算数の授業ということ(3)~発想を変える~
私は算数について深く研究してくることがなかった。
と言っても、37年間ずっと算数の授業をしてきたのであるが……。
算数に関する本はいくらか読んだことがあるが、特別に算数について研究したことはほとんどない。
そこで、覚悟を決めて「味噌汁・ご飯」授業の算数編の本を出版するとき、その参考に、さまざまな算数本を読んでみようとした。
有名な先生たちの本である。
2,3冊読んで、「これは無理、無理!」と。
別に内容がひどいというわけではない。その反対。
良すぎる。
なるほど、なるほどとうなずく。
でも、2,3冊で止めてしまった。
この種の本をいくら読んでも、まったく参考にならないと分かったからである。
これらは、本格的に算数を勉強しようとしたり、本格的に算数を研究しようとしたりする人たちの本。
いわゆる「ごちそう授業」の作り方を書いてある。
多くの普通の先生たちの「日常授業」とあまりにもかけ離れている。
多くの小学校の教師たちは、算数だけを授業しているわけにはいかない。他の教科も教えなくてはならないのである。
明日の授業準備にささやかな時間しかない。
いやいや、ほとんど授業準備をしないままに教室に行って、「ぶっつけ本番」授業の場合だってやっているわけである。
多くの普通の先生たちの日常に耐えられる算数の授業を考えようとしみじみと感じる。
それが「味噌汁・ご飯」授業であるから。
★
発想や考え方を変えなければならなかった。
「味噌汁・ご飯」授業の原点は、最後の勤務校での実践である。
最初に受け持った5年生は、算数は最悪で、かけ算九九がまともにできない子供たちがクラスの三分一ぐらいいた。
算数嫌いもいっぱい。
こんな中でまともな5年生の算数授業ができない。
学校自体が低学力にあえいでいる中で、こうなっていたわけである。
2年目から「算数を重点研究にしましょう」と呼びかけ、算数への挑戦を始めた。
まず、計算力をなんとかしなくてはならない。
学校全体で取り組んだことは、授業の最初の5分間を「計算タイム」にすること。
百マスの計算プリントを印刷室に常備しておいて、それを使って計算練習をさせる。
使い方は、先生たちを集めて推進委員会が模擬授業をして徹底する。
※百マス計算は、『徹底反復百マス計算』(小学館 陰山 英男著)を参考にさせてもらった。
1年から6年まで、最初は繰り上がり、繰り下がりの計算から始め、中高学年は、わり算まで行くというコース。
私は、1時間の授業を以下のようにした。
学校全体では、①だけが統一されていた。
<4段階分割指導法>
①計算タイム(5分)…百マス計算
②前時の復習タイム(5分)…復習テストを作る
③本時(30分)…教科書を教える
④スキルタイム(5分)…スキルに挑戦
1分の無駄もなく、トントンとテンポ良く進む。
本時は、30分しかない。
どうするか。
教科書をそのまま教えていく以外にないわけである。
この実践の成果は大きかった。
子供たちができるようになってきたのである。
特に、低学力児の進歩が大きかった。
私のクラスは、テストの平均が90点以上という状態を作れるようになっていった。
学校全体で3年間算数の研究をして、高学年で基礎計算ができない子供たちがいなくなっていったわけである。
計算タイムの効果は大きかった。(つづく)
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