不登校児を回復させた!~カウンセラーから奇跡的だと言われたこと~
2年目の先生からクラスの状況(3年生)の報告を受ける。
初任者指導の講座で知り合った先生である。
時々、電話やメールで連絡を受け、さまざまな相談ごとをされる。
彼のクラスに、1,2年生の頃ずっと不登校を続けていた男の子H君がいた。
4月の最初、登校してきたH君が担任の自分に囁いたという。
「先生、ぼく、勉強のこと、何にも分からないよ!」と。
おどおどして、自信なげに囁いたという。
その報告を受けた。
4月最初である。
1,2年生を通じて不登校を続けていたのであるから、当たり前である。
でも、そういう訴えを担任にしたというのは、何かを求めていることになる。
私は、「チャンスだよ。ここで一気に時間を見つけて勉強を教えていく必要が
ある」と助言をした。
勉強が遅れている子供に対して、どういう手立てを取ればいいか、私なりに実践してきた手立てがあったのである。
その手立てを彼に送付してあげた。
聞いてみると、1+1から、本を読むことから、ほとんど何にもできない状態であったらしい。
★
H君は、4月から1ヶ月に3、4回休むだけで朝からきちんと登校できるようになった。
クラスの友達とも交流できるようになり、一緒に遊べるようにもなっている。
勉強の方も続いている。
私が助言した手立ては、給食の配膳時間10分間を使う方法。
この時間を継続的に使って取り組んでいく方法である。
授業中に取り組むことは無理である。
あまりにも初歩的なところでつまづいているためである。
12月の段階で、H君は、かけ算九九を2/3ぐらい覚えることができたらしい。
ほとんど読めなかった本も、拾い読みではなく、きちんと読めるようにもなったらしい。(漢字が読めないので大変らしいが…)
ものすごい進歩をとげている。
感心するのは、2年目の先生がよくぞこの段階まで不登校児を引き上げたことである。 校長も、「よくぞがんばった!」と認めてくれている。
スクールカウンセラーの先生からは「朝からきちんと登校できるなんて、奇跡的だよ!」とほめてもらえたという。
1,2年の担任だったベテランの教師たちができなかったことを、2年目の先生がやりとげているのである。
★
どうしてこんなことができたのか。
理由は2つ。
1つは、不登校児が何に不安をもち、何を求めているかをきちんと受け止めたこと。
2つ目は、手立てを持っていたこと。(私の助力があったのだが)
★
私は、今北海道で学校を訪問しながら、さまざまな先生たちに強調していることがある。
1,2年生の先生方は、どうしても必要なこと(1年生では算数での繰り上がり、繰り下がり、2年生ではかけ算九九、国語では、すらすら本を読めることなど)をきちんと身に付けさせて上の学年にあげているか。
3年生以上の先生方は、クラスで勉強が遅れている(必要なことができていない子供)子供に対して、1年間できちんと身に付けさせて上の学年に上げているか。
以上のことである。
このことは、親がやることではなくて、学校の教師がしがみついてでも教えなくてはならないことである。
教師の「生命線」。
「生命線」とは、教師として生きられるか、生きられないかの問題である。
厳しい問いかけであるが、このことは子供たちの人生を決定する重大事であるからである。
残念ながら、私も若い頃はできなかった。
さまざまに確かめながら実践を繰り返した。
その手立てを今ならば提起することができる。
★
不登校だったH君は、担任のS先生に出会い、人生の入り口を歩み始めている。
きっとH君のこれからは、このできごとを支えにするであろう。
私は児童心理の1月号の最後に、次のように書いた。
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私たち教師の仕事は、子どもたち一人一人とどのような「物語」を作り上げるかにかかっている。その「物語」は、「逆上がりができた!」「かけ算九九ができた!」というささやかなものでもいい。物語は積み重ねが必要である。その「物語」は、ある日教え子たちの人生を大きく支えていくことだってあるのである。
人生のあるとき、つまづいて悩み苦しんでいるとき、ふと小学校時代のときに「逆上がりを克服した経験」が思いだされて胸熱くなることがある。何日も何日も練習して、ついに逆上がりができた経験。「もう一度あの日のように挑戦してみよう」と思うことだってある。
私たち教師の仕事は、このように小さな「物語」をいっぱい作って、子どもたちの「未来」に託す仕事なのである。
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