「算数学力向上メソッド」の実践(3)~低学力児はつくられている~
1 算数物語をつくっている
「低学力児の5人中3,4人の子供たちは引き上げられる」と書いた。
この成果だけでも、たいしたことであると考えている。
考えてみてほしい。
今まで算数嫌いで、算数の勉強がいやでいやでたまらなかったのが、好きになるのである。
テストの点数が良くなるからである。
子供たちは、ここから始まる。
「テストの点数が良くなる」という事実を数字で示される。
「おれって、やればできるんだ!」
「今まで算数が嫌いで嫌いでたまらなかったけど、なんか好きになってきた!」
ということから始まる。
まず、この事実で、その子を変える。
今まで算数の低学力児だった子供が、いつのまにか80点、90点、あるいは100点を取るようになる。
この事実が、どれほどその子に学習に対する「意欲」「自信」を生みだしていくのか、少し想像してもらえば分かることである。
その子との「算数の物語」をこうしてつくっているのである。
今まで第3次の共同研究をやってきたが、各クラスでこうした物語が展開されている。
★
しかし、今算数をクラスでやっている先生たちの多くが、ほとんどこのような成果を上げているのか。
否のはずである。
ましてや、問題解決学習にいそしんでいる先生たちは、ほとんど不可能の課題であるだろうから。
2 なぜ低学力児は生み出されるのか?
なぜ、「算数学力向上メソッド」をやれば実現できるのか。
それは、最初にも書いたように「アウトプット」にヒントがある。
クラスにいる算数嫌いの低学力児は、ある面では教師の算数教育によってつくられているところがある。
この共同研究をやりながら、しみじみとそれを感じる。
先生たちにはちょっと過酷な言い方になるが、実際はそうなのである。
低学力児のハードルは、次の3つになる。
①授業の例題指導で、1問の問題解決を教えられるが、実際は曖昧なままである。
特に算数嫌いの子供にはぴんとこないところがある。
そして、類題、練習問題を練習するが、曖昧なままにやっているのではっきり「できた!」という段階までいかない。
曖昧のままで過ぎていく。
こうした学習が多いわけである。
②とくに、数学的な思考力を試す問題や、文章問題などが教科書では1問だけ出されているけれども、1問だけ練習をしても、「できた!」とい う段階にはなかなかならない。
低学力児は、不可能に近い。
授業だけではどうしても限界がある。
③さらに、単元テストにも問題が出てくる。
このテストは、全国平均を80点から85点においている。だから、どうしても、問題の中に、「むずかしい問題」(教科書には出ていな
い問題、数学的思考力を試す問題、文章問題など)が紛れ込んでくる。
ここに、低学力児は、ほとんど対応できないで、間違ってしまう。
ここを突破させなくては、点数は上がってこない。
3 「算数学力向上メソッド」が効果がある理由
それでは、なぜ「算数学力向上メソッド」が効果を上げるのかということになる。問題の①②③に対しての手立てになる。
①の問題に対して
これは授業の課題になる。
この課題に対して、「味噌汁・ご飯」授業では、「ときかたハカセ」というネーミングで提起した。
向山型算数では、基本型という言葉で使われていることだが、私たちは「ときかたハカセ」という言葉で迫ろうとした。
例題1問の解き方を、「ときかたハカセ」できちんと教えるわけである。
問題解決のためのマニュアルになる。
子供たちは、これを参考に、問題を解いていけばいいということになる。
(くわしくは、『「味噌汁・ご飯」授業 算数編』(明治図書)を参考にしてほしい)
②の問題に対して
これこそ「アウトプット」になる。
「算数学力向上メソッド」では、問題を解く数を多くしている。
きちんと解けているかを確認しながら、問題解決に当たるということになる。
③の問題に対して
単元テスト分析を、事前に行って、「むずかしい問題」対策として類題を 復習テストや宿題で練習させておく必要がある。
(つづく)
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