の駅伝大会に連れて行って、活躍をさせている。学校を陸上学校にしている。

 しかし、数年前に急に膝が痛くなり、走れなくなった。膝の難しい病気である。
 走りすぎたのである。
 現役ランナーのときは、月に600キロ、700キロを走っていたのである。ちょっとしたプロのランナーと同じである。

 走れないと悩んでいると思いきや、なんと、こうして「さだお農園」を開墾している。したたかな人である。
 校長を退職後も、初任者指導をしたり、困っている先生の手助けに駆けつけたり、林間学校などの手伝いをしたり、学校の農園の手伝いをしたり、……と大忙しなのである。その合間に、こうして農園を切り開いている。
 ★
 ものごとには、「行き」と「帰り」がある。
 往路と帰路。
 マラソンでも、往路と復路があるのと同じ。
 人生がまさしくそうである。

 私たち走友会も、「上りの走り」と「下りの走り」という言い方をしていた。上りの走りは、記録や距離を目指した走りをすること。
 下りの走りとは、もうそういうことを目指せなくなったときの走りである。

 実際に、定雄さんみたいに走れなくなることもある。
 私は、50歳でぷっつりとレースに出ることを止めた。
 残された60歳までの10年間、教師の仕事に専念したいと思ったからである。学校現場は、荒れてきて学級崩壊が増えていた。これから大変なことになるなあという思いがしたからである。

 この定雄さんの投稿を見て、「なるほどなあ、こういう『下りの走り』があったんだ!」と。
実際に走ることだけが「下りの走り」ではない。

 そう考えると、誰でもが「下りの走り」をすることになる。
 その人の真価は、この「下りの走り」で決まってくる。
 そのためには、「上りの走り」をどのようにやったかにかかってくるのであろう。

 ★
 私は、走友会の会合や練習会にはもう顔を出すことはないが、まだまだ実際に走っている。まだ、ランナーなのである。
 家の中を30分走る(笑)。4:30からのジョギング。
 熊みたいに同じ所をぐるぐる走る。
 ちゃんとしたコースも設定している(笑)。
 私の家は豪邸であるから(?)。
 
 定雄さんの「下りの走り」は、私たちを励ましてくれる。
 何にでも、どこにでも、やろうと思えば、生き方はついてくる。
 考え方次第なのだ。
           

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