きこ先生へ~これから準備をすればいいのです~
きこ先生、返事が遅れました。
9月27日から10月の1日まで、ずっと北海道の学校訪問をしていました。
「叱れない」という悩みですね。
先生が最後に「情けない質問で申し訳ありません」と書かれてありますが、情けない質問でも何でもありません。先生にとって重要な課題ですから。
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きこ先生は、きっと小中の学校で「いい子ちゃん」で過ごしてきて、あまり叱られた経験がないのでしょう。
先生になりたいと思ってきた人は、そんな方が多いのです。きこ先生だけではないですよ。
ただ、「叱れない」ということは、これから教師として続けていくことは困難なことです。
これだけは、はっきり伝えておきたいのです。
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しかし、今のきこ先生の環境は叱る環境には不適当です。
まず第1に、3年の副担任で、TTでしょう。
はじめて教師になって、しかも中3ですよ。
どうしても引いてしまいますよ。
第2に、授業していないでしょう。それは、子供たちから甘く見られて当然です。
きちんと担任をしていること、授業をしていることが子供たちから「先生」として認められる条件ですから。
第3に、今「叱る」場面があまり出てこないでしょう。
担任をしていたら、どうしても叱らなければならない場面が出てきます。
そこで、きちんとして教師として「叱る」ことができるかどうかなのです。
「ダメでしょう。そんなことしちゃ!」と注意するだけでは、もう子供たちから完全に甘く見られてしまいます。
子供は残酷です。悪魔みたいな側面を持っていて、担任があまり叱らないと思いきや、とたんにやりたい放題し出します(もちろん、天使みたいな側面もあるのですよ)。
★
ただ、キャラクターの問題があります。
かつて、知り合いの先生(女性)が初任で中学の担任になりました。自分の背より高い子供たちばかり。
そこで、なめられたら困るということで「てめえ!何しているんだ!」という感じで子供たちに迫ったというのです。
1ヶ月で学級崩壊になったということでした。
また、小学校での初任の先生(女性)の話も聞きました。
4年生の担任。4クラス。
前年度の3年生では、荒れまくった学年で、受け持った他の先生たちは「とにかく厳しくいこう」という方針で、初任のその先生も厳しく、厳しく、子供たちに迫ったそうです。
このクラスも、1ヶ月で学級崩壊してしまいました。
これは何かということですね。
これは、自分のキャラクターに合わないことをやって、子供たちに見透かされてしまった結果です。
自分に合わないことを無理してやってはダメなんですね。
子供をばかにしてはならないのです。
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ただ1つだけ、無理をしなくてはならないことはあります。
それは、「教師」として子供たちの前に立つということです。
「仲良し友だち」先生ではダメなんです。
これを勘違いして、学級を崩壊させる初任の先生たちがいっぱいいます。私は頭を抱えております。
「教師」として子供たちの前に立つということは、毅然としていて、子供がやってはいけないことをしたときには、きちんと「叱る」ことができることです。
これだけでいいのです。
「教師」になったというのは、子供たちを教え導き、育てていかなければいけない課題を背負ったということ。
単に、授業をしたり、学級活動をしたりすればいいのではないのですから。
★
きこ先生、「私はダメだ!」と思われているのかも知れません。
でも、安心してください。
最初からこんなことはできません。
「学生」から「教師」になるということ。
すぐにはできません。
私は今まで1年目の初任の先生と2年目になった先生を、見てきました。
がらりと変わるのですよ。別人になったみたいです。
まず、顔つきが変わります。歩くそぶりが変わります。
私は「ああっ、教師になったんだなあ」と思います。
★
ハワイのレストランのマネージャーに雇われた30代後半の女性の話を本で読んだことがあります。
最初の第一歩のマネージャー教育。
それは、歩く格好を変えること。
「ウエートレスみたいな歩き方ではダメだ。どこから見てもマネージャーと思われるような歩き方をしなさい!」と。
そして、その歩き方を練習させるというのです。
ものを言わなくても、遠くから見ても一目でマネージャーであることが分かる「態度づくり」。
これが最初の教育だというわけです。
これはとても参考になります。
「教師」として行動するためには、そのための準備がいるということ。それは「教師としての態度づくり」なんだというわけです。
★
きこ先生、小学校へ異動されるのですね。
クラス担任としてこれから過ごすことが出てくるのですね。
安心してください。
今からその準備をすればいいのです。
「教師としての態度づくり」ですよ。
毅然として子供たちの前に立つとは、どうすることか。
それはきこ先生のキャラクターに合わせて考えればいいのですが、例えば次のようなことです。1つの例です。
①堂々として歩く。
②にっこりほほえみながら子供たちに話す。
③指示する時は、きっぱりと指示し、確認をきちんと
する。
「すわりなさい」と指示したら、全員が座っている
かどうか確認をして、次の指示を出す。
④やんちゃな子供が、学校や学級のルールを破ってい
たり、やってはいけないことなどをしたら、きっぱ
りと「やめなさい!決めたことをまもっていない
でしょう!」ときっとなって叱る。
①から④まで全部練習をするのですよ。
鏡を見ながら、練習をするのです。
それが「態度づくり」なのです。
要するに、最初は「演技」をすることから始まるのですよ。
★
こんなことをやって「教師」になっていくのです。
きこ先生は、今まだ「教師」になれていないのですから、これからその準備をしていくことです。
その準備の場が、今の講師としての場なのです。
少しずつ自分のできることをやっていけばいいのです。
良かったですね。
最初から担任として踏み出していれば、大変なことになっていたかもしれません。
実に幸運な踏みだしですよ。
最後に読んでほしい本を上げておきましょう。
『必ずクラスがまとまる教師の成功術』(学陽書房)
教師になるための縦糸、横糸の張り方が書かれています。
『新卒教師時代を生き抜く学級づくり3原則』(明治図書)
2人の初任者がどのような学級経営をして、うまくクラスを作っていったかが書かれています。
きこ先生、またコメントくださいね。
きこ先生の、これからの教師人生の幸運を願っています。
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