ある保護者の方のコメントのつづきです。
学級崩壊について、以下のように書かれています。
「 学級崩壊を考える時、真面目に授業を受けたい子どもの存在を忘れないでください。」
まさに、言われるとおりです。
学級崩壊になっているクラスでも、全員がそれに加担しているわけではなく、きちんと真面目に授業を受けようとする子供も確かにいます。
担任は、絶対に忘れてはいけないことです。
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中村健一先生の学級崩壊の本についてのコメントを、保護者の方は出されていますので、学級崩壊についても書いておきたいと思います。
これで悩んでいる保護者の方も多いのです。
それというのも、学級崩壊は、もう全国的に、日常的なこととして広がっているからです。
安全な地域などはありません。
数多く起こっているのは、関東圏、関西圏の都市圏ですが、今は地方にも広がっています。
新しい学習指導要領の実施が、今年度から始まっています。
コロナ問題で、今はそれどころではないのですが、アクティブ・ラーニングといって、対話的な学習を数多く始めようという試みです。
私は、今学校現場が抱えている問題は、それどころではないと考えています。
学校の最大の問題は、学級崩壊をどうしていくか、なのです。
学校は、これについての対処法を持っておりません。
やっていることは、対症療法だけです。
だから、保護者の子供さんの学年の先生が、学級崩壊で休職に入るという事例は、どこの学校でも日常茶飯事として起こっています。
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ある講演会で、私の講座に参加した保護者の方がおられました。
講座が終わって、その保護者の方2名が相談に見えました。
「野中先生、私の子供たちの学校は、ほとんど全部のクラスが学級崩壊になっています。私たちがこれからどうしたらいいのか相談にのっていただけませんか?」と。
学校のほとんどのクラスが学級崩壊になっているというのは、驚くことで今まで聞いたこともない事例でした。
でも、実際に、こんな学校もあるのです。
2月のことでした。
私は、保護者の方たちが集まって(PTA組織はもう使いものにならないだろうから)、代表者が、教育長に会って掛け合う必要があると伝えました。
「私たちの学校をどうしてくれるのか?」と。
もう1つは、学級崩壊で学力の補完ができていないだろうから、家庭で何とかしないといけないとも伝えました。
何の相談にもならなかったのでないかと思われましたが、驚くことが起こっているのだとびっくりした事例です。
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もう1つ、ある知り合いの先生のクラス(この知り合いの先生も同学年でした)で起こったことです。
その6年のクラスは、異動してきた、ベテランの先生が担任をされました。
問題は、始業式の次の日から起こりました。2日目のことです。
ある1人の男の子が、筆箱を落としました。
それを合図に、7,8人の子供が次々に筆箱を落とし始めました。
先生はびっくりして、何をしているのだと叱ったというのですね。
しかし、その子供たちは、それに対して嘲笑で返してきたというのです。
それから、そのクラスは学級崩壊が始まりました。
知り合いの先生が調べてみると、ボスの男の子が、「あいつ気にくわないから辞めさせようぜ!」となり、「明日オレが筆箱落とすから、その合図でみんなも落とせよ。何か言ったらみんなで笑おうぜ!」となったらしいのです。
その打ち合わせがあったのは、始業式があって、まだその担任がどのような先生なのかも分かっていない段階なのです。
とにかく第一印象で、「あの担任気にくわない!辞めさせようぜ!」となったらしいのです。
その学年は、ずっと荒れてきた学年で、担任の先生も辞めたりした事例が今までもあったらしいのです。
そのベテランの男の先生は、何とか周りの先生たちの助けもあって、1年間を凌いだということ。
さらに調べていくと、そのクラスでは、学級崩壊を起こしている子供たちのバックに保護者2,3人もついていて、けしかけていたということも分かったのでした。
こういう事例もあるのです。
こんなクラスでは、どんなに力量がある先生が担任をしても、やってはいけません。
影響力のある子供が、「このクラス壊そうぜ!」と考えたら、担任はどうにも対処できないのです。
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学級崩壊ついて、聞いた事例を紹介しました。ちょっと極端な事例だったかもしれません。
でも、確実にこの事例のような場合を氷山の一角として数多くの学級崩壊が広がっています。
もちろん、この事例を紹介したところで保護者の方がどうにかできるということではありません。
ただ、ぜひとも学校が今どのようになっているのかを知ってほしいと思ったからです。
保護者の方がどうにもできないと言いましたが、教師の方も、どうにもできない事例が起こっているのです。
クラスに1人の影響力のある子供がいたり、影響力のある保護者がいたりして、担任が嫌われて、潰してやろうと身構えられたら、もうどうにもならない段階になり、学級崩壊をします。
どうにもならないのは、教師としての力量がある先生でも、どうにもならないことなのです。
ほとんど全部の教師が、いつ何時、こういう事態にあうか分からないのが今の学校のリアルなのです。
ただ、多くの教師たちが、こういう認識には至っていません。
それがさらに深刻なことだと、私は思っているのです。
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学級崩壊の本を書かれた中村健一先生も、こういう困難校をいくつも経てきて、あのような本を書かれています。
私も、学級崩壊にならない処方箋を何冊かの本にしてきました。
しかし、その処方箋も、所詮限界があります。
影響力のある子供や、保護者が、学級崩壊を起こしてやろうと意図すれば、もはやどうにもならないからです。
アメリカをはじめ、諸外国は、他の子供の学習を邪魔する、こういう子供は、退学です。
法律で学校や教師たちを守っています。
学校や教師たちが、何度指導をしても聞かない場合は、そういう子供たちを退学にする権限が与えられています。
日本には、そういう法律はありません。
だから、そういう子供たちはやりたい放題です。
教師は命がけで学級崩壊に対していきますが、子供たちはゲーム感覚です。
「先生たちだって問題があるではないか!」と言われそうです。
確かに、問題がある場合も多いのです。
それは認めます。
人間的に未熟である、指導力に問題がある、……。
もちろん、教師もまた人間ですから、問題はあります。
しかし、現実は、教師がどうするかという段階を越えている場合が多々あるのです。
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保護者の方には、学級崩壊の現実をお知らせして、不快な思いになられたと思われます。
ただ、この事態をお知らせしたのは、ほとんどの保護者や世間の人たちは、この現実を知られていないので、あえて書きました。
もし保護者の方の学年で、学級崩壊が続いていくとするなら、せめて担任に「がんばってください。」という一声をかけてもらえばありがたいのです。 その一声で、担任は休職や辞職をしないですむかもしれないのです。
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