アンナ先生への手紙(6)~教室の空気統率回復作戦~
「アンナ先生への手紙」(5)を書いて、間が抜けてしまった。
その間に、「味噌汁・ご飯」授業研究会があったり、大阪へ行ったりしてばたばたしている。
愛知のTOSS超末端先生にフォローしてもらっている。
ありがとうございます。
末端先生にも勧めてもらっているが、夏休みにぜひとも『必ずクラスを立て直す教師の回復術』(学陽書房)を読んでもらいたい。
かなり参考になると自負している。
これくらい回復の手立てを書いた本はなかなかないのではないか(笑)と思っている。
★
さて、今回は「教室の空気の統率回復作戦」を書きたい。
この作戦は、夏休み明け1週間(銀の時間と言っている)で始める。
教室の空気とは何か。
担任と子供たちで作って行く雰囲気。
これを担任が握らないでやんちゃたちに握られていくことで教室は荒れていく。
今荒れている先生は、まずここができていない。
何ができなかったのか。
①教室の多くの子供たち(8割の子供たちと言っている)の願いを実現できていない。
②8割の子供を味方にする手立てを取れていない。
この2つ。
①について、この願いは、「安心・安全」で居心地が良いクラスにしてほしいということになる。
これは、同時に「学級づくり」の目標にもなる。
子供たちは決して声にはしないが、多くの子供たちが、この願いを持っている。
クラスの決め手になる「6割」が、先生の味方になってくれるかどうかが大きなポイントになると前に書いた。
この「6割」は、クラスでどちらが強いかで自分の身の振り方を考える。
担任がクラスを統率していると判断すれば、担任の味方になる。
クラスのやんちゃたちが「空気」を支配しているとなると、そちらへなびいていく。
要するに、強い方になびいていく。
なぜか。
それが、自分の身の安全になるからである。
だから、②の手立てとは、教室の「空気」と「時間」の統率なのである。
教室の「空気」の統率のためには、子供たちとの関係づくりが決め手になる。
「縦糸と横糸」張りをしていく。
「縦糸を張る」とは、教師(教える存在)と生徒(学ぶ存在)の上下の関係づくり。
これで、学級内の秩序を確立する。
そのためには、学級のルールづくりや仕組みづくりをしていく。
「横糸を張る」とは、教師と生徒との心の通じ合い。
これで、教師と生徒、生徒同士が信頼し合い、共に育っていく関係を作り上げるのである。
くわしくは、『必ずクラスがまとまる教師の成功術』(学陽書房)を参考にしてほしい。
夏休み明けから再出発になる。
同じ失敗をしないためには、止めなくてはならないことがある。
まず1つは、今まで拘っていた超やんちゃな連中への対応。
ともすれば、しょっちゅう注意し、叱っていたのではないだろうか。
もちろん、やってはいけないことは叱らなければいけない。
それは当然だ。
でも、あまり拘らないことにしよう。
2つ目は、「空白の時間」。
何かもめごとがあると、授業を自習にして廊下に関係者を呼んで、仲裁をすることなどなかっただろうか。これをしょっちゅうやっていると、クラスが不安定になり、ますます荒れていくことになる。
授業は、よほどのことがない限り止めてはならない。
空白の時間をつくってはならないのである。
そして、視線を8割の子供の方へ向ける。
今まで、クラスの問題を解決するという気持ちで、やんちゃたちへ視線を向けていたのを8割の方へ向ける。
何をするか。
その8割の子供たちをできるかぎり褒めたり、認めたりして(私はフォローと言っている)いくことをさかんにするのである。
これはそんなに簡単なことではないが、努力しなければいけない。
★
このことで大成功したクラス回復作戦がある。
2年生の初任者のクラス。(男性教師)
そのクラスは、1年生の時、1クラスが学級崩壊になっていたので、半分はその子供たちがいたのである。
ちょろちょろする男の子が何人もいて、初任の担任の先生は、しょっちゅう叱っていた。モグラ叩き状態。
それが4月、5月と続いていく。
叱ることだけでは効果がないと分かった段階で、初任の先生と私との間で話し合ったのが、個人目標達成法。
これは別名「ハカセ方式」と言っている。
困っていることを「〇〇ハカセ」と命名して、子供たちに取り組ませていくことである。
担任の先生は、そうじハカセ、ききハカセ、べんきょうハカセ、きゅうしょくハカセ、かたづけハカセを選ばれている。
たとえば、「べんきょうハカセ」とは、授業の始まりで机の上に、教科書、ノート、筆箱をきちんと重ねて置き、姿勢を正しくして待っていると、先生から「すばらしいね。ハイ、『べんきょうハカセ1回』」と伝えられる。
そうすると、鉛筆を持ち、後ろから「べんきょうハカセ」と貼り出してあるところの名簿に1つだけ〇をつけに行く。
「授業中にやっていいのですか?」と聞かれたが、授業中だからこそいいのである。
デモンストレーションになる。
〇が10個貯まると、「べんきょうハカセ」になる。
それから、担任の先生は、叱ることではなく、5つのハカセへの宣言を次々にしていくということになる。
ほぼ1ヶ月でよかった。
みるみる子供たちは変身していった。
校長先生もびっくりされていた。
みごとに落ち着いたクラスに変身していったのである。
★
毎日叱ることから、「〇〇ハカセ 1回です」と認めていく。
それだけの変化。
そのことで、子供たちは大きく変化していったのである。
なぜか。
彼等は、もともと理想主義者。低学年の子供たちは、その通り。
そんなに複雑ではない。
理想主義者というのは、良きことに進んでなりたいという気持ちを持っていることである。
あれほど教室の中で傍若無人に振る舞う子供たちにそんな気持ちがあるとはとても思えないと考えられるだろう。
それは教室が弱肉強食の空間になっているからである。
「安心・安全」でない場所では、子供たちの脳に潜んでいる「動物脳」(犬や猫の脳)が動き出すのである。
(このことについては『その子育て科学的に間違っています』<河出書房新社 国米欣明著>を参考にしてほしい)
そうすると、嫌なことに対してはすぐ反発したり、ケンカになったりする。
毎日もめごとだらけになるというのは、そのためである。
ところが、人間だから良きことを進んでしたいという「人間脳」も持っているのである。
子供たち一人一人をほめたり、認めたりしていると当然その脳が刺激され、どんどん良いことをしようということになる。
低学年ほどその気持ちが強い。
そのクラスは見る見る変わっていった。
素晴らしいクラスに変身していった。
8割の子供たちに視線を移す。そして、盛んにフォローをする。
そのことで変わっていったのである。
(このくわしい実践は、『新卒教師時代を生き抜く学級づくり3原則』<明治図書拙著>を参考にしてほしい)
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