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ネガティブ・ケイパビリティ~答えの出ない事態に耐える力~

 担任をずっと続けているうちに、必ず2,3度はクラスが荒れる経験をする。
 私も37年間の教師生活(担任)の中で、1、2度クラスが荒れる経験をしたことがある。
 
 学級崩壊という事態までは免れたが、もう1つでも悪い事態が入り込めば、きっとそうなっていたであろうと思ったことがある(でも、この経験がなかったら、本を書くということはなかったであろう)。

 こんな時には、ただただ「凌いでいく」以外にない。
 さまざまな手をうとうとするが、うまくいかない。
 かえって事態を悪くする場合がある。

 

 私の場合は、「凌いだ」のである。
 ★
 この「凌ぐ」ということが、書物になっていることを最近知った。
 違う言葉で表現されているのだが、…。

 

 『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(帚木蓬生<ははきぎほうせい>著 朝日新聞出版)。

 

 帚木蓬生は、団塊世代の小説家。しかも精神科医でもある。
 その人が、まったく別領域の本を書いている。

 

このネガティブ・ケイパビリティは、元は英国の詩人ジョン・キーツがシェイクスピアの文学的特質として発明した言葉らしい。

 

 「シェイクスピアが桁外れに有していたものーそれがネガティブ・ケイパビリティ、短気に事実や理由を求めることなく、不確かさや、不可解なことや、疑惑ある状態の中に人が留まることが出来る時に見出されるものである。」

 

 なんだか分かったような、分からないような、「能力」。
 帚木さんも、そのあたりは分かっていて、このように書いている。

 

「私たちは『能力』といえば、才能や才覚、物事の処理能力を想像します。学校教育や職業教育が不断に追求し、目的としているのもこの能力です。問題が生じれば、的確かつ迅速に対処する能力が養成されます。/ネガティブ・ケイパビリティは、その裏返しの能力です。論理を離れた、どのようにも決められない、宙ぶらりんの状態を回避せず、耐え抜く能力です。」

 

「私たちの人生や社会は、どうにも変えられない、とりつくすべもない事柄に満ち満ちています。むしろそのほうが、わかりやすかったり処理しやすい事象よりも多いのではないでしょうか。/だからこそ、ネガティブ・ケイパビリティが重要になってくるのです。私自身、この能力を知って以来、生きるすべも、精神科医という職業生活も、作家としての創作行為も、随分楽になりました。いわば、ふんばる力がついたのです。それほどこの能力は底力を持っています。」

 

 考えてみれば、多くの人たちが、何かに耐えたり、我慢したり、そういう経験をあまりしたことがないのではないだろうか。
 だから、その「ふんばる力」や「我慢する力」が分からない。
 
 でも、私たちの人生では、決定不能な、解決できそうでない、宙ぶらりんの事態に遭遇したとき、焦らずあわてず、その状態にじっと耐え抜いていく、そんなことがきっと必要になる。
 ★
 ただ帚木さんは、次のようにいって、注意を促している。

 

「<問題>を性急に措定せず、生半可な意味づけや知識でもって、未解決の問題にせっかちに帳尻をあわせず、宙ぶらりんの状態を持ちこたえるのがネガティブ・ケイパビリティだとしても、実践するのは容易ではありません。」
と書いて、
「なぜなら、人間の脳には「『分かろう』とする生物としての方向性が備わっているからです。」と。

 

 確かに、目の前に、わけのわからない、不可思議な、嫌なものが放置されていると、脳は落ち着かず、当面している事態に、とりあえず意味づけをし、何とか「分かろう」とする。それが自然だからである。

 

 だが、ネガティブ・ケイパビリティは、それを拒否する「ふんばり力」なのである。
 ★
 この力を身に付けることは、簡単なことではない。
 
 まず、このような力があることを知ること。
 そして、人生のどこかで必ずこのような解決できそうでない事態が来るので、そこで試してみるのである。凌ぐのである。

 

 一度凌いだ経験をもてば、二度目ははるかにふんばれるようになる。

 

 必ず何とかなる。
 自分が解決できない課題は、ぜったいに自分に降りかかってくることはないからである。

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コメント

 野中先生、ブログに取り上げていただきありがとうございます。

 実は今、以前ほどじゃありませんが、かなり参ってきています。前回も少し書いたのですが、どう見ても特別支援対象の男子児童がおり(保護者が病院受診自体を拒否しているようです)、その子が他の子にちょっかいを出すなど、学級をかき乱して困っています。

 注意されると逆切れする、放っておけば好き勝手なことをする。また被害妄想が強く、自分の行動は棚に上げ「誰々が俺の悪口を言っている」などと私に訴えてくることもあり、言動がちょっと普通ではありません。

 管理職には既に報告しており、校内体制を作ろうという話にはなったのですが、そうこうしているうちに、この子一人に学級の秩序が破壊されてしまいそうです。

 こういう子をヘルパーも付けずに普通学級に置くこと自体、間違っていると思うのですが、親の理解が得られないままでも、何らかの手立てを講じることはできないものでしょうか。

投稿: 童神 | 2019年6月 9日 (日) 20時08分

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