長時間労働を支えてきたもの(1)~中教審の働き方改革を読む~
やっと4月が終わる。
10連休に入って、ほっとしている先生たちは多いはずである。
とにかく、忙しい生活をされていたのであろう。
知り合いの先生は、異動して2年目だが、今年は仕事が数多く降ってきて、10ぐらいの仕事が入ってきたらしい。
それで夜11時まで学校で仕事をしなくてはならないほどに追い詰められたと、電話口で語ってくれた。
今の学校が「ブラック学校」である実態は、こうしたところに如実に表れている。
仕事ができると思われると、数限りなく仕事を振っていく。
大変なことである。
私も担任として37年間過ごし、5年間は教務主任としての仕事をやったから、その大変さがよく分かる。
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中教審が「働き改革」の方策を出した。
今年の1月25日のことである。
部厚いもので、読んでいくのも大変。
それでも、これは画期的なものだと実感。
先生たちも、ぜひとも読んでもらわないといけない文書になる。
確かに危機感がある。
それが文面からも如実に伝わってくる。
教員採用試験の倍率が、どこも極端に下がり始めている。
新潟が1.2倍で最低だと思っていたが、北海道もその程度だと聞いた。
若者が「ブラック学校」を避け始めている。
教員が足りない。臨任や非常勤の先生を確保できない。
今回さまざまな教育委員会の指導主事から「先生が足りないんです!」という悲鳴を聞いた。
これから学校で休職などで休んでいく先生たちの代わりがいなくなるのである。
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今回の「働き方改革」の目的は、次の通り。
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教師の業務負担の軽減を図り、限られた時間の中で、教師の専門性を生かしつつ、授業改善のための時間や児童生徒等に接する時間を十分に確保し、教師が我が国の学校教育の蓄積と向かい合って自らの授業を磨くとともに日々の生活の質や教師人生を豊かにすることで、教師の人間性や創造性を高め、児童生徒等に対して効果的な教育活動を持続的に行うことができる状況を作り出す。
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どこが画期的なのか。
1つは、学校が担うべき業務内容を特定したことである。
①基本的には学校以外が担うべき業務
②学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務
③教師の業務だが、負担軽減が可能な業務
2つ目は、今までの働き方の変革を求めたことである。
たとえば、次のような記述にそれが表れている。
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今回の学校における働き方改革は、我々の社会が、子供たちを最前線で支える教師たちがこれからも自らの時間を犠牲にして長時間勤務を続けていくことを望むのか、心身ともに健康にその専門性を十二分に発揮して質の高い授業や教育活動を担っていくことを望むのか、その選択が問われている。
(p57)
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‘子供のためであればどんな長時間勤務も良しとする’という働き方は、教師という職の使命感から生まれるものであるが、その中で教師が疲弊していくのであれば、それは‘子供のため’にはならないものである。
(p2)
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また、業務改善の基本となる勤務時間の管理に関して言えば、学校現場において、「自発的勤務」は、教師自らがその判断で行うものであって、勤務時間管理の対象にならないという誤解が生じているのも事実である。そして、この誤解のために「自発的勤務」の時間も含めて勤務時間管理を希薄化させ、その結果、時間外勤務の縮減にむけた取組がなかなか進まないという点も実態として認めざる得ない。
(p45)
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改革の内容は明確である。
子供のためであれば、自発的勤務も、どんな長時間勤務も、自ら引き受けていく、という姿勢を否定している。
これは、いわゆる「聖職者意識」と言われてきたものである。
この意識が、教師の仕事を底辺で支えてきていたのである。
こういう仕事ぶりが、教師の長時間労働を生みだしていたわけである。
そのことを明確にしている。(つづく)
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