なぜ児童尊重型の「学級づくり」がうまくいかないのか①~論文が明らかにした~
すごい論文が飛び込んできた。
東京学芸大学の山田雅彦先生と東京都の小学校教諭森田純先生共著の論文。
森田純・山田雅彦 2013 「学級経営に影響を及ぼす教師ー児童関係に関する質問紙調査」 東京学芸大学 教育学講座 学校教育学分野・生涯教育学分野『教育学研究年報』32,23,37
山田先生が橫藤雅人校長に文書が送られ、橫藤先生の方から私の方へ届けられた。
その中には、
山田先生からは次のように書き添えられていた。
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「縦糸・横糸理論」を実証する根拠の一つになるかと思い、抜き刷りをお届けする次第です。今後の研究・教育活動にお役立ていただければ幸いです。
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その論文は、次の所からダウンロードできる。論文の19 である。
http://www.u-gakugei.ac.jp/~yamadama/papers/papers.html
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何がすごいのか。
この論文は、橫藤と私が学陽書房から出した本「必ずクラスがまとまる教師の成功術」を参考にされて、実際に児童1102人と学級担任36人の質問紙調査により、縦糸・横糸の有効性を実証されている。
画期的論文だ。
これから学級をどのように作っていくのかの方向が確実に示されたと、私は考える。
まず、論文の要旨をあげておきたい。
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日本語要旨
学級経営に影響を及ぼす教師ー児童関係に関する質問紙調査
森田 純(八王子市立南大沢小学校)
山田 雅彦(東京学芸大学)
本論文の課題は、児童がどのような傾向の学級で居心地良く過ごせているかを明らかにして、学級経営の指針として提案することである。
児童・生徒集団の望ましい経営には、教師への敬語の使用を含む学級内のルールの徹底(上下関係)と、教師と児童・生徒の間のフラットな心の通じ合い(水平関係)の二つの側面がある。学校教育の場においては、両者のどちらをより重視するかに応じて、指導重視型(上下関係優先型)と児童尊重型(水平関係優先型)の二つのスタイルが併存してきた。本論文では、上下関係や水平関係に関する具体的な質問項目を含む教師と児童への質問紙調査によって、上下関係と水平関係の適切な関係を実証的に明らかにした。
児童1102名と彼らの学級担任である教師36名を対象とする質問紙調査により、児童の学級内での社会性と教師が自覚する学級経営傾向の相関を求めたところ、以下の2点が明らかになった。
①児童の社会性が高い学級の担任は、教師と児童の上下関係(ルールの徹底)を確立 し、教師と児童および児童間の水平関係(フラットな心の通じ合い)も確立した学 級経営を行っていると自覚している。
②児童の社会性が低く友達関係を育みにくい学級の担任の学級経営スタイルは、水平 関係に偏っている。
この結果、望ましい学級経営のあり方は、まず学級内の上下関係を確立してから水平関係を確立してゆく、指導重視型に近いスタイルであることを示す実証的根拠が得られた。
キーワード:学級経営、質問紙調査、規律、社会的スキル
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横糸を張ることから入っていく「学級づくり」。
これは初任者などに多く見られる「友達先生」の典型なのだが、これがなぜうまくいかないのかが実証的に明らかにされている。
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