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民間の公募校長はもともと無理なのである~大阪市の公募校長の更迭から~

   読売のネット配信で次のような記事が出ていた。
 大阪市の公募校長のまたまたの更迭である。
 ★ ★ ★
大阪市の公募校長また更迭…保護者からも反発

 昨年4月にスタートした大阪市の校長公募制度で、新聞記者出身で同市生野区の中学校に赴任した男性校長(38)について、市教委が3月末で更迭する方針を固めた。
   
 教員や保護者らと人間関係が築けず、「学校運営の能力が足りない」と判断した。校長としての任期(3年間)が残っているため、市教委は別の部署に異動させる方向で検討している。来週の市教育委員会議で最終決定する。同市の民間出身校長の更迭はこれで2例目。

 市教委関係者によると、更迭される校長は教員とのコミュニケーションにつまずき、保護者からも反発を受けていた。2学期の途中からは退職した前校長が業務をサポートしていたが、3学期になっても、教員や保護者との関係が改善されず、市教委は更迭を決めた。

 民間出身校長は「校長職」に限定して公募・採用しているため、他の職に就くことは想定されていない。ただ、今回は学校運営に支障をきたしており、他校の校長に配置転換するのも不適当として、市教委は男性校長を他の部署に異動させる方向で調整している。

 同市の民間出身校長は昨春、全国公募で11人が採用されたが、港区の小学校に赴任後、保護者らへのセクハラ行為が発覚した50歳代の男性校長が更迭され、その後自主退職するなど、すでに2人が辞めている。

 市議会からは「制度の見直しが必要」との声が上がり、来春採用分の経費(2800万円)が新年度当初予算案にいったん計上されながら削除された。今回の更迭で、市議会の反発はさらに強まるとみられる。

 市教委幹部は「校長公募制度は続けたいが、議会や市民の理解を得るのは今後、ますます難しくなるかもしれない」と話している。

(2014年3月20日10時10分  読売新聞)
 ★ ★ ★

 学校現場に長くいた立場から、この民間からの公募校長制度にきちんと言っておきたい気持ちになった。

 横浜でも民間から楽天の副社長が、中学校の校長になったことがあった。
 3年で辞めてしまった。

 今まで民間から校長になった人で、それなりの実績をあげた人は、東京の中学校で校長になった藤原和博さんであろう。リクルートからの転進であった。
 それでもずっと校長を続けることはなかった。

 世に知られていない人でも、民間校長としてうまくやられている人はいるのだろうと思うが、たいていはうまくいかないのだと私は思っている。

 民間の人たちは、学校現場が民間の会社を経営する感覚で何とかなると思いすぎている。
 学校現場内部の状況がどうなっているのか、それにまったく無頓着なのである。
 校長個人の意欲、情熱、経営感覚でうまく動いていくのだという錯覚である。

 たとえば、大阪などはほんとうになってほしい先生たちは、ほとんどが管理職にならないと聞いている。
 多分ほんとうだろうと思っているが、実態は分からない。

 校長が陣頭指揮をしなければ、学校は変わらないと分かっていても、そうしていない。 現場のひどさと管理職の非力さをまざまざと見せつけられているからだろうと、私は推測している。

 こんなことが分かっていなくて、ひょっこり現場を知らない人間が校長になったからといって、うまくやれるはずがないではないか。
 常識である。

 大阪だけではないが、いま校長たちは、苦情処理係としてあたふたとしている毎日なのである。
 自分の学校経営をどうしていこうなどといったことなど後回し。

 ★
 民間の公募校長は、現場に行ってまず気づくのは、教職員の忙しさである。
 これはびっくりするはずである。
  普通の教師たちが分刻みで動いている現実である。

 そして、自分がやろうとしていることと、学校現場の現実の落差に気づく。
 まともな人ならば、そこで呆然となる。
 学校現場の現実をまったく知らなかったことに気づく。

 ここでたじろいだら、なぜ自分が民間から来たのか分からないので、自分の経営方針を全職員に話す。
 無反応。

 あまりにもとんちんかんなのだ。
 先生たちはそんなことはやってられないのである。
 ★
 勘違いをしているのである。

 校長に学校現場の先生たちが期待していることは次の3つのこと。

  ①学校法規、学習指導要領などの内容に精通していること。
  ②親や子供たちの悩みなどについて親身になって相談できること。
  ③授業などの悩みについては、身をもって(授業をして)示してくれる
   こと。
 
 民間からの校長たちは、以上の3つともできないではないか。
  やれないのである。

  あるのは、民間会社に通用する経営感覚であろうか。

 もともとが現場の先生たちから受け入れられない状態にあるのである。
 それを知らないで、何かできるという幻想を持っている。
 それは大阪の橋本市長も、ほとんど同じような感覚に違いない。

 学校現場は、これから<冬>の時代から<嵐>の時代を迎えていく。
 学校現場を知らない人間が、校長になることなどできない時代である。

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