相談を受けて~とにかく凌ぐのです~
初任のみかん先生から相談を受けました。
他の職業をされている期間があり、またお子さんもあるということでの初任者ということ。
次のような内容です。
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野中先生、初めまして。いつもブログを拝見し、勉強させていただいています。初任者のみかんと申します。尊敬する野中先生に、相談させていただきたいことがあり、コメントさせていただきました。
今、一番悩んでいることは、「今からクラスを立て直すにはどうしたらよいか」ということです。
野中先生が「クラスが荒れてしまったら、凌ぐしかない。」とおっしゃっていることはわかっています。8月に野中先生の本に出会い、4月から「その日暮らしの学級経営」をしてきた自分を悔やみました。そして夏休み明け、クラスを立て直そうと「目標達成法」や「「一人一当番制」に取り組みましたが、私の指導が悪かったのでしょう。子どもたちのやる気を引き出すことができず、失敗しました。今はもう行っていません。
教育県で県独自の行事、学習も多く、忙しさ、気持ちの余裕のなさから学習規律や学級規律を整えることが十分にできないまま目の前のことを必死にこなす毎日でここまできてしまいました。
しかし今、私にはクラスを立て直すという結果が求められています。
なぜなら、12月中旬からいじめが原因で不登校になったA君がいて、その保護者と毎日電話をしているのですが、「過ごしやすいクラスにしてほしい。」、「荒れていたようだが、今はどうか。」と言われるからです。
A君は悪口、からかい、物をかくされたり、時には暴力も振るわれていました。いじめの主犯格は5人ですが、クラスのほとんどの子がそのいじめをはやしたてたり、見て見ぬふりといった同調していたようで、我慢できなくなってしまったのです。2年生の時に保健室登校していたことがあり、精神面でも自己肯定感が低く、傷つきやすいから注意するように、と引継ぎを受けていた子でした。
A君は今精神科にかかっていて、医師からはまず心の回復をすることを優先し、登校刺激はしないように、と言われています。A君は自殺願望があり、学校の建物を見るだけで吐き気がする、ということで私にも友達にも会うことができません。しかし、また教室に戻りたいという意思があるとのことです。
学校ではいじめサポート班を結成し、A君には医師の言うとおりに心が回復できるまでゆっくり過ごしてもらい、学校側はA君の戻ってきやすい学級づくりを頑張ろう、ということになりました。
昨日、A君のいじめサポート班を学校で結成し、今後の学級指導について話し合いました。冬休み前にQUを取った結果、私のクラスは非承認、不満足軍がクラスの半分いる「荒れ始め型」だったため、SSTで「自分の自信の持ち方」、「友達との関わり方」等の項目を道徳の時間を使って2月までプログラムしてやっていこうということになりました。(技術を要することなので外部の専門の先生に依頼中です)
恥ずかしながら未だに毎日をこなすことでいっぱいいっぱいになっている私がクラスを立て直すにはどうすればよいか途方に暮れています。
日記へのコメントをして当日返すこと(学校の決まりです)、宿題の丸付け、実験準備等次の授業の準備、教材研究(家に持ち帰っても終わらないことが多い)で学校での空き時間は埋まり、子どもと一人一人と関わる余裕がありません。
放課後もいじめの件での会議や対応、6送会の主任の仕事、初任研のレポート、雑務に追われ、教材研究、丸付けは持ち帰り仕事です。味噌汁・ご飯授業の本も参考にさせていただいていますが、5年で内容も難しく、まだ教材研究に多くの時間がかかります。休日は普段できない家事、自分の子どもの相手をします。子どもを夫に任せて土曜日の午後は学校に仕事に行かせてもらいますが、終わりません。
今、私のクラスの状態は、全体的に学習意欲がある子が多いので下手な私の授業でも成立しますが、友達同士の関係が希薄で群れの状態、叱ることが多く、面白いことを言ったり、楽しい授業ができない私に不満を持っていることが子どもたちの顔から伝わります。
私はA君はもちろん、クラスの子どもたちを傷つけてしまいました。居心地のよいクラスにしたい、楽しい授業をしたい、子どもたちをたくさんほめたい、一人一人と関わってあげたい、と思うのですが、余裕がない中、どうすればいいのでしょうか。クラスの子どもたちのために、今私が一番しなければならないことは何なのでしょうか。このままでは、私の家庭も、クラスも崩壊しそうです。助けてください。お願いします。
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相談を受けて、ため息が出ました。
みかん先生は、もう十分にがんばっているのです。精一杯やれているのです。
これ以上がんばる必要があるのか、と思ってしまいます。
まず、校長の担任人事の失敗ははっきりしています。
臨任経験もまったくない、初任の女性を(しかも2人のお子さんがいる)、5年生の担任にするという暴挙はとんでもないことです。
みかん先生が力量がないということではなくて、初任の先生ではやっていけなくなっているのです。
今、5,6年の担任は、それまでの4年生までの担任とは、隔絶したものになっています。高学年の女子たちが思春期を迎えるようになっています。反対に、男子はかつての1,2年生ぐらいの幼さを持っています。男女のバランスがあまりにも悪いのです。
そういう状況の中で、突然初任の先生が担任をして、うまくいくはずはないのです。
それでも、みかん先生は、ここまでよくぞがんばってこれたものだと、感心してしまいます。
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これから何ができるか。
クラスを立て直すためにはどうしたらいいか、と問われています。
これは正直に答えなければなりません。
今のこの時期からクラスを立て直すのはむずかしいのです。
それは、もはやみかん先生と子供たちとの関係の糸が固定し、こじれてしまっていて、その糸を短期間に正常に戻すことがむずかしいためです。
クラスの回復は、1学期の間なら可能です。
でも、それでもよほどの頑張りが必要。
2学期からは一月ごとに大変になっていきます。
それは関係の糸がこじれるから。その修復がむずかしくなるからです。
ほんとの勝負は、4月の1ヶ月間なのです。
★
先生は言われています。
「私はA君はもちろん、クラスの子どもたちを傷つけてしまいました。居心地のよいクラスにしたい、楽しい授業をしたい、子どもたちをたくさんほめたい、一人一人と関わってあげたい、と思うのですが、余裕がない中、どうすればいいのでしょうか。」
A君が不登校になっています。
クラスが荒れてくると、必ずいじめが始まることを覚悟し
なければいけません。
クラスの子供たちを傷つけてしまったと、先生は言われていますが、みかん先生は精一杯やったのです。過度に自分を責める必要はありません。
良い先生ばかりが子供たちにとっていいとは限りません。
子供たちは、いろんな先生から学んでいけばいいのです。
居心地のよいクラスにしたい、楽しい授業をしたい、子どもたちをたくさんほめたい、一人一人と関わってあげたい、と言われています。先生の思いは素晴らしいです。
でも、初任の先生にとっては、その1つ1つがとてつもなくむずかしいのです。
それでも、みかん先生は精一杯やった、のです。
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これからどうするか。
3学期は、はやい。
あっという間に、終わりを迎えます。
その間、とにかく「凌いでいく」以外にないです。
3学期の間はとにかく凌いで、6年生で他の先生に子供たちを託せばいいのです(もう絶対に持ち上がりの6年担任なんかを引き受けてはいけませんよ。責任をとって、もう1年がんばりますと言いがちになります。でも絶対にやってはいけません。それで失敗した先生はいっぱいいるのです)。
教師の仕事で、何よりも良いのは、3月まで凌げば、また新しい気持ちで4月から新しい子供たちと出会えることです。
やることは1つだけ。
子供たちのそばにいてあげること。
教室にいつもいてあげればいいのです。
そして、自分が今できることをやっていけばいいのです。
それだけで十分。
凌ぎ方のために、この詩をもう一度載せておきます。
このようにやればいいのです。
君ならできる 葉祥明
今どんなに苦しくても
今日 いち日
がまんできれば
それでいい
次の日は次の日で
また我慢すればいい
そうやって一日一日
我慢していけば
いつか もう
我慢しなくていい日が
必ず来る。
その日まで
大丈夫 君なら
きっと耐えていける!
★
私は、みかん先生のこれからの教師としての可能性を信じます。
5年生というクラスで、これほどにがんばってやれてきたがんばりと、ねばり強さは、みかん先生が持っている天分と言えるものです。
だから、3月までがんばっていけると信じています。
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