「日常」を変えましょう!~日本サッカー協会の呼びかけ~
朝日新聞の1/31号に「育成 大人から変わろう」という潮智史のコラムが載っていた。サッカーについてである。
横浜市にあるサッカーの街クラブ、大豆戸(まめど)FCで小学生を指導するクラブの話。
引きつけられた。
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指導者が子供たちの変化に気づいたのは5年前。
練習に集まってきても、「始めるよ」と声をかけるまでは座り込んでいる。サッカーが楽しくて来ていないことに気づいた、と。
観察していると、親に言われるままに複数のクラブを掛け持ちし、学校行事を休んで練習にやってくる。サッカーがまるで習い事になっている現状に気づいていく。
これはだめだと分かって、コーチ同士で話し合い、クラブの在り方や指導を見直す。
全員に出場機会を与える。
1日がかりの週末の試合遠征を半日にする。
宝探しやスキーなどサッカー以外の活動を増やす。
引率をなくし、現地集合、現地解散を原則にする。
原点は、子供自身がうまくなりたい、ボールをけるのが楽しい、と感じること。
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がらりと方針を変え、保護者などから反発もあったが、指導を変えず貫く。試行錯誤だったという。
子供たちは、どのように変わったのか。
1年とたたないうちに、試合中に子供同士の話し合いが自然と生まれ、時にはコーチに反論する。
練習前もほっておけば、いつまでもボールをけって遊ぶようになった。
その変化に対戦相手の指導者はすぐに気づいた。
「以前は鍛えられたチームという印象だったが、表情が変わった。いつも子供がにぎやかにサッカーをしている」。
指導者は、「このわいわいがやがや感」を大事にしている。
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昨夏のW杯1次リーグ敗退以降、サッカー協会は、選手育成を問い直す作業が続いている。
協会は「日常を変えましょう」と呼びかけ始めた。
そして、コラムの潮さんは、次のようにまとめている。
「難しく考えることはない。子どもを変えようとするのではなく、まずは大人が変わる。大豆戸FCはとっくに日常を変えてしまっている」
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どうしてこのコラムを引き出したかというと、私たちが「味噌汁・ご飯」授業として「日常授業」を変えましょうと提起した経過と、実によく似通っている事例だったからである。
サッカー協会が「日常を変えましょう」と呼びかけているところまで似通っている。
結局、この「日常」を変えなければ事は始まらない。
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今まで日本の「授業研究」は、「ごちそう」授業 の時代であった。
これは何度も書いてきたことである。
今でも、この「ごちそう」授業を作って、公開の研究授業や自校の研究授業をしている。
「ごちそう」授業とは、多くの時間をかけて教材研究をし、分厚い指導案を作り、そしてさまざまな準備をする、そんな授業。
要するに、日頃行っている授業とは違う授業である。
なぜ行っているのか。
それで何が変わっているのか。
そんな問いかけはない。
年中行事だからである。
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こんな現状から、北海道が変わりはじめている。
3年間、北海道中をアドバイザーとして回ってみて、そう実感できる。
「日常授業」の改善をテーマにする学校が増えている。
私が昨年11月に参観した北海道の北広島市立大曲小学校は、公開授業研修会で、明確にこの主張をしている。
橫藤雅人校長の学校である。
数人の先生の授業は、はっきりと「授業スタイル」が変わっている。
「ごちそう」授業ではない。
「毎日、こんな授業をしている」という授業。
そこには、きちんとした工夫や主張が込められている。
「ごちそう」授業を求めていく「ごちそう」授業スタイルから「日常授業」スタイルへ変えましょう、というのが私たちの主張である。
「目の前の子供たち」の現実は、そのように私たちに問いかけている。
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