ここが最後の砦ではないか!
朝日新聞に、氏岡さんが以下のようなことを書いていた。
(2016.9.2 社説余滴)
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次の学習指導要領が2020年度から小中高校で順次始まる。それに向け、中央教育審議会の部会が8月末、審議まとめ案を了承した。
「我が国の子供たちの学びを支え、世界の子供たちの学びを後押しする」
部会がまとめ案で自らそう述べるほど意欲的な案だ。
これからの社会で必要な力を育てようと、中身は盛りだくさんになった。例えば、小学校。18年度から先行する道徳の教科化に加え、英語の高学年での教科化、プログラミング教育の必修化もある。
特に英語はいまの時間割に入りきらず、短時間学習や土曜日、夏休みで対応する。学校はこなせるのか。
小中高を通じた課題として文部科学相が中教審に諮問したときから盛り込まれていた「アクティブ・ラーニング」(能動的な学び)は、既に多くの学校が取り組んでいる。
話し合いや発表を採り入れ、時間が足りなくなる授業をこの間、いくつも見た。
深い学びを目指せば、相応の時間がかかり、教える中身を絞らざるを得ないと思うのだが、どこまで可能なのか。
審議を傍聴していたが、こうした時間や内容の量をめぐる議論は深まらなかった。
その一因は、文科省が「ゆとり教育」批判から受けた傷が、まだ癒えていないことにあるように思う。
文科省は02年度からの前回の指導要領で、教える内容を3割削減し「学力低下を招く」と集中砲火を浴びた。
その轍(てつ)を踏むまいと5月、馳浩(はせひろし)・文科相(当時)は「ゆとり教育との決別宣言」として、「内容の削減を行うことはしない」と言い切った。
今回の指導要領がアクティブ・ラーニングなどで主体的な学びを重んじ、その姿勢がゆとり教育とも通じるため、自民党内から「また削るのか」と臆測する声が出て、対応を急いだのだ。そして議論は打ち止めになった。
文科省は「ゆとりか詰め込みか」の対立を超え、「質も量も追求する」と言う。だからといって増やすにせよ減らすにせよ、量の検討をしなくてよいわけではないだろう。
「ゆとり教育との決別」を掲げるなら、批判を恐れず、量の問題に向き合うべきではなかったか。
中教審は年内の答申を目指し、指導要領は年度内に改訂される。足元の学校現場の現実を踏まえ、確実に実現できる内容か、その量はどうかを吟味してほしい。
(うじおかまゆみ 教育社説担当)
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「足元の学校現場の現実を踏まえ、確実に実現できる内容か、その量はどうかを吟味してほしい」と氏岡さんは書かれている。
まさにその通り。
道徳の教科化、英語の教科化、プログラミングの実践、そしてアクティブラーニングなのである。
現場では、その1つ1つの実践のために多大な時間がかかる。
ただでさえ、これだけの過密の内容なのに、これにまた付け加えようとしている。
旗を振る人間はいい。
実践していくのは、現場教師なのである。
★
私は、根本的な考え方のところで不信感がある。
「教師を人間として見ているのか?」
というどうにもならない不信感である。
はっきり言っておくが、うまくいかない。
今だってこなせなくて、疲弊しているのである。
これ以上詰め込んで現場教師がこなせるはずがない。
だから、形だけが繕われて、実質は形骸化する。
やってるだけになる。
そうでもしなければ、現場教師は生きていけないはずである。
★
北海道の山田洋一先生がフェイスブックに書かれていた。
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昨夜は、電話でサークルメンバーと打ち合わせした。
「教師として生きる」も大事だけど「わたしとして生きる」ことも大切にする。
そんな新しい研究会を始める。
教師は「どのように指導するか」ということにばかり目が向いているが、そろそろ「どう生きるか」を真剣に考えよう。
下世話な言い方かもしれないが、教師であることの「うまみ」はどんどん減ってきているのだ。
教師という仕事をとらえなおしたり、自分の生きる目的みたいなことを考えなければ、ただのブラック労働になってしまう。
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私が「味噌汁・ご飯」授業を提唱したとき、そこに込めていたのは、いかに人間として仕事をとらえていくかという視点であった。
保育園に子供を預けているママさん先生が、その忙しさの中できちんと教師としての生活が成り立っていく。
そのための仕事を、どのように作り上げていけばいいか。
ただ、給料のためだけの仕事ではなく、自分の仕事に誇りが持てるものにしたい。
それが「日常授業を豊かにする」というテーマであった。
この課題がこなせていれば、教師の仕事はなんとかなっていく。
ここが最後に残された砦ではないか。
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