ある高学年のクラスのできごと
ある小学校の高学年のできごとである。
始業式の当初から学級の中に、にぎやかな子供が数名いた。
前の学年では1クラスが学級崩壊になっていて、その数名はそのクラスから来ている子供たちであった。
いざ、授業が始まると、その子供たちを中心に私語が飛び交った。
最初から担任の話を聞かず、指示に従わない問題が続いた。
担任は声を嗄らして、静かにするように、指示に従うように厳しく接した。
けれども、事態は一向に改善しなかった。
休み時間などにはよくケンカが始まり、しょっちゅう小競り合いが多発した。
怪我をした場合には、双方に電話して連絡をした。
けれども問題はひろがるばかりで収まるきざしはない。
指導を受けた子供は、「何でオレばっかりなのか」との不満を言う。
問題が状況証拠だけだと、「オレがやったって決めつけるのはおかしい」と反発が返ってくる。
担任が子供を呼ぶと、「オレ何もやっていませんよ」と言う。
だんだん普通の子供たちも「しらねえ」「関係ねえ」と言い出す。
担任もつい「何だ!その態度は」と感情的になる。
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いじめも頻発した。
保護者に声をかけると、関係はさらに悪化した。
「うちの子だけじゃないですよ。あの子は呼んだんですか!」
「うちの子はやらされているだけなんですよ。体が大きいから」との言葉が平然と返ってくる。
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大型連休明けには、すっかりクラスは無秩序状態になった。
担任が問題を取り締まる姿勢を強めると、子供たちの気持ちは離れていく。
担任を信頼しなくなる。
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問題がこじれた段階では、問題そのものの原因を探したところで、どうにもならない。
上記の高学年のクラスでは、問題を次々に起こす数名の子供たちが、荒れを引き起こす最初の引き金になっていた。
でも、担任は漫然と見ていたわけではない。
当初から担任は「問題をなくそう」とする常識的な関わりをしていたのである。
けれども、5月の時点では、当初よりもはるかに事態が拡大し、悪化している。
問題を起こす子供の範囲は広がっている。
問題を起こさない子供たちは冷ややかに担任を見ている。
もはや、最初の数名の子供たちの問題だけではないのである。
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これは何が問題であろうか。
私に言わせれば最初の1ヶ月の学級づくりを失敗したケースになる。
問題の数名の子供たちの動向ばかりに気に取られ、その対応に終始している。
その子供たちに担任は厳しく対応している。
その子供たちに「オマエたちが悪い」とずっと対応しつづけているのである。
その子供たちと通じ合いをしない間に、関係をどんどん悪くしてしまっている。
その子供たちは、担任から批判され、否定されて、どんどん気持ちが離れる。
その子供たちは、ことごとく問題を拡大する。
教室も不穏な空気が満ちていく。
そのうちに、まだ表面的な動きをしていなかった中間派の子供たちも、その子供たちに合わせて不穏な動きをしてくる。
だんだんその動きは拡大する。
結局、担任は、私が言う「8割を味方にする手立て」を取っていない。
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この担任の取り組みは、このようなクラスを受け持った時に普通に取る「普通の手立て」なのだ。
ほとんど普通の教師は、このような手立てを取る。
「問題原因駆除手立て」とでも名付けておこう。
問題の原因を駆除していこうとする取り組みからは、問題は解決しないのである。
いや、むしろ問題を拡大させ、悪くしていく。
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最初の数名の子供たちには、最初からがんがん対応しない。
彼等と<通じ合い>がなされない限り、教室に彼等を位置づけていくことはできないのである。
そんなことより、担任は味方をしてくれる2割の子供たちと、中間派の6割の子供たちを味方にするための施策を着々と進めなくてはならない。
それが1ヶ月の仕事だ。
私は、<関係づくり><仕組みづくり><集団づくり>と言っている。
今先生たちは、学級作りの途中にあるはずである。
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もちろん、数名の子供たちのやんちゃは目立つ。
でも、一々目くじらを立てて反応しない。
無視できないときだけきちんと対応すればいい。
そのような子供たちを学級崩壊や荒れの問題を引き起こす元凶のような発想をとらないことである。
問題は、担任がリーダーシップを発揮して、教室を「安心・安全で居心地がいい場所」に早くしていくことが一番大切なことだから。
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それでは、5月や6月段階で荒れてくる場合は、どのような対応が必要なことであろうか。
この段階ではまだまだ修復の可能性は残されている。
それは次回のブログに書きたい。
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