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北海道の片隅に一灯の灯火を掲げる~『学力向上プロジェクト』本の広がり~

      今回、北海道の大曲小学校から出版された『学力向上プロジェクト』について、校長の橫藤雅人先生が明治図書オンラインで答えておられる。
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学力向上、自己肯定感アップにつながる日々の授業改善をしよう!

北広島市立大曲小学校長横藤 雅人
 今回は横藤雅人先生に、新刊『「味噌汁・ご飯」授業シリーズ 日常授業の改善で子供も学校も変わる!学力向上プロジェクト』について伺いました。
横藤 雅人よこふじ まさと

札幌市立小学校教諭、教頭、校長として勤務し、2012年より北広島市立大曲小学校長。北海道教育大学招聘教授。

―本書は「味噌汁・ご飯」授業シリーズとなっていますが、「味噌汁・ご飯」授業とは、一体どのようなものなのでしょうか。

 これは野中信行先生が命名された授業の考え方です。野中先生は、研究授業によく見られる重厚な指導案とかカラフルな張り物とかで構成する授業を、「ごちそう」授業と呼びました。そして、「ごちそうは、毎日だと飽きてしまう。毎日食べる味噌汁やご飯は、効率的に作ることができ、少しの手間でいろいろ変化させることもできる。しかも基本的な栄養はきちんと採ることができる。授業も、この味噌汁やご飯のようなものを目指そう。」と主張されました。これは、大曲小学校が目指す日常授業の重視と一致したのです。

―学校全体で、その「味噌汁・ご飯」授業の考えを取り入れ、日常授業を改善しようと思ったのはどうしてですか?

 本校は、学力が伸び悩んでいました。各学級のルールや授業の方法などが我流だったからです。また、初任者が毎年入ってくる状況もありました。「味噌汁・ご飯」授業では、学習規律の確立や指導言の整理、ユニット法などすぐに取り入れられる具体的な方法が提案されていました。とても取り入れやすく、子供たちの学力を詰め込みでは無く伸ばすことができると思ったのです。

―それはどのような取り組みから始まったのでしょうか?

 最初に着手したのは、環境づくり。教室内外の環境を整え、掲示物、子供たちのノート、使用する筆記用具などから見直していきました。
 次は、学習規律。ノートをきちんと取ることや、立腰(腰を立てて腰掛けたり音読したり書いたりする)言葉遣いなどに、どの学級も取り組むことにしました。
 その次が、指導言の整理や1時間を分割して展開するユニット法、児童の活動をきちんと評価するフォローなどです。
 これらと並行して、漢字や計算の検定や年間の各教科の内容を横断的に展開することなどにも取り組みました。本書には、それらを図表や写真を多用して紹介しています。

―また、日常授業を改善した結果、どのような効果がありましたか?

 本校では、子供たちの自己肯定感の低さが最大の課題でした。全国学力・学習状況調査質問紙の「自分には、よいところがあると思う」という設問では、例年とても肯定的な回答が少なかったのです。そのため、少しのことでキレやすい子が多く、学習どころではないという感じでした。しかし、日常の授業がテンポ良く展開されるようになるにつれて、学校全体が落ち着いてきましたし、テストの点数やノートなど、目に見えるところが良くなるにつれて、自分や他の子を自然に認められるようになりました。
 学力もゆるやかに上がりました。全国学力・学習状況調査では、全国でも低かった北海道の中で最低レベルでしたが、平成27年度の結果は、ほぼ全国平均となりました。

―最後に全国の先生方に、メッセージをお願いします!

 教育困難時代で、どの学校も児童・生徒の荒れに直面していると思います。学校全体で日常授業の改善に取り組むことにより、そうした状況を打ち破ることができるという希望の灯を北海道の片隅に点すことができたのかな、と思います。
「一灯照隅(いっとうしょうぐう)」という言葉があります。延暦寺の開祖最澄の言葉です。
「最初は小さな一隅だけを照らすような小さな灯火だが、心を込めて一隅を照らしていこう。その灯火が広がって掲げる人が万となれば、国中が明るく照らされる(万灯照国)だろう。」というのです。
 ぜひ、本書を参考にして、元気のいい学校づくりを進めて欲しいと思います。
(構成:木山)
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 この本について、畏友梶浦真さんは、その書評をブログで書かれている。
 これも合わせて読んでいただきたい。

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 日常授業の改善で 子供も学校も変わる!
『学力向上プロジェクト』
野中信行 監修 横藤雅人 編著・北広島市立大曲小学校

 人間の行動は関心と意欲に左右されるものだ。知識はなくとも、「関心や意欲」があれば、人はかなりのことが出来る。そもそも、脳がそのような仕組みになっているのだ。例えば、人にとって最も関心が高い対象は自分自身であろう。「こんにちは」とあいさつをされた場合と、「〇〇さんこんにちは」と自分の名前が入っているあいさつでは、脳内の活性度が大幅に変わることが分かっている。人は関心を持てば意欲を喚起でき、能力を発揮しやすくなるのだ。それは、大人も子どもも同じである。
 
 では、教師にとって最も関心が高い問題はなんであろうか。学校や教師の状況によっても様々であろうが、「子どもの学力育て」については、とりわけ関心が高いと言えるだろう。それでは、子どもの学力を伸ばすには、どうしたらよいのだろうか。方法は無数にある、と言いたくなるところだが、教師の指導技能の向上こそが、学力伸ばしの要である。指導技能の向上なくして学力向上は困難だ。しかし、指導技能と言っても、単元設計や授業設計、学級経営や発問技能など、その要素は多様だ。すべての要素を視野に入れた、教育実践は困難である。

 ところが、「学力向上プロジェクト」という一つのテーマの元、授業設計、学級づくり、学習規律の成立、自己研修、課題設計、言葉遣いの工夫、子どもの実態の見取り、教師の協働的な組織づくり等に取り組み、成果を挙げた小学校がある。北海道の北広島市立大曲小学校がその実践の舞台だ。
 特に、「味噌汁・ご飯」授業で知られる野中信行氏をアドバイザーに招き、シンプルな構成で効果的な授業づくりを取り入れた点は大きな特徴である。「味噌汁・ご飯授業」については野中氏の書籍に詳しいので、そちらをお読みいただきたい。授業の一時間の指導過程を①「導入での教科の頭づくり」②「展開に向かって課題の世界に子どもを導く」③「より深い学びに向かって課題解決や発展的課題に取り組む」という三ユニットで構成するという点が、同授業の特色の一つだ。学習活動のねらいを明確に絞り、三ユニットというシンプルな授業構成にすることで、子どもの理解とやる気を同時に促すことがねらいである。

 この夏、北海道で実際に野中氏の模範授業を見る機会を得た。まず、授業冒頭で音読などのシンプルな活動をさせ、子どもの意識の学習スイッチを入れる。ここから子どもの頭が、教科的な方向に動き出していくことになる。いわゆる、クレペリンの作業興奮を喚起し、子どもの頭を学習頭にするのだ。そして、次には子どもからの反応を期待した言葉がけや、指示を行い、子どもの活動や発言を評価していく。「いいね」「まえよりもっといい」「スピード感もでてきた、すごい、すごい・・・」、こうしたフォローによってますます子どもの学習温度は上がる。説明と指示だけで教えるのではなく、言葉や活動を子どもから引き出して評価して行く。
 そして、子どもが見つけた法則性や決まりごと、子どもの意見の同じ点や相違点を捉え、子どもと共に明らかにしてゆく、という授業であった。小さな活動と評価、そして単純な反復学習ではなく、スパイラルに既習をなぞりながら変化をさせていく授業。「スモール・ステップ・スモール・スパイラル」の連続で、子どもの学ぶ意識をアクティブにしていく授業であった。

 大曲小学校はこうした授業スタイルを基本にしながら、教師自らが批判し合いながら磨き合う活動によって、学力向上への具体的対応策を生み出していった。その手法、過程、哲学が詰まっているのが本書「学力向上プロジェクト(明治図書刊)」である。同じ授業実践者であれば、内容のリアルさに思わず、そうか!と声を出しそうになる部分も多い。特に、取り組んだ個々の先生方が、そのキャリアに応じて自分の授業を見直し、より進化した授業実践のポイントを生み出していく姿には感動すら覚える。関心や意欲の焦点を絞って問題解決に取り組む活動は、教師にとっても子どもにとっても最大の学習条件なのであろう。
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