ああ、学力テスト!~発想が間違っていないか~
全国学力テストについてもう少し言っておきたいという気持ちになった。
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今まで下位で低迷していた学力が急に急上昇していく。
何をしたんだということになる。
ぜひともマネをしようということで、その対策を知りたいとなる。
学力テストの順位に戦々恐々となっている。
知事や市長がそれを煽っている。
まったく困ったものである。
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ずっと下位に低迷していた学力が、短期間ですっと上位になる。
常識ではありえない。
ちょっとずつ底上げしていく。
これが普通のあり方である。
何をしたのか。
予想してみる。あくまでも予測である。
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学力テスト問題の「傾向」を分析する。
本県の傾向を分析する。
ここまではどこでもやる。
ここからだ。
本県が間違っているところを綿密に分析する。
その問題づくりをする。
そして、組織的に配付し、集中的に練習させる。
漢字練習のように繰り返し練習させる。
要するに慣れさせる。
いわゆる、ある大学を受けるための「傾向と対策」である。
受験対策。
その大学へあがるためだけに取られる手立て。
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このようなことをやると、確かによく間違っていたところは向上する。
毎年学力テストは行っているのだ。
その「傾向と対策」で綿密に問題を分析すれば、そんなに問題が変わることはない。
順位を上げようとするならば、これをやればいい。
これはあくまでも「傾向と対策」であるので、問題ががらりと変われば元の木阿弥である。がくんと下がってしまう。
その子供たちの全般的な学力が上がっているわけではない。
あくまでも間違っている問題だけを集中的に練習してできるようにしただけであるから。
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順位をあげるためにだけ取られる措置。
このような傾向が、さまざまな教育委員会を襲っている。
「要するに、学力があがるのだから良いではないか!」という弁解とともに。
学力問題は、そんなに簡単なことではない。
家庭の経済状態が上位の学校は、ほとんど教師が何もしなくても学力は高い。
親たちが必死で学習塾へ通わせたり、家庭教師をつけたりして学力をつけている。
学力テストは、平均よりも10点、20点もあがる。
ところが、家に勉強する机もなく、朝ご飯も食べてこない(食べようとしてもないのだ。親は寝ている)、宿題もやってこない、……こんな子供たちが多くいる学校は、もちろん学力は低迷する。学力テストは、平均よりも10点、20点下がる。
私は、両方の学校に所属したので、よく分かる。
要するに、家庭の経済状態(家庭環境)が学力問題を大きく左右するのである。
だから、このようなことを考慮しないで、ただ学校ごとに学力テストを発表したら
どんなことになるのか、結果は分かっている。
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しかし、こう言われるだろう。
学力テストの上位県は、学習塾とはほとんど無縁な地区ではないか。
その通りである。
あるトップの県。
私の知り合いが母親の病気で、突然そこへ帰った。
戻ってきて私に言ったことは、次のようなこと。
「野中さん、〇〇へ帰ってびっくりしたわ。その町全体が『勉強、勉強』というムードなの。学校だけではなく、町全体の人たちがそんなムードなの。全国一位を保ち続けるために必死でがんばろうというわけ。驚いたわ。」
地域全体が勉強一色。
親も必死になる。
学校も必死になる。
当然、子供はそのムードの中で必死になる。
北陸のある学力上位県。
これもそこの学校を視察した先生の報告の様子を聞いた。
「ある学校は、子供たちは、朝の7時に登校し、夕方の7時までいる。そして、宿題を抱えて家に帰る。親たちは学校や教師たちへの尊敬の念が強い。」
子供たちは、12時間も学校にいる。
勉強、勉強の一日。
子供たちは息苦しくないのか、と私なら思ってしまう。
全国学力テストは、ある面では罪作りの要素を持っているのではないか。
でも、ある地域の、ある学校の特別な状態を聞いたことかもしれない。
全体的には、もっと普通に行われているのかもしれない。
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さまざまな評価はある。
さまざまな都道府県、さまざまな学校、抱えている現実はみんな違う。
学力一色で判断できるはずはない。
それでも、私は、学力は向上させていくことには賛成である。
とくに、国語A問題、算数A問題は、きちんとできる力をつけるべきだと思う。
教科書をきちんと教えておけば解ける問題である。
そのためには、繰り返しておくが、先生たちは「日常授業」の改善を図っていく必要がある。
このこと以外に子供たちの全般的な学力を向上させていくことはないのである。
順位に目を奪われて、大切なこのことを忘れているのではないかと、つくづく思ってしまう。
もう一度言っておきたいが、全国学力テストは、5年に一度で十分である。
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