大津いじめ自殺事件~その3 学校システムとしていじめ対策をする~
今日(11日)の朝日(天声人語)には、大津のいじめ事件を取り上げていた。
次のような書き出しだ。
以前、いじめ問題で取材した小学校の先生は、担任するクラスを「海」に
たとえた。教壇から毎日見ていると何でも分かったような気になってしまう。
でも、見えているのは何十分の一にすぎない。子どもの世界という広くて深
い海の中で、何か起きているのか。把握するのは本当に難しい、と。
この通り。教師は子供たちのいじめについてなかなか把握できないと思っていた方がいい。
★
今まで多くの「いじめ自殺事件」が起こった。
それに対して二度とこういう事件を起こさないという決意のもとに、一体学校や教師たちは何をやってきたのであろうか。
ほとんど何もやってこなかったのではないだろうか。
もちろん、いじめが良いとは思っていない。なくさなくてはならないとも思っている。
でも、やることがあまりにも多くて、いつのまにかそのままになっていく。
こういうことを繰り返している。
★
こう問いかけると、当然「オマエは何をやってきたのか?」という問いかけが返ってくる。
私は学級経営の大きな根幹の1つに「いじめ対策」をおいてきた。
教務主任をしているときは、学校に「いじめ対策」のシステムを作ろうとしてきた。たとえば、ある小学校で次のような提案をしている。
1995年(平成7年)のこと。今から17年前になる。
これは次年度から学校のシステムとして取り上げられ、実施されていった。
提案の全文をあげる。(長々と申し訳ない)
★ ★ ★
「いじめ」対策について
教務・人権教育
1,目的
(1)「いじめ」を許さない、起こさないという強い認識をもって、「いじめ」を
防止する体制を学校の中に確立する。
(2)子供たち一人一人が、集団の中で存在感、成就感、満足感等を味わい、
充実した生活を送り、共に生き、共に育っていくことの大切さの自覚が持
てるような体制を学校の中に確立する。
2,「目的」を支えていく私たちの立場
(1)「いじめ」はどのクラスでも起こるという認識に立って(いじめは子ども社会
の構造から生まれてくるもの)、学校経営計画の中に「いじめ」を防止してい
くシステムを確立していく。
(2)「いじめ」があるのではないかという問題意識をもって、子供たちの実態を
調査し、ただちに適切な対応がとれる大切を確立する。
(3)「いじめ」に対応していくとき、次の対応を私たちは自覚していく。
①「いじめ」をいち早く発見し、「いじめ」をなくすのは、教師の大切な役割で
ある。(「いじめ」の解決は、教師だけができるという自覚にもとづいて
対応していく。)
②いじめられる子どもに対して、「あの子にも問題がある。」(確かに問題は
あると思われる。)という言葉で「いじめ」を温存していくことがよくある。私
たちはこういう立場を拒否していく。私たちは、常に弱者の立場で「いじめ」
を考えていく。
③「いじめ」はそれを発見してから先が、たいへんであることを自覚する。
お説教の1回や2回では決してなくならないし、下手なお説教をすると、い
じめはよけいにひどくなるという自覚をもつ。
3、「いじめ」に対処していく方法
(1)「いじめられている子ども」発見のポイントを把握しておく。
「いじめ」は、子どもたちの中で巧妙に行われることがあり、たいへん分かりにくいものである。
そこで、次のようなポイントをもって日頃から「いじめ」を発見する目を持っておく。
①理由のはっきりしない遅刻、早退や欠席が多くなった。
②うつむいていることが多く、発言が減った。
③発表すると笑われたり、正しいことを言っても支持されない。
④発表中に突然大きな声を出したり、奇抜なことを言う。
⑤机、いす、ノートなどに落書きがされている。
⑥けがや病気でもないのに、保健室によく行くようになった。
⑦休み時間などに職員室の近くをうろうろしている。
⑧休み時間などに、一人ぼっちになっている。
⑨班編制などの際に、なかなか所属が決まらない。
⑩いたずらをされたり、プロレスごっこの相手をさせられる。
⑪洋服や持ち物が汚されたり、靴の跡がついていたりする。
⑫いやなあだななどで呼ばれたり、からかわれたりする。
⑬人目につかない所に連れていかれる。
⑭トイレや階段の上がり口などに立っている。
⑮先生の働きかけなどに対して「先生には関係ない」などと言う。
(「川崎市教委による、いじめられている子ども発見ポイント事例」参照)
私たちは、ともするとうっかりするポイントであるが、特に⑧休み時間などに一人ぼっちになっている。⑨班編制などの際に、なかなか所属が決まらない。などのポイントは、確実にチェックする自覚を持っておくべきである。
(2)「いじめ」防止のシステムを学校の中に確立していく。
(A)一人ぼっちの子ども調査
ア、趣旨
一人ぼっちの子ども調査をし、その子供たち達に適切な対応をしていく。
イ、担当
人権教育(常設)が中心になって行う。
ウ、内容
次の2つを全クラスで行う。
①一人ぼっちの子どもをつかむ。
ある1週間、中休み後に毎日「誰」と「どこで」何をしていたかを調べる。
②その子の事情を理解し、その子どもに対して手をさしのべる具体策を決
める。
・1週間のうち、6日、5日、4日、3日、一人でいた子どもをつかむ。
(この子ども達は一人ぼっちかそれに近い子どもである)
・人権教育部会がその子ども達をまとめ、職員会議に報告する。
・「なぜそうなのか」「どうしていくのか」についても合わせて報告する。
エ、調査する期間
・6月と11月の2回、ある1週間を指定して行う。
・6月は、主に「一人ぼっちの子ども」のチェックと対応にあて、11月は、
主に6月の時のその子どもの経過とチェックと新たに「一人ぼっちの子
ども」をチェックしていく。
(B)生活目標で対処していく。
月目標を「一人ぼっち調査」と対応させて、変えていく。
<6月の生活目標>
[現在]
遊び方を工夫しよう→ [平成7年度]例 友達と仲良く遊ぼう
<具体目標の例>
・1日1回グループで遊ぼう
・なかまはずれをなくそう
・できるだけ下校時刻まで遊ぼう
・外で元気に遊ぼう
<11月の生活目標>
[現在]
落ち着いて学習しよう→[平成7年度]6月と同じ目標で行う。
★ ★ ★
今から考えればたいした提案とはいえないが、でも学校全体の問題にしていく気運はある。
大切なのは、「学校システム」として「いじめ問題」を提起できたところである。
いま、学校でこのようにシステム化されて「いじめ」に対処されているところがどのくらいあるのであろうか。
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