共同研究を始めました(3)~学習指導で間違った認識をしていた~
37年間、クラス担任をしながら、学習指導の基本は、常に決まっていた。
「基本的な学習指導ができていれば、その学習理解でさらに発展した応用問題も対応できる」
こういう認識を持ちながら、クラスにいる低学力児を引き上げる試みをずっと追求してきたことになる。
「低学力児の引き上げ」が、教師としての第1の追求課題であった。
しかし、現役生活の中で、この課題に対して満足な結果をあげることができなかった。
★
そこに、びっくりする提起が行われた。
認知心理学の研究成果。
この提起は、学び合いの西川純先生の『学力向上テクニック入門』(明治図書)でなされた。
この本を読んで、がぜん認知心理学の研究成果を学ばなければと思い、横浜の図書館へ通い、100冊程度の本を読みあさった。
これらの本の内容に接しながら、今までの認識が、まったくの間違いであることに気づかされたのである。
認知心理学の研究結果は、まとめると次のようなこと。
★ ★ ★
一般的な知識や能力というものはなくて、我々の能力の大部分は、それぞれの状況や場所などにものすごく依存する。
★ ★ ★
これを認知心理学では、「文脈依存性」「領域固有性」と言っている。
どういうことか。
つまり、「あることで学んだことが、他の状況では使えない」「基礎・基本の理解で、発展した応用問題を解けない」
ということになる。
「おい、おい、おい、37年間私はまったくの認識違いをしていたんだ!」ということになる。
★
今回の共同研究では、私は、「復習テスト」と「宿題」を作成している。
そして、それを担任の先生に実施してもらっている。
だから、共同研究をしているクラスが、これだけの結果を生み出している理由は、ここに原因がある。
それは、認知心理学で明らかにされた「領域固有性」を克服できるように、その「復習テスト」と「宿題」の2つに込めたのである。
★
何をしたのか。
事前に、クラスで実施する業者テストと解答を送ってもらった。
私は、その「テスト分析」をしたのである。
そうすると、そのテストには、必ず「ひっかけ問題」がある。
それは、このテストを作成している人(学習指導要領に精通したプロが作っている)が、全国平均を80~85点に調整するために、テスト問題の中に、必ず1問か2問、むずかしい、教科書には出ていない問題を差し挟んでいることである。
この問題は、必ずそのままやらせれば、クラスの低位や中位の子供たちは、まちがいなくひっかかる。間違ってしまう。
子供たちは、「この問題はやったことがない!」という認識をもつのである。
認知心理学の「領域固有性」は、そのことを示している。
だから、いつまでも低学力児の点数は、上に引き上げることができないということになる。
もともと、そのようにテストは作成されているのであるから。
だから、何をしたのか。
私は、その引っかけ問題の類題を、復習テストと宿題に混ぜて、事前に練習できるように仕込んでいったわけである。
それだけではない。宿題には、教科書にない、ちょっと高度な問題も差し挟んでいった。
★
学校現場では、神話のように考えられてきたことがある。
「事前に、テストを見たりしたらだめだ!」と。
「そのようなことは、姑息なことである」と。
だから、いつもテスト用紙を配布してから、担任もその内容を知ることになる。
「この問題は、やったことがないな。でも、基本的なことは教えているから、その応用で解いていけるはずだ!」と。
こうなる。
実は、私がこのような認識を持っていた。
これがまったくの間違いであることを教えられたのである。
★
大切なことがある。
それは、点数主義に陥ってはだめであること。
点数を上げるだけにこだわって、目の前の子供たちを見ようとしないことになる。
時には、テスト問題を教えて、良い点数を取らせようとする先生がいる。これこそ姑息である。
しかし、こんな姑息なことは、いずれ子供たちから見抜かれてしまう。
私たちがこの共同研究に込めた最大の目的は、2つ。
①子供たちが算数が好きだという意欲と、算数が好きだという自信を持たせること。
②だからこそ、低学力児の点数の引き上げをしていくこと。
どうだろうか。
算数学習は、もともとこの2つのためになされていくべきではないのか。
そして、この①②のような子供たちが、共同研究で実際に生み出されてきているではないか。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 「自己流」で身に付けた力量で対応できなくなっている!(2019.03.16)
- 『教師1年目の教科書』が重版になる!(2019.03.13)
- 再び横浜野口塾のお知らせです(2019.03.10)
- つれづれなるままに~飛行機ができてきた~(2019.03.09)
- 『教師1年目の教科書』(学陽書房)が発売される(2019.03.05)
コメント