春の気配が感じられる頃となりました。本日巣立ちの日を
迎えた117名の皆さん、卒業おめでとう。
本日の式に際しましては、○○○中学校○○○校長先生は
じめ、たくさんのご来賓の皆様にご来校頂きました。誠にあ
りがとうございます。
今、皆さんに手渡した卒業証書は、小学校の全ての学習を
修了したという証です。胸を張って、中学校生活に羽ばたい
てください。
さて、先週、千年に一度という巨大な地震が日本列島を襲
いました。本当に恐ろしい出来事でした。
お亡くなりになった皆様のご冥福と、被災された皆様が一
日も早く普段の生活に戻られますことを心よりお祈りいたし
ます。
この地震から2日後、pray for japan(日本への祈り)と
いうインターネットのツイッターサイトが立ち上がり、たく
さんの人が励ましのメッセージや現地での出来事を書き込み
ました。書き込みは、深夜も途切れることなく、今も続いて
います。
どんなことが書かれているのでしょう。まず2つ紹介しま
す。
「4時間の道のりを歩いて帰るときに、トイレのご利用どう
ぞ!と書いたスケッチブックを持って、自宅のお手洗いを開
放していた女性がいた。日本って、やっぱり世界一温かい国
だよね。あれみた時は感動して泣けてきた。」
「物が散乱しているスーパーで、落ちているものを律儀に拾
い、そして列に黙って並んでお金を払って買い物をする。運
転を再開した電車で混んでるのに妊婦に席を譲るお年寄り。
この光景を見て外国人は絶句したようだ。すごいよ日本。」
こんな私たち日本人の心を、世界中の人が支持してくれて
います。
アメリカ軍は日本への救援活動を、Operation Tomodachi
(友達作戦)と名付けました。
国連は、「日本は今まで世界中に援助をしてきた援助大国
だ。今回は国連が全力で日本を援助する。」というコメント
を出しました。
海外のたくさんのマスコミが、「阪神淡路大震災のときと
同じように、また日本人は大災害の中でも人への思いやりを
忘れない!」と驚きを報じています。
地震が起こったことは、本当に不幸なことです。しかし、
その闇の中に日本人の心の美しさが輝くのを見るとき、一抹
の希望を感じることができるように思います。
ツイッターからの紹介、最後です。
「千葉の友達から。避難所でおじいさんが『これからどうな
るんだろう』と漏らした時、横に居た高校生の男の子が『大
丈夫、大人になったら僕らが絶対元に戻します』って背中さ
すって言ってたらしい。大丈夫、未来あるよ。」
私たちは、幸いにも大きな被害に遭うことなく、こうして
卒業式を迎えています。そのことに感謝しましょう。心から
感謝しましょう。そして、まず私たちが一足先に幸せになり
ましょう。
人を本当に幸せにできるのは、自分は幸せだと感じている
人だけだからです。だから、笑顔がいっぱいの中学校生活に
しましょう。
でも、笑顔の奥に、今回被災された方たちのことを忘れず、
周りの人への優しさや人のために強くなれる心をもっともっ
と大きく育てていきましょう。
今回の地震からの復興には、今後十年かかると言われてい
ます。
ちょうど皆さんが、社会に出て活躍し始める頃です。
さっき紹介した、「大人になったら僕らが絶対元に戻しま
す」という高校生たちと共に、新しい日本を創っていってく
ださい。
皆さんなら、できます。今年から1年生と6年生の教室を
隣り合わせにしました。この一年、いつも1年生が甘えてく
るのを優しく受け止めている皆さんの姿を、いつも「いいな
あ、いいなあ」と思って見ていました。キタラのコンサート
に行ったときだったでしょうか、地下鉄に身体の不自由な方
が乗り込んできたときに、少し迷っていたのですが、その方
の側まで行って席を譲ってあげた人もいました。総合的な学
習でアルメリア福住に行ったときにも、入所されているお年
寄りにすぐ近くで話しかけ、そこに笑顔の花が咲いていまし
た。本当にいつも「いいなあ、いいなあ」と思ってきたので
す。
大きな災害に見舞われても、暴動や略奪などの自分だけの
利益に走らず、優しさやがんばりを自然に表すことのできる、
素晴らしい日本人に、皆さんなら必ずなれると、信じていま
す。
最後になりましたが、保護者の皆様にお慶びを申し上げま
す。本日は本当におめでとうございます。お子さんは人生に
おいて最も多感な時期に入ります。楽しみの多い反面、保護
者として悩むことも多いかと存じます。
しかし、皆様の前向きに生きる姿が、必ずお子さんを勇気
づけ、良い方向に向けていきます。お子さんが夢に向かう姿
を、どうぞ温かく見守り導き、家庭でも笑顔の花をたくさん
咲かせてください。そして、いつまでも「子供にあこがれら
れる大人」でいてください。
これまでいただきましたご厚情に深く感謝いたしますと共
に、今後ともよろしくお願い申し上げます。
さあ、卒業生の皆さん。羽ばたきの時です。胸を張って、
笑顔で飛び立ってください。
平成23年3月18日
札幌市立羊丘小学校 校長 横藤 雅人
★
【学校長式辞】 札幌市立山の手南小学校長 新保元康
六年間の努力が実を結び、
本日晴れて小学校の学びをすべて終えた証書
「卒業証書」を手にしたみなさん。ご卒業本当におめでとう。
又、この栄えある日に、○○中学校○○先生はじめ、
たくさんのご来賓のみなさまにご来校いただきました。
ご来賓の皆様には、いつもいつも子供たちをお守りいただきました。
本当にありがとうございました。
そして、保護者のみなさま、お子様のご卒業心よりお祝い申し上げます。
小学校生活六年間。
その中に、語り尽くせぬ多くの喜びと、
多くのご心配ご苦労があったことと思います。
あらゆる努力が、皆様のすべての愛が、ここに実を結び
義務教育の第一段階を終えられたことを、改めてお祝い申し上げます。
そして、この大事な初等教育の課程で、
私たちが皆様と共に子育ての一翼を担えたことを心より誇りに思います。
さて、卒業生のみなさん、
私は、やはり、この度の千年に一度と言われる
大震災のことを語らねばなりません。
この地震は、ただの地震ではありません。
宮城県や岩手県などの被災地では、
多くの小学校で卒業式が取りやめになったと聞きます。
私たちが今日この暖かい、立派な体育館で卒業式ができることを
本当に幸せに思います。
また、被災地のみなさんには心からお見舞いを申し上げたいと思います。
みなさんは、歴史の大きな変わり目に、小学校を卒業したことになります。
今回の地震は、
日本の歴史を変えた
日本の社会を変えた
大きな地震として「未来の教科書」に書かれているはずです。
その「未来の教科書」には、どんな内容が書かれるのでしょうか?
私は、大きく次の二つのことが書かれると確信しています。
一つは、「日本人のやさしさ・忍耐力・マナーの素晴らしさ」です。
これだけの災害に見舞われながらも、
取り乱したり、勝手なことをする日本人がほとんどいないことに
世界の人々は驚いています。
インターネットにはこんな書き込みがありました。
「物が散乱しているスーパーで、落ちているものを律儀に拾い、
そして列に黙って並んでお金を払って買い物をする。運転を再
開した電車で混んでるのに妊婦に席を譲るお年寄り。この光景
を見て外国人は絶句したようだ。」
(世界から届いた日本への祈り 【pray for japan】より)
この他にも、
・電車が動かなくても慌てず騒がず、黙々と歩いて帰る日本人
・その歩いている人たちに、
パンをあげたり、自宅のお手洗いを開放する日本人
・地震で道が大渋滞しても
決していらいらしたクラクションをならさない日本人
すべての振る舞いが、世界の人たちの感動をよんでいるのです。
みなさんは、こうした世界の人々に尊敬される日本人のひとりであることを
どうか忘れないでください。
もう一つ、「未来の教科書」に書かれることは、みなさんのことです。
そこには、こう書かれるはずです。
「平成の大地震で日本は大変な被害を受けた。
しかし、当時の若者が懸命に知恵を絞り、汗を流して働き、
日本は急速な回復を遂げた」
今回の地震から回復するためには、
10年20年の時間がかかることでしょう。
その回復の主役は、みなさんです。
今回の卒業のみなさんは11の中学校に進学します。
それぞれの進学先で、
大いに学び、
大いに体を鍛え、
心を豊かにしてください。
ぼんやりしているヒマはありません。
我が儘を言ってだだをこねているヒマはありません。
もちろん、不安なとき心が弱くなったときは家族に支えてもらいましょう。
今こそ家族の絆の深さを実感するときでもあります。
日本の国は、あなた方の成長を必要としています。
ぜひ、それぞれの得意なところをいかして、奮闘してほしいと願います。
そして、私は信じます。
二十年後、みなさんが、
いまあなたのお父さんおかあさんの年齢になったことろには、
日本は、これまで以上に素晴らしい国になっていることでしょう。
そして、お世話になった世界の国に
ご恩返しをする国になっているに違いありません。
先日、いっしょに勉強したとおり
「人間万事塞翁が馬」なのです。
今回の災いが、必ずや幸せに転じることになります。
そして、その幸せな新しい日本の国を造る主役は、みなさんなのです。
君たちはわたしたちすべての希望なのです。
今、みなさんの前途は晴れ渡っています。
自信をもって堂々と歩んでください。
ご卒業本当におめでとう。
札幌市立山の手南小学校長 新保元康
★
私は、この2人の校長の式辞に深く感じ入った。
卒業式の式辞は、校長の仕事として最高級の仕事の1つである。
卒業していく子供たちに餞(はなむけ)の言葉をどのように選んでいくかは、校長として自分をどのように処しているかが試される。
私は37年間の教師生活で、ただ1人だけすごい式辞に立ち会ったことがある。
だがそれ以来、一人もそんな式辞に立ち会ったことがなかった。
今回、この2人の式辞に立ち会っている。
感動的な言葉がちりばめてあるわけではない。
読む人にとっては、「校長としてならこのくらいのことを言うべきだ」としたり顔で言う人がいるのかもしれない。
もちろん、式辞は校長が選ぶべきものであるので、どんなものでもかまわない。
しかし、2人の校長は今回の大地震から何を汲み取り咀嚼して、自分の中を通過させて、自分の言葉で子供たちへどのような言葉を発していくべきかについて考え抜いている。しかも、そのことを1週間という短い時間のなかでなされている。大きな苦しみがあったに違いない。
それは、2人に、この大地震がこれから日本を左右していく大きな「できごと」であるという認識があるからである。
そして、2人の校長は、このような式辞を発している。
★
横藤校長は、次のような言葉で子供たちに自分たちの生き方の位置づけを提起している。
「私たちは、幸いにも大きな被害に遭うことなく、こうして
卒業式を迎えています。そのことに感謝しましょう。心から
感謝しましょう。そして、まず私たちが一足先に幸せになり
ましょう。
人を本当に幸せにできるのは、自分は幸せだと感じている
人だけだからです。だから、笑顔がいっぱいの中学校生活に
しましょう。
でも、笑顔の奥に、今回被災された方たちのことを忘れず、
周りの人への優しさや人のために強くなれる心をもっともっ
と大きく育てていきましょう」
新保校長は、「未来の教科書」という言葉を提起している。これはユニークだ。
「みなさんは、歴史の大きな変わり目に、小学校を卒業したことになります。
今回の地震は、
日本の歴史を変えた
日本の社会を変えた
大きな地震として「未来の教科書」に書かれているはずです」
★
2人の式辞は、おそらく子供たちだけのことではない。
今まで大きく日本人の価値観を揺さぶり、変えていった日本の転換点。
それは、あの明治維新であり、あの敗戦のできごとであった。
それに、今回の2011年3月11日の東北・関東大地震が付け加えられよう。
日本人の一人一人が、自分の立場、自分の仕事で、これからどうしていくかを考え抜いていく、そのような方向が与えられたのである。
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