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機嫌良く 悩むな、反省するな、次を考えろ

 私の親しい知り合いである新潟の庭野三省先生に「私の教師修業」をいただいた。
 第11巻。分厚いまとめである。
  校長通信と自分の実践がさまざまにまとめられている。
 私は庭野先生を北陸の「巨人」として尊敬している。
 毎日書かれる量が半端ではない。ものすごいのである。
 同じように尊敬している校長に、三重の中林校長がいる。
 二人ともめちゃくちゃに書きまくっている。
 それは何かである。 
 
 この冊子の編集前記に次のように書かれていた。

 ~ さらに本年度から特に職員向けのキーワードが出てきた。それが
 「機嫌良く   悩むな、反省するな、次を考えろ」
 になる。~

 

 「機嫌良く」は、あの内田樹さんの言葉から引用されている。

 

 ~ 人間は機嫌良く仕事をしているひとのそばにいると、自分も機嫌良く何かをしたくなるからである~    (『こんな日本でよかったね』内田樹 文春文庫)

 

 
 「悩むな、反省するな、次を考えろ」は、今まで私が若い世代に提唱してきたことである。
 現在日本の思想家としての第一人者内田樹さんと並んで取り上げてあることは、光栄なことである。
 ★
 しかし、これはまたなかなかの言葉だと、私も思っている。
 考えてみれば、現在の学校の事態にはまったくそぐわない言葉でもある。(笑)
 内田さんの言葉はよく分かる。
 どんなに事態が深刻でも、とても機嫌良くなどしていられるかと思う事態でも、ふんふんふん…と鼻歌でも歌いながら仕事ができる教師であるということは、周りの子供たちを明るくする。
 間違いなくそうである。
 だが、「機嫌良くなんかできません」と教師たちは言う。
 教師は「役者であること」を忘れている。
 どんなに深刻な状況でも、子供たちの前に立ったら機嫌良く笑っておこう。
 すぐにはできないが、修業をしなくてはならない。
 私は、修業という言葉は好きではないが、これだけは修業しなくてはならない。
 心理学では言う。
 「楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのだ」と。
 ★
 さて、「悩むな、反省するな、次を考えろ」ということである。
 これもまた「教師が成長するには、自分で悩み、しっかり反省しなくてはならない」というのは常識であった。
 戦後(もう死語に近い)ずっとこの常識は教師たちに刻まれてきたはずである。
 寝屋川の2年目の先生と話したとき、
 「先生が『悩むな、反省するな』と言われるのですが、誰からそんなことを学ばれたのですか?」と質問された。
 「福沢諭吉です。あの人は悩むということについては無縁の人でした。」
 「何か本があるのですか?」
 「『座右の諭吉』(光文社新書)斎藤孝 がいい。」
と薦めた。
 ★
 『座右の諭吉』には、次のように書かれてある。

 

 
 

 ところが福沢の心には、雲一つない。一言でいうと、福沢は精神がカラリと晴れている。まさにカタカナで「カラリ」と書くのがふさわしい、精神の独立と自由の気風に満ちた男だ。「くよくよするな」的な単純なポジティブ・シンキングではない。福沢の場合、考え方の根本からして違うのだ。成功している会社の経営者には多い、身も蓋もないほど湿度の低い本物の大人なのである。
 
 

 私は、身も蓋もないほど湿度が低い精神を教師も持たなくてはならないと思っている。
 私の1冊目の「困難な現場を生き抜く教師の仕事術」(学事出版)のあとがきに次のようにも書いている。

 

 
 

 私は、幕末の頃、幕臣(幕府外国奉行翻訳御用)として勤めていた福沢諭吉が好きである。
「私は時勢を見る必要がある。城中の外国方に翻訳などの用はないけれども、見物半分に毎日のように城中に出ていました」
 と言うのだから、福沢は徹底している。
 旧幕府軍と薩長軍が激突し、江戸の町が戦火に包まれようと江戸中が大騒ぎをしている中での行動である。その中で、福沢は芝の新銭座に新しい住まいと塾舎を普請している。今の慶應義塾である。
 このように、福沢は、時代の流れを常に一歩引いたところから眺め、決して時代の流れに沈没することはなかった。そのたくましさ、したたかさ、軽やかさをぜひ私も身につけたいと思っている。

 

 ★
 「『悩まないようにしよう』と思っていても、どうしても悩んでしまうのですが、野中先生はどうしておられるのですか?」と寝屋川の2年目の先生に聞かれた。
 人は、悩むべきその事だけでなく、自分の過去のことに悩む。
 調子が悪くなると、過去の失敗や思い出したくない事例を思いだし、いかに自分がだめな人間であるかを何度も反芻する。
 結局それが自分をズブズブに傷つけてしまう。
「過去や現在の悩みは、どんなに苦しんで悩んでも解決しないよ。解決するのは、時間だけ。その証拠に、1年前や2年前の今頃何に悩んでいた?と聞かれたら、ほとんど忘れているでしょう!」
「そうですね!」
「時間が解決したのです」
「悩んだり、反省したりすることは、時間に任せていけばいい」
「でも、思い出してしまうのです。つらい事実や過去の失敗を。どうしていけばいいでしょう?」
「そこですね。そこが大事ですね。そんなときは、思い出したことについて『さようなら』とか『ごめんなさい』とか『ありがとう』などと言って、すぐに忘れてしまう訓練をするのですよ。いつも自分をゼロにしておく訓練です」
「できるでしょうか?」
「できます。事実私がそのようにして訓練したのですから」
 ★
 自分の過去は変えられない。
 変えられない過去にいつまでもこだわるなんてばかばかしい。
 良い過去も失敗の過去も、すべて忘れてしまいたい。
 私はそのように思っている。
 なでしこジャパンの優勝は、テレビのこちら側の日本人は歓喜の涙で大騒ぎであった。
 ところが、テレビでインタビューされている彼女たちは、泣かない。
 彼女たちのその姿に、テレビのこちら側の日本人は拍子抜けしたに違いない。
 なでしこジャパンの選手たちは泣かないのである。
 澤選手とともに優勝の立役者であった宮間選手は、2日後に「もうW杯は終わったことですから」と発言している。
 彼女たちは、ドイツにもアメリカにも、実力的にはかなわない相手であることが分かっている。
 まだまだ発展途上である。
 目標は先にある。
 なでしこジャパンは、「前だけしか向いていない」のである。
 前だけを見る。
 「次を考える」ことだけが人生なのである。 
 

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