問題の核心はここにあった~「その子育て科学的に間違っています」~
横藤先生からのお薦めの本を早速アマゾンから取り寄せた。
高知へ行く飛行機の中で読んだ。
「その子育ては科学的に間違っています」(國米欣明著 河出書房新社)という本。
読みながら驚いた。
このような画期的な本を今まで目にすることができなかったことを悔やんだ。
このオリジナル版が、2007年に三一書房から出ていたのである。
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この本は、プロローグの中で次のように指摘する。
「ハイリスクの子」(危険度の高い子)ともいわれる「すぐキレる子ども」
たちの出現、「子ども中心の子育て法」を導入し、実践してきた国々に、
その育児法を導入した後から多発し、重大な問題になった特有な現象 です。
しかも、その「ハイリスクの子」は、数々の性格的欠陥をもっていて、
その影響は学校教育を困難にし、子どもの学力に影響するほど深刻です。
特徴は「自分の感情が抑制できない」ことです。
どこに本質的(科学的)にまずい問題があったのでしょうか?それを考え、
どこをどう改善したらよいのか、そして信頼の置ける現代の「子育ての基本
原則」(プリンシプル)とは何なのか、それを本書では可能な限り明らかに
してみたいと思います。
國米先生は、認知神経科学(脳科学)の視点から問題を指摘していく。
★
問題の核心は、「子ども中心の子育て法」にあったのだと、次のように諸外国の例を紹介する。
アメリカ合衆国は1990年代のなってから、認知神経科学や認知心理学が明らかにしてきた多くの根拠をもとに、「子ども中心主義」の子育ての誤りに気がつき、大いなる反省のもとに1997年からの別の道を選択しました。それが教育現場の「ゼロ・トレランス方式」の導入だったのです。それを境にして、アメリカの家庭での「子ども中心の育児法」も、大きく方向を変えました。現在までに十数年が経過して「ハイリスクの子ども」が大量生産されることもなくなり、教育現場に平静さがもどって学校教育の質も改善されています。
また、イギリスの元サッチャー首相も、いまから10年以上前になりますが、その政権当時「子ども中心主義」が教育荒廃の根本原因だと強く批判し、教育水
準局を新設して偏向教育の是正をはかり、それなりの成果が上がってきています。
10年前には荒れていたスウェーデンも、さまざまな対策によって、いまでは
改善されています。数年前から校内暴力に悩まされているドイツは、いま緊急の対策を迫られています。
同じように「子ども中心の子育て法」で子育てをしている多くの日本の実際は、これほどの大きな問題を抱えながら、ほとんどと言っていいほど根本的な対策を取れないでいる。
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私は、「困難な現場を生き抜く教師の仕事術」(学事出版)の中で、子供の変化を「児童変貌論ノート」という形で展開している。
子供たちの変化は、どこから、どのような形で起こったのか。
その原因とは何か、というのを私なりに追求している論である。
1970年代に、日本で展開された消費資本主義が、決定的に日本の子供たちを変えていったと、私はこのノートで指摘している。
日本が、<生産>を中心とする時代から<消費>を中心とする時代に大転換を果たした時、<子どもたち>は<大人社会>の先を駆け抜けるたくましいランナーになったのである。
そして、子供たちの変貌を<位置の転換>という視点からとらえている。
社会の中では、消費をする主人公として登場するようになった。家庭の中では、大人との関係で常に下に見られる存在から、家庭の真ん中にすわる存在になった。
学校では、勉強を教えてもらえる<生徒>から、先生を単なる大人か友だちのようにしか考えない、単なる<子ども>がウヨウヨいるようになった。
社会も、家庭も、学校も、いつのまにか大手を振って歩き回る<子どもたち>に振り回されている。そこでは、はっきり<位置の転換>が図られたのである。
だから、「子ども中心の子育て法」は、こういう大きな<位置の転換>の中で展開された子育て法と考えた方がいいと、私なら考える。
★
この本は、多くの先生たち、親たち、行政の人たちに読んでほしい。
子育ての方法を原点に戻していかなければ、このままでは多くの人たちが疲弊し、学校が崩壊し、日本は内部から壊れていく。
そのことを考えさせてくれる画期的な本である。
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