いじめ自殺事件、その後
前回のブログで、桐生市の小学校でのいじめ自殺事件について書いた。
もう一度、学校という立場、教師という立場から書いておかなくてはならないなと思った。
37年間担任としてクラスを受け持ってきた。
最後の10年以上は、高学年の担任であった。
学校現場にいると、マスコミや学校関係者、市民の方々が考えていることと違う世界が見える。
その世界は、ほとんど明らかにされていない。
そのことをちょっと書いておきたいという気持ちになった。
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マスコミなどの人たちが、今回のいじめ自殺事件を考える時、学校や担任の甘さ、怠けなどを指摘されている。
「もっときちんといじめに対して指導しておけば、こんな事件は起こらなかったはずである」という指摘である。
マスコミの報道を読み、外から見ていれば、そのように見えてしまう。
現場での子供たちの実態が分かっていない人たちは、必ずそのように思ってしまう。
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学校現場でのいじめは、そんなに簡単なことではない。
いじめをしている子供が分かり、きちんと厳しく指導する。そうすれば、いじめはなくなる。
このような図式で考えられる限り、現実はまったく見えない。
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今回の担任の先生も、何とかしようと身構えられて、さまざまに手を打たれてきたはずである。
でも、何とも子供たちが動かない。
学級崩壊状態になっていたのである。
担任の先生は、とても誠実な人で、真面目な先生であった。がんばられてもいた。
マスコミでの無能教師というイメージのレッテルは、事実とは違う。
なぜ、こんなことを言うかというと、私が得た信頼すべき情報で言っているからである。
いじめに対して手を拱いて、サボったわけではない。
担任の先生の教師としての力量をはるかに超えて、どうにもならない段階で子ども集団がいたからである。
この学年の子供たちは、担任一人の努力ではどうにもできない段階になっていたはずである。
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こういう現実は、マスコミ報道などでは見えない。
無能で、ただ逃げまくるような存在として学校や担任は、見えているのであろう。
私たち教師は、こういう事件があれば、ほとんど反論する事態はまったく許されていない。ただ、一方的に打たれ続けるだけである。
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私もまた、いじめの事態に何度も立ち会ってきた。
うまく解決できたこともあったが、何回かは解決できなかった。
表面的ないじめはなくなったが、クラス集団が、その子を包み込めるようになったかというと、そうならなかった。
90年代からは、そのようになることがよくあった。
私の教師としての力量もなかったかもしれないが、子供たちの実態は、はるかにその力量を超えていた。
今回の桐生の事件は、どこにでもある、それこそありふれたいじめ事件である。
このようないじめを抱え込んでいる日本全国の教師(とくに高学年教師)は、ごまんといるにちがいない。(だから、今回の事件は心配なのだが)
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何が壁になるか。
子供たちの価値観である。
子供たちは、「いじめ」がいけないことだとは思っている。
まだ、子供たちの価値観が、「善悪」であったときには、この価値観に訴えればほとんど解決することができた。
だが、その「善悪」の価値観から「快・不快」の価値観に移っていったとき、(私は、80年代の半ば頃からそのように移行したと思っている)様相は一変していった。
「いじめ」がいけないことだということで、子供たちは動かなくなったのである。
そんなことより何よりも、「あいつむかつく」「あいつむずい」「あいつきもい」…という不快な感情が何よりも優先する。
そこから「無視しようぜ」「仲間はずれにしよう」ということが出てくる。
暴力的ないじめは、もうほとんどない。
今でも思い出す言葉であるが、あるいじめをしていた女の子の言葉で、「私はいじめっこで~~~~す」と平気で口にしていた。
「善悪」には、訴えることができるが、「快・不快」はむずかしい。
どんなにいじめはだめだといっても、快・不快の感情を放逐することはできないのである。
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だから、今までの「いじめ」対策を大きく転換しなくてはならない、と思い続けてきた。今までの対策では無理である。
ましてや、マスコミなどが問題にしている「厳しくきちんと指導する」ぐらいでいじめがなくなることはまったくありえない。
本格的にきちんと考えなければいけないはずである。
とりあえず、次のようなことは必ず実現していかねばならない。
①学校としてのいじめ防止対策をシステム化する。
②小学校は、もう個人にクラスを任せていくという発想からチームとしてクラス
を考えていく発想に転換していく。
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