横浜でのいじめ事件
福島第一原発事故で福島県から自主避難した中学1年の男子生徒がいじめを受けて不登校になっている問題が話題を集めている。
横浜市の林文子市長が記者会見で、学校側の対応の遅れの原因を調査するように委員会に指示したことを明らかにしていた。
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またしてもである。
私の地元である横浜で、こういういじめが再び明らかになっている。
心痛めることである。
多くの人たちは、「またしてもか!」と思っているはずである。
これほどいじめは騒がれてきたのに、一向になくならない。学校は何をしているのか?教師たちは、何をしているのだろうか?
怒りがこみ上げてくることであろう。
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私がまだ現役の頃と、今の事態は何が違っているのだろうか。
はっきりしているのは、「いじめ防止対策推進法」という法律が2013年6月28日に与野党の議員立法によって国会で可決成立し、同年9月28日に施行されていることである。
文科省や教育委員会の指示のレベルではない。
はっきり法律として可決されていることである。法律だから守れなければ罰則がつく。
この法律で何が変わったのか。
①各学校は、いじめ防止の取り組みなどの「学校いじめ防止基本方針」を必ず定めなくてはならない。策定には、保護者などにも参画してもらい、策定後は公表する。
②各学校は、複数の教員、心理や福祉の専門家、弁護士、医師、警察経験者などによる「いじめ対策委員会」を必ず設置しなければならない。同委員会は、いじめの通報や相談などの窓口ともなる。
③各学校は、いじめがあると思われる時は、速やかに事実関係を確認し、措置を講じるとともに、その結果を教育委員会に必ず報告する。
④各学校は、いじめの定期的なアンケート調査や教育相談を実施し、いじめを訴えやすい体制を整える。
⑤子供の心身の安全や財産に関わる「重大事態」が発生し、または発生する恐れがあれば、直ちに警察に通報し必ず援助を求める。
⑥「重大事態」の申し立てがあった場合、その時点でいじめはないなどと考えず、「重大事態」として教育委員会に報告し、調査する。
①から⑥までのことをきちんと各学校は実施しなければいけないことになったのである。
★
先生たちは、もう一度「いじめ防止対策推進法」を読み直してほしいものである。
今回の横浜のいじめ事件は、この①から⑥がきちんと施行されていれば、こういう新聞沙汰になることはなかったはずである。
小学校の2年生段階で徹底的に「いじめ防止」をしておけば、このような事態になることはなかったのである。
問題は、ここである。
この学校はやっていない(はずである)。
法律など、当事者が守ろうとしなければ意味がないからである。
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どうしてこういう事態になるのか。
恐らく、学校現場にいない人たちにとっては、不可思議な現象であるに違いない。
でもはっきり言っておきたいが、学校現場では、こんな事態だけではなく、いじめを防止し、解決した事例なんかごまんとあるに違いない。そんなことなんか報道されないだけである。
だからこそ、何で先生たちは、こういう金品に関わることを見つけられないのか?
何で先生たちは、子供や保護者が訴えていることを真剣に取り上げようとしないのか?
こんな疑問がわき上がる。
この問題の根っこには、教師の多忙さ、仕事の多さによる疲弊感が横たわっていると、私は睨んでいる。
こうした重要な「いじめ対策」が、数多くある仕事のうちの1つとしてしか受け止められない感覚とでも言えばいいかもしれない。
部活指導、生徒指導、児童指導、教材研究、学級指導、保護者との相談、さまざまな研究会……これらの仕事の1つとして「いじめ対策」がある。
これにばかり力を注いでいるわけにはいかないのである。
目の前の蠅を振り払っていくのに精一杯。
これからも、道徳、英語の教科化、アクティブ・ラーニング等が控えている。
だから、今回の事件を契機に、学校の管理体制などをさらに強めていくことが予想される。
ますます教師たちはぼろぼろになる。
「たし算発想」で何でもかんでも積み足してきた、その結果がこういう現象を起こしてきていることを、文科省も教育委員会も、真剣に考えなければいつまでも同じようなことが続いていく。
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