『AI VS 教科書が読めない子どもたち』の与えた衝撃!(2)
新井先生によれば、全国2万5000人を対象に実施した読解力調査でわかったことが以下のことである。
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・中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない。
・学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない。
・進学率100%の進学校でも、内容理解を要する読解問題の正答率は50%強程度である。
・読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い。
・読解能力値は中学生の間は平均的に向上する。
・読解能力値は高校では向上しない。
・読解能力値と家庭の経済状況には負の相関がある。
・通塾の有無と読解能力値は無関係。
・読書の好き嫌い、科目の得意不得意、1日のスマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と基礎的読解力には相関はない。
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愕然とする内容である。
このことで改めて、この結果をどのように判断したらいいかと考えてみる。
①このような大変な事態が、日本の中高生の中で進んでいたことについて、今回初めて気づかされたわけである。
なぜ、今までこのことが問題視されなかったのか。
②この事態を招いている原因は何か。
③これからこの事態は何を起こしていくのか。
④これからどのような対策をとらなければならないか。
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少し説明が必要である。
①についてである。
私は、新井先生が指摘されていることについて、まだどこか半信半疑なところがある。
全国学力テストで、これだけ調査をしながら、この事態に気づいていない。これは何なんだ、何を調査しているのかということである。
今回この調査に使われたテストは、新井紀子先生が、独自に開発した基礎的読解力判定のリーディングスキルテスト(RST)である。
生活体験や知識を動員して、文章の意味を理解する「推論」、文章と、図形やグラフを比べて一致しているかどうかを認識する「イメージ同定」、国語辞典的、あるいは数学的な定義と具体例を認識する「具体例同定」など、読解力を6分野に分け、その能力を問うテストである。
新井さんと協力して研究を進めてきた埼玉県戸田市教育委員会の実績がある。
戸田第二小学校の小高美恵子校長は言う。
「本校は学力調査では全国平均を上回っていたので、RSTも高い点数を出すと思っていたのですが、思った以上に低かった。特に推論とイメージ同定が弱かったですね」と。(AERAによる)
続いて小高校長は、このようにも言っている。
「昔から読解力の重要性は認識され、読書や作文が推奨されてきましたが、そもそも読解力とは何かという視点で分析されたことはなかった。RSTで6分野の視点を得たことは、授業改善のきっかけになる。分かった以上、逃げられないですね。」と(AERAによる)。
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このようなことから考えると、全国学力テストの問題そのものを考え直さなければならないことになるはずである。
一体何を調査しているのか、ということになる。
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