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質問に答えます~教師と生徒の距離が近いだけでは、教育は成立しない~

  たつ先生から次のような質問が寄せられた。
 まだ、こんな学校があるのかと思い、驚いた。
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 初めまして。いつもブログを拝見させていただいております。また、先生の本を読んで、学級経営を勉強しています。

 今現在4年生を担任しています。そこで今、学年の他の教師のやり方に違和感を感じています。

 今は4学級です。学年主任のベテランの男の先生と若い先生が2人と僕の4人です。
 僕以外のクラスでは、子供が担任をあだ名で呼んでいます。また、常に「先生次何やるの?」などと友達言葉です。授業中も休み時間もです。また、担任は子供を下の名前で呼び捨てにしています。(ぼくは、苗字に「くん」「さん」づけで呼んでいます。)あまりにも距離が近すぎると思っています。友達のような先生では、子供の力を伸ばすことはできないと。

 僕のクラスでも4月当初からそういう様子でした。学年に合わせようかなとも思ったのですが、これではだめだと思いました。そして5月に入ってからクラス週目標に「目上の人に対する言葉遣い」を設定して改善しました。他のクラスの先生をあだ名で呼んではいけないとも言いました。

 それでもやはり学年に合わせたほうがよいのでしょうか?子供や親は何であの先生はだめなの?などと思うものでしょうか。よくよく学校内を見てみると、高学年でも友達みたいな先生が多いです。
 ★ ★ ★
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 ある中学校のことを思い出す。かつてのことである。
 私が勤務する小学校では、きちんと言葉づかいなどを指導し、中学校へ上げる。

  だから、荒れていた中学校でも、小学校の落ち着きとともに、次第に落ち着いていった。
 しかし、困ったことにその中学校は、教師と生徒がため口で話し、運動会の参観に行っても、1つの競技をやるのにだらだらして時間ばかりかかっている。もう少し、ぴしっとできないものかと思ったものである。
 

  それでも、中学校の先生たちは、非行に走る生徒もいないし、教師と生徒が仲良くやっているのでこれでいいのだという。
 私は、こんなことがいつまでも続かない。
 

  ほとんどきちんと縦糸を張ることがなく、たるんだ状態が続いている。
 教師と生徒の上下の関係がない。教師と生徒の、なあなあの関係が続いているだけであると、私は見ていた。
 

  案の状、私が退職したらすぐに荒れまくる。
 4階から机が降ってきたり、パトカーが常駐する事態が起こったのである。
 

  教師と生徒の秩序ある関係がない学校は、すでに壊れているか、あるいはすぐに壊れていくのである。こんなことは当たり前である。
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 実は、正直に告白するのだが、私も若い頃子供たちからあだなで呼ばれていて、それに自分でも満足していた。
 

  ただ、授業中と休み時間の区別はきちんとつけていたので、授業中はきちんと「野中先生」だったし、子供たち同士も「くん」「さん」で呼び合っていた。
 

  だから、クラスは大変にならなかった。
 子供たちの前で「教師」として振る舞うことに抵抗があり(教師という権力者として振る舞うことの抵抗感)、できるだけ「人間野中」でいたいという思いであった。
 

  常に意識したのは、自分のことを言うのに、「先生は…」ではなく、「私は…」と言うようにしていた。自分を「先生」と意識することへの抵抗であった。
 

  「子供たちとはお互い人間同士の付き合いをしたい」
 「子供たちと同じ目線で付き合いたい」
 「子供たちの思い、考えを大切にしたい」
 

  こんな考えが、私を占めていたのだと思う。
 私が若い頃は、子供たちの大半が前もって「生徒」することができた時代である。子供たちの方からすでに「縦糸」を張ることができたのである。
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 おそらく、たつ先生の学校の先生たちも、このような考えのもとに振る舞っているのであろうと想像できる。
 

  困るのは、何も分からない若い先生たちがベテランの教師のマネをして、こうして振る舞っている姿である。
 

  だから、たつ先生の行為は、実に真っ当である。
 教師と生徒の距離が近いだけの関係では、「教育」は成り立たない。
 

  きちんとした「秩序」も成り立ちにくいので、いつもざわざわしていて、もめごとが頻発する。
 教室が「安心・安全」で居心地がいい場所にならない。
 

  常に「不安」「心配」が同居する。
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 私たちは、子供たちの「関係づくり」は縦糸・横糸張りを提唱している。
 

  縦糸で、教師と生徒の上下の関係を作り、教室に秩序を作り上げる。
 横糸で、教師と生徒の心のつながりを作り、また生徒同士のつながりも求めていく。
 

   この2つでバランス良く関係を作っていくのである。
 

   この「関係づくり」は、すでに東京学芸大学の論文にもなっている。
 「学級経営に影響を及ぼす教師ー児童関係の論文」2013年4月(森田純先生、山田雅彦教授)
である。
 

  この論文の結論は2つ。
 

  1つは、児童の社会性の高い学級の担任は、まず縦糸を確立し、その後に横糸を確立した学級経営を行っている。
 

  2つ目は、児童の社会性が低く友達関係を育みにくい学級の担任の学級経営スタイルは、横糸の確立に偏っている。

 おそらく、たつ先生の学校は、2つ目の傾向をもった学級が多く存在する学校になっているのであろう。
 

   たつ先生、今やられていることは決して間違いではありません。
 がんばって貫き通してください。周りがおかしいだけです。
 教師として真っ当で、当たり前の行為をされているだけです。

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コメント

 僕の悩みに真剣にわかりすく答えていただき、ありがとうございます。大変嬉しいです。これで良かったのかと安心いたしました。僕も初めて先生になったときには、友達みたいになってしまい、失敗した経験がありました。そして、子供たちが信頼しているのは、厳しくてもあたたかい先生、できるようにさせてくれる先生なんだなと感じました。

 実は、5月になってここ最近は、若い2人のクラスが授業中に少しざわざわと落ち着きがなくなっているかなと思い始めています。まずは、教師と児童との縦糸を張ることが大切なのだなと思いました。

 4月からクラスの女の子で、僕に対してずっと友達言葉で話す子がいました。もちろん悪気はなく、3年生まで言葉遣いを教わってこなかったのですが。その子の家に家庭訪問に行ったとき、保護者の方に、
「ちょっと言葉遣いが気になってるんです。娘さんだけでなく、クラス全体が。だから、教師に対しては簡単な丁寧語や敬語を使わせたいと思います。1,2年生ならばまだいいと思うのですが、もう4年生なので。」
と、言いました。すると親はこう答えました。
「私は1,2年生からでも言葉遣いはきちんとさせたいです。言葉遣いは前から気になってました。前の担任の先生にも言ったんですけどね……。」
このときに僕は、言葉遣いをきちんとさせよう。それが子供たちのためにもなるんだなと思いました。
 翌週から子供たちにも趣意説明をして、取り組みました。今では、きちんとできるようになってきました。

 僕は、自分自身がまだまだ縦糸が多いように感じていますので、横糸をしっかりつないでいこうと思います。あたたかさも身につけていきたいです。これからも野中先生からたくさんのことを学んでいきたいと思います。ありがとうございました。

P.S
野中先生の目標達成法は、大変参考になり、実践してみるとすごく効果があります。目標を1個達成するごとに、怖い話。3個でお楽しみ会や席替えというご褒美も子供たちにはヒットしてます。

投稿: たつ | 2015年5月30日 (土) 00時42分

たつ先生、コメントありがとうございます。当たり前で真っ当なことは、いずれ広がるのです。ちゃんと考えてくれる先生も周りにはきっといるはずです。がんばってくださいよ。

投稿: 野中信行 | 2015年5月31日 (日) 06時52分

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