大曲小学校が提起したもの(1)~「研究」を「研修」に変える~
北海道大曲小の「学力向上プロジェクト」(明治図書刊)が売れている。
私もじっくりと読み直してみたが、「この学校は、学校ぐるみで大変な課題を提起したものだなあ」というのが正直な感想である。
橫藤雅人校長は、表紙の袖に次のようなことを書かれている。
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学校全体の日常授業の改善で、学力向上を実現する!
大曲小学校では、学校力向上アドバイザーの野中信行先生の提案する、「学習規律の徹底」や1時間の授業を分割し、課題を解決する授業(=ユニット法)、「空白の時間を生まない」「ノート指導を中心にする」などの全員参加の日常授業「『味噌汁・ご飯』授業に全学級で取り組んでいる。
また、学校の中心的な使命である基礎学力の保障を目指し、各種検定や家庭学習の方法を開発した。
これらの取り組みを支えたのは、次の4つである。
1 「研究」をやめ「研修」を推進すること
2 「日常授業」の改善にターゲットを絞った研修にすること
3 校内、公開の研修会を全員参加の「ワークショップ」型に変 えること
4 各学年の最低学力保障を明示すること
この取り組みを通じて、授業に集中できる児童が増えた。また、謙虚に指導方法を見つめ直す「一人研究授業」などを通して、教師自身が明るくなり、これらには保護者からも肯定的な評価をいただいている。「『「味噌汁・ご飯」』授業」を継続・発展させていく本校の改革の取り組みを是非ご覧いただきたい。
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ここに大曲小が取り組んだことがまとめて整理されている。
まず、この学校は、「『研究』をやめ『研修』を推進すること。」と舵を切っている。
日本全体の学校で進められている「研究授業」のあり方が、きわめて空疎になっていることは、ほとんどの先生たちが気づいているはずである。
気づいていないのは、推進している先生たち。
もともと学校は、「研究」なんかできなかったのである。
これができる学校は、ほんの一握りの学校だけである。
研究テーマを決めて、研究仮説を設定し、研究を推進する。
各先生方は、年に1回の研究授業をする。
そして、まとめとして研究紀要を作成する。
いわゆる年中行事として進めているだけで、そこから得られるものはほとんどないに等しかった。
どだい1回程度の研究授業で、研究をしたという発想になることがおかしかった。
他の分野で研究をしている人たちからみれば、「ちゃんちゃらおかしい」できごとなのである。
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当校が研究から研修に舵を切った過程を次のように書いてある。
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1つは、学級ごとに様々な「やり方」「約束」があり、年度が替わるたびに各種の指導を一からやり直さなければならなかったからである。
もう1つは、研究担当者が難しい話をし、参加者が受け身のままで進んでしまう一方的な研究に陥りがちだったからである。また、その研究のために公開される授業は、野中先生が言われる「ごちそう授業」になりがちだったからである。
本校では、校長が学校経営方針で「日常授業の充実」を打ち出し、研究部が廃止されて研修部となった。その意図は、「成果に結びつかない研究」の改善である。研修部会に足を運んだ校長は、よく「研修は学校改革の鍵だ。」と言った。そこで、研修部では、学校を改革するような研修の実現を目指して、以下の方針で推進にあたることにした。
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現実に行われる「研究授業」は、日頃の授業ではなく、飾り立てた「ごちそう」授業 である。
この研究授業だけは、熱心に教材研究をし、膨大な指導案を作り、さまざまな準備をして臨む。
他の先生方から見られるからである。
でも、その1回が終われば「終わったあ!」ということで、日頃の授業に戻っていく。
要するに、日頃やっていない授業を見せ合う研究会をしているだけである。
そこから何が生まれてくるのか。
教師たちは授業もうまくならない。子供たちも変わらない。ほとんど何も変わらないのである。
こんなことを何十年も日本全国の学校で続けている。
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大曲小は、こういう「研究」に見切りをつけて、「研修」として再出発したのである。
このことで大曲小は、大きな変革をとげていく。
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