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2020年12月

つれづれなるままに~トンネルを避けないで~

●高校サッカー選手権の全国大会への出場は過去一回だけ。それでも今年、昨季のJI王者、横浜F・マリノスへ同時3人の加入が決まった。
 今サッカー関係者の間でこんな言葉がささやかれる。
「プロになりたいなら興国へ行け」と。

 大阪市天王寺区の興国高サッカー部のことである。
 監督は、内野智章さん。
 監督に就任して14年。
 部出身Jリーガーは今年の内定者を含め、すでに20人に達している。
 もちろん、すべてが教え子になる。

 こんな記事が朝日新聞be に出ていた。
 監督は、「純粋にプロを目指す高校があっていい。高校サッカーの全国制覇を最大の目標としていない指導者がおってもいいんじゃないですかね」と。

 それでも270人の部員をまとめている。

 普段の練習はどうなっているのか。
「今年プロに内定した選手は『基礎練習の反復が一番自分のためになった』と言っていました。シュート、ドリブル、パス&コントロールの3つ。これは日本人だからできることで、世界に誇れる強みなんです。海外の子は飽きて続かない。でも日本人はこの練習が成果になったと気付いたら、基礎練習だとしても必ずやり続ける。」と。

 どの分野でも同じなのだ。
 基礎練習をおざなりにしたら、あとはうまくいかないのである。

●プロレスラー木村花さんの問題について、次のようなニュースが飛び込んできた。
★ ★ ★
 フジテレビの番組に出演していた木村花さんが会員制交流サイトで誹謗中傷された後に死去した問題で、警視庁は17日、ツイッターに中傷する内容を投稿したとして侮辱容疑で、大阪府箕面市の職業不詳の20代男性を書類送検した。
★ ★ ★
 
 これほど心痛めたことはなかった。
 花さんの母親が、私の教え子だったという関係で、花さんを知っていたからである。
 先日、その母親から電話があった。
 NPO法人「SNS教育」を立ち上げて、子供たちにSNSの怖さを知らしていきたいという話であった。その理事になってくれないかということ。
 私は荷が重いので、専門の先生に連絡をしようということになった。
 千葉大学のH先生に早速連絡をとった。
 
 H先生に快く引き受けてもらい、NPOの理事までも引き受けてもらったという連絡があった。
これから息の長い活動が始まるわけである。
 「がんばって」という他はなく、なんとも心許ない。
 
●毎日、経営コンサルタントの神田昌典さんから「今日のヒント」を送ってもらう。
 12月24日の「今日のヒント」は、「それでも生きろ」というテーマ。
 人は、辛い、苦しいことはできるだけ避けたいと思っている。
 しかし、避けられない。
 
 でも、そんな辛いことや苦しいことは、決して不幸なことではない。
 日本の偉人である林学博士である北村静六先生のこと。
 私も何冊か本を持っている人である。
 
 この北村先生の本を神田さんが監修されたことがある。
 その監修のなかで、気付いたことがあった、と。
 その北村先生は、辛いことや暗いときにどうやって過ごしたかを綿密に書かれている。
 しかし、人生の後半になって安定しているときのことはほとんど書かれていないことに気付いた、と。
 
 北村先生は、大切なのは、辛い、苦しいときのトンネルを大切に、大切に生きることなのだと、強く主張されているのだ、と。

 人は、幸せなときばかりはない。必ず辛い、苦しい、悲しい時期を過ごすことが必ずやってくる。
 しかし、決してそのことは不幸なことではなく、そのトンネルを避けないで生きることが大事なのである。
 
 きっとそのトンネルの先には、希望の光が見えてくる。
 神田さんは、さだまさしの次の歌をすばらしい曲だと言って紹介している。
 さだまさしは、こんな曲もつくっているのである。

 youtube.com/watch?v=rWpHVCF-rUE

 

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大変なことになっている!~『スマホ脳』の今~

 朝日新聞の投書欄(2020.12.20)に、次のような投稿が載っていた。
 「スマホ忘れた パニックだ!」神奈川県の48歳の女性Kさん。
 ★ ★ ★
 「あっ、スマホ持ってくるの忘れた」。私の心の叫びです。近所の内科に向かう途中でした。待ち時間をどう過ごそう。「昔はスマホなんてなかったんだから、考えごとをしていれば過ごせるはず」と気楽に思い、取りには戻りませんでした。ところが、ただ座って待っているとムズムズしてきました。暇に耐えられません。もうスマホがないなんてムリです。そんな自分にがっかりしました。
 スマホで膨大な情報を受け取ることに慣れてしまい、自身で考え想像力や工夫を育む習慣をすっかり忘れていました。生まれた時からスマホが当たり前にある若い人は、自分の将来を思い描いたり、じっくり向き合ったりする時間をどうやって確保しているのでしょう。
 そんなことを考えていると、やっと診察室からお呼びが。「長かったな」と時計を見るとたったの13分!「このままではいけない」などと思いつつ、この文章をスマホで打ち込む私です。
 ★ ★ ★
 この方は、48歳。そんな人でも、こんなことを言われている。
 もっと若い人は、もはやこんな感覚がなくて、もう普通の感覚になっていることでしょう。
 それにしても、たったの13分をじっと考えごとができないようになっているなんて驚いてしまう。
 それでもこの方は、大切なことを言われている。
「若い人は、自分の将来を思い描いたり、じっくりと向き合ったりする時間をどうやって確保しているのでしょう」と。
 若い人のことより自分のことを心配した方がいいのではないかと思うのだが、まあ余計なこと(笑)。

 スマホに取り憑かれてしまったとき、確実になくなるのが、「自分と向き合ってじっくりと考えること」である。
 もはや、スマホを常用している人たちは、「考えること」ができなくなっているのではないか。とても他人ごととは思えない。
 これは、大変なことではないか。
 ★
 今話題になっている『スマホ脳』を読んだ。
 朝日新聞の宣伝で、この本の紹介をしていた。
 「最新研究が明らかにする恐るべき真実!」と書かれている。
 
 1つでも思い当たったら要注意!
 ①用もないのにスマホを手にしている
 ②気が散りやすくなり集中力が落ちてきた
 ③記憶力が落ちてきた気がする
 ④寝つきが悪く、睡眠不足気味だ
 ⑤SNSを見ても気分が明るくならない
 
 アンデシュ・ハンセンが、最新研究をまとめて紹介している。
 とにかく1つ1つが問題にすべきことだが、一番印象的なのはつぎのことである。
 ★ ★ ★
 2016年に私の著書『一流の頭脳』がスウェーデンで刊行された数週間後、ある学校の校長から「うちの高校で講演をしてもらえませんか」というメールをもらった。講堂で講演をしたのだが、ざっくり言って半数の生徒が途中でスマホを見ていた。自分の講演が聞くに堪えないせいだ、と私はがっかりした。しかし校長はこうとりなした。「全然、まったく逆ですよ。生徒たちはあんなに熱心に聞き入るのを見たのは久しぶりです」「でも、半分くらいの生徒はスマホをいじってたでしょう」「ええ、確かに。だけど、普段教室でどんなふうだか知ってますか?全員がスマホをいじっていて、先生たちは生徒の注意を引くのに非常に苦労しているんです。前に勤めていた小学校では、休み時間に外で遊ぶ子供はいなかった。スマホを手に座っているだけで」
 恐ろしいことである。
 スウェーデンでのことだが、いずれ日本でもこうなるのかと……。
 
 著者のハンセンは、1つの国だけの問題ではなく、人類の未来の問題として、この『スマホ脳』で問いかけている。

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学校は大切な何かを忘れている!

 算数の共同研究を進めている。
 3年目になっている。
 今は、算数学力向上メソッドを全単元DVDにしている(東京書籍だけだが)。

 共同研をやっている先生方は、それぞれに単元の終了後に単元テストをして、その結果を送ってもらえる。
 着々とその研究の結果が積み重なっている。

 たとえば、一人の先生は、今算数専科として5年生のクラスへ入っている。
 「味噌汁・ご飯」授業で授業をされている。

 専科だから算数学力向上メソッドをそのまま実践することはできない。
 それでも試みとしてさまざまに工夫されている。

 9月を過ぎて、低学力児の中から、「ここ分からないので教えてください」という問いかけがなされたという。
 それは良いということで、給食の配膳時間を「分からないところを教える時間」にするということで、毎日駆けつけることにしたという。

 ほんの10分ぐらいの時間になる。
 それでも、分からない子供が駆けつけてくる。
 この積み重ねは大きい。

 「分数のたしざん、ひきざん」という難しい単元で、低学力児は、知識・技能、思考・判断・表現が次のような点数になったという。
<知識・技能><思考・判断・表現>
 A児……65 76
 B児……96 70
 C児……80 80
 D児……68 60
 E児……80 40
 F児……71 60
 G児……33 76
 S児……75 88

 知識・技能(テストの表)では、G児だけが50点を下回っているが、あとの子供たちは何とかがんばっている。

 通分、約分があるので、これは大変なことである。
 日本全国の普通の5年生のクラスが、低学力児でこれだけの結果を果たして出されているのだろうか。
 
 この8人は、最初は50点以下の子供たちだったわけである。

 学校の休校、分散登校などがあって不安定な学習を経てきた今でも、何とかこれだけの状態に仕上げてきている。
 10分だけの給食配膳時間に、分からないところを先生に教えてもらうということで、低学力児はみごとに先生の取り組みに応えているわけである。
 実際に、それが点数となって表れている。

 ★
 長崎の中学校のY先生が、フェイスブックで以下のようにつぶやかれている。
 
「 青空です。
風は冷たいですが,外に出ると心地よいです。空を眺めながら,教育の現状についてふと考えます。
コロナ対策,学力調査の結果,読解力,タブレット活用,アクティブラーニング,働き方改革などで躍起になっている現場。
最近,学校は何か大切なことを忘れているのではないかと思うようになりました。」

 「学校は大切な何かを忘れている」と。
 私なら、それは「目の前の子供たち」への「手ごたえ」だと言い切りたいと思っています。

 先ほどの先生は、みごとにそれに対応しておられるのではないか。
 「やればできるんだな!」「分かるようになってうれしいな!」という子供を専科という立場で育てておられる。 
 
 いわゆる教育の原点に立っておられる。
むずかしいことでも何でもない。
 ここを多くの先生たちは、忙しさに紛れて忘れ去っていこうとされている。

 その先生の算数の結果で、12月末に出した通知票は、Cの子供がいなかったという(算数テストの結果だけで出したと言われる)。
 こういう結果が、表れてくるわけである。

 ちなみに、そのあとの単元「平均」の低学力児の点数は、以下の通りである。

<知識・技能> <思考・判断・表現>
 A児…… 100     80
 B児……  100     100
 C児……  100     100
 D児……  100      78
 E児……  100      90
 F児……  100      80
 G児……  100      90
 S児……   96      80

 学年の意向に合わせて、電卓を使っての計算なので成績は計算間違いが少なかったという分ぐんとあがっている、と。
 学級の平均は、知識・技能98.27 思考・判断・表現91.31になる。
 A児からS児までの8人が、テストをもらって大喜びする姿が目に浮かんでくる。
 「おれっ(わたし)、算数好きになってきたな!」と。
 
 こんな「手ごたえ」が先生たちの中からなくなっていことしている。

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