1回だけの初任者研修会~良いクラスをつくろうとしなくていい~
3月26日、神奈川県E市の初任者研修会へ行く。
私が今回担当している初任者研修は、このE市以外はみんな中止になってしまった。コロナの影響である。
E市は、「ぜひとも必要だと思い、開きました」と教育長は言われた。
コロナはいずれ終熄するが、初任者は、これから始まるのである。
赴任前にこうして開いておられる。
ここへ来るようになって、5年目であろうか。
この日に初任者は私の話を聞いて、始まる前に準備する時間を確保するためである。
その試みをされている。
だから、このE市は1人も初任者が辞めていない。
もちろん、私の話がそんなに効果があるわけではないが、学校の初任者へのバックアップと委員会の支援が大きいわけである。
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私は、話の最後に次のような課題を考えてもらった。
多くの初任者が問題にする課題である。
★ ★ ★
子供たちがいつもざわざわしていて、落ち着きません。注意をすれば、その場は何とかなりますが、また同じようになってしまいます。だから、しょっちゅう叱っている状態です。どうしたらいいでしょうか。
★ ★ ★
「魔の6月」という時期に、多くの初任者が悩むことである。
この先に、「学級崩壊」という事態があるのだが、ここで踏みとどまれるかどうかなのである。
なぜ、このようになるのか、考えてもらった。
ここには、「話を聞く」ようにさせるための対応の甘さがある。
とにかく、最初に子供たちに身に付けさせたいことは、先生の指示や話を黙って聞くという姿勢である。
ここが甘い対応になってしまうために、落ち着かないクラスになってしまう。
話を聞かせるための「原則」があるわけである。
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まず、最初に確認しておくことがある。
子供たちは、集まればすぐにおしゃべりをしたり、動き回ったりするものである。
これは、子供が持つ自然なエネルギーである。
だから、そのままにしておけば、無秩序状態になる。
そのために、きちんと秩序を整え、話を聞かせるような状態にもっていくのは、教師の側の指導になる。
どういう指導をするか?
これにも原則がある。
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クラスが始まってすぐに指導することがある。
「話を聞く」ための指導である。
指導1
これから先生や友だちが話すときには、黙って話に耳を傾けます。
おしゃべりをしたり、手いたずらをしたりして、聞いてはいけま
せん。
初任の先生たちは、このような指導を行うはずである。
でも、この1回だけで終わってしまう。
1回だけ指導すれば、子供たちは話を聞いてくれると勘違いをする。
これでは指導にならない。
指導2
今から先生は大事なことを話しますから、黙って聞きます。
勝手にしゃべってはいけません。最後まで聞いてから分からない
ことを質問します。
これだけでもダメである。
指導の3がある。
指導3
でも、途中でどうしても話したいことが出てきたときは、手を挙げ
なさい。そしたら、その人に当てますから。話してもいいです。
この3つの指導をする。
でも、これで安心してはダメだ。
今の学校の困難さを克服するためには、この程度ではダメなのである。
こうした指導をしても、必ず2,3人は話の途中でぺらぺらと話す子供がいる。
悪気はない。今までの生活習慣で、思ったことをすぐに口にする習慣が身に付いてしまっている。我慢できないのである。
こんな子供たちに「何度言ったらいいの!」としょっちゅう叱ることになる。そのうちに反発が返ってくる。
しかし、途中で話したくなったら「手を挙げなさい!」と指導しているのである。
こんな子供には、叱らないで「ほらAさん、しゃべらないで手を挙げなさい」と注意してあげればいい。
質問はないのである。ただ、無意識に言葉が出るわけである。
その子が黙って聞くことができるようになれば、うんと褒めてあげればいい。
こうした指導を繰り返し、繰り返して、黙って話を聞く雰囲気を教室につくりあげていくわけである。
★
これは「縦糸を張る」ための最初の指導となる。
このようなことを話した。
最後に、訴えた。
「良いクラスをつくろうとしなくていい!」と。
良いクラスを1年目からつくろうと身構えると、つくったクラスとイメージしているクラスとの落差に悩むことになる。
1年目は、必死にもがいて、凌いでいくことが数多くなる。
それでいいわけである。
2年目からは見通しが出来てくる。
ほとんどの教師が、そのような経験をしている。
★
90分の話である。
始まるまでにまだ1週間以上がある。
その間にどんな準備ができるか、そのイメージができあがったのであろうか。
初任者は、みんなマスクをしている。
濃厚接触を避けるために、互いに相談することなどをしないで、話を進めたので、初任者は緊張したままの講座になってしまった。
まず、このようにして始まったのである。
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