学力テストを教員ボーナスに反映~呆れかえる大阪市の対応~
次のような報道が、教育界に大きな波紋を広げている。
「学力調査結果を教員ボーナスに反映」最下位に大阪市長
吉村市長は2日の記者会見で、政令指定都市20市の中で平均正答率が2年連続で最下位だったことに「非常に危機感を感じている」と指摘。正答率の数値目標を設け、達成できたかどうかを校長や教員の評価に反映させる方針を示した。「結果に対して責任を負う制度に変える」「予算権をフルに使って意識改革をしたい」などと発言した。
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大阪市の学力テストの結果が悪いことは、周知の事実である。
しかし、50年ぐらい前にやっていた学力テストでは、大阪は、上位にいて、「大阪に学べ」という時代もあったのである。
50年経って、学力テストの学力は、急降下している。
なぜか。
それは、はっきりしている。
「家庭力」が落ちたのである。
つまり、子供の学力に大きく影響する家庭の経済力や家庭環境が大きく落ち込んでいったのである。
生活保護家庭は、大阪が日本で、第1位である。
そのことを統計学者の舞田敏彦さんは、ブログに明らかにされている。
http://tmaita77.blogspot.com/2018/08/blog-post_13.html
舞田さんの結論は以下のこと。
「これをもって言いたいのは,子どもの学力は社会的規定を被る,学テの結果の全てを「教師力」に還元するのは筋違いだ,ということです。8月6日の記事で述べたことを繰り返しますが,行政が為すべきは,不利な条件の地域・学校への支援を強化することです。首長がこういう立場をとっており,一定の成功を収めているのが,東京都の足立区です。」
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こういうことは、学力を考えていく上では当然のことなのである。
この当然のことを、大阪市長は、理解していないということになる。呆れかえる。
企業ではすでに潰れている成果主義を導入して、アメとムチで教員を追い込んでいくやり方が、学校教育に通用しないことは、当たり前のことではないか。
また、この大阪市は、全国学力テストの成績を上げるために、独自の学力テストを作成し、小学3年以上(?)に実施している。昨年から始めたのだろうか?
この学力テストは、3学期に行われる。
だから、その担任の1年間の授業力の結果を測ろうとするもの。
その成績は、その担任が異動してもついて回るものだと、ある校長先生からお聞きした。
これも、ひどいものである。
子供の学力は、その学校の実態(子供が抱えている家庭環境など)によって大きく左右されてくるという(舞田敏彦さんのブログではっきりしている)ことを無視している。
子供の学力は、教師の授業力が、全てであるという大阪市の規定の仕方は、常識を超えてひどいものである。
大阪市への採用を希望する学生が減っている。現役の先生たちも、他都市へ職を移していると聞いている。
当然だ。
学力向上の全てを教師の授業力に集約してしまう、大阪市のトンチンカンな対応がこういう結果を招いている。
さらに、この現象は続いていくはずである。
学校教育の崩壊現象は、真っ先に大阪市から始まっている。
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文科省は、学力テストがこういうことに利用されることに強く警告を発し、撤回されなければ、毎年やる学力テストを止めて、3年か5年に1回をやるか、あるいは全員ではなくて、抽出性にすればいい。
大阪市は、学力テストの趣旨を逸脱しているのであるから、これは当たり前の措置。
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