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中1ギャップの問題について

   朝日の週刊誌「AERA」から取材を受けた。
「中1ギャップ」についてである。
 このことは、数年前から登場してきた名前であろうか。
 中学1年の生徒たちが、5月の連休が明ける頃から、学校へ行くのを渋る状況が現れるという現象である。
 私は、当然出てくるであろうと思っていた。
 すでに、「中1ギャップ」(学事出版)<石川晋、石川拓、高橋正一著>という本が世に出ている。
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 私にとっては、佐世保小6殺人事件が大きな衝撃であった。
 同じグループの中の女子が加害者と被害者にわかれて、衝撃的な殺人を行った事件である。
 私は、夏休みに早速その事件があった現場に行った。
 風光明媚な土地で、自然が豊かな、落ち着いたところに学校も、加害者の自宅もあった。おそらく、学校の関係者は、驚愕の事件であったのであろう。
 私は、事件を検討しながら、その時、「もし…」という命題を2つ立てた。
 もし、保護者が、加害者の私立受験という名目で大好きだったミニバスを止めさせなかったら、あの事件は起きなかったのではなかったか。
 もし、被害者の女子たちから離れて孤立していた加害者の動向に、担任が注目し、相談相手になっていたならば、あの事件は起きなかったのではないか。
 事件は、こんなことで解決できたはずはないのかもしれないが、私は、そのように思えてならなかったのである。
 ★
 あの事件以降、私はさらに女子グループの動向に注目し、もめごとをキャッチしたならば、こちらからどんどん話をするという方針を選んだ。
 今、高学年担任の第一の課題は、女子グループの問題であり、彼等といかに交わし合うかという姿勢を持てるかどうかである。
 私は、そのように考えてきていた。
 今、小学校高学年は、かなり深刻な状況にあり、高学年担任は、特別な仕事となってきているのである。
 ネットと携帯が、この状況をさらに増幅させていったと、私は思う。
 これもまた、かなり深刻である。
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 だから、この高学年の状況は、そのまま中学校へ持ちまれていき、新たな問題を起こしていくだろうと、当然予測できた。
 それが、中1ギャップだったのではないかと思っている。
 中学校の先生たちは、小学校の高学年が、このように深刻な状況になっていることをまだあまり分かっていない、分かろうともしていないのではないか。
 だから、従来の方法でしか対処できていないのではないか。
 小学校の担任は、ずっとクラスにいて、必然的に子供たちの動向が目に入る。
 しかし、中学校の担任は、教科担任制で、よほど意識的でなければ、子供たちの間で起こっている問題は目に入らないはずだ。
 そのシステムだけでも、問題発見に圧倒的に中学の担任は不利になる。
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 どうしたらいいか。
 今、中1ギャップについて、中学校へ馴染めない子供たちが多くなっていると分析し、馴染める処方箋をとっていこうという試みが多くある。
 もちろん、必要なことである。
 私も、6年生の時には、そのような試みをいくつかしてきた。
 しかし、以前も同じ状況にあったわけであり、急に今子供たちが中学校へ馴染めなくなっているわけはないはずである。
 そこに問題の核心があるとは思えない。
 小中連携を強めていくことしか、とりあえずの方向はないように思える。
 小学校の高学年が、前代未聞の深刻な事態になっていることを中学校の先生たちに分かってもらうことが先決である。 

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コメント

お久しぶりです。
ほぼ毎日、野中先生のブログを拝見しております。
「中1ギャップ」
私ももう、10年前位から気になっていました。
毎年、入学してくる1年生(ついこの間まで6年生)に「違和感」を感じることが増えてきたからです。どこがどう変か?毎年その「変」加減が変わるので何とも言えませんが、強引に一言で言えば「コミュニケーション不全」です。
「自分だけをみて!」と迫り、少しでも、その視線を教師が気がつかなかったりすれば、「だだ」をこねる。そんな感じの生徒が増えてきました。
また、誤解があってはいけないので、はっきりさせておきたいのは野中先生の「しかし、中学校の担任は、教科担任制で、よほど意識的でなければ、子供たちの間で起こっている問題は目に入らないはずだ。 そのシステムだけでも、問題発見に圧倒的に中学の担任は不利になる。」という部分です。そうでしょうか?教科担任制というのは、六時間あれば、六人の教師の目がある、ということです。
多くの中学校では担任という「単眼」ではなく、学年というチームの「複眼」で生徒をみているはずです。だから、必ずしも「不利」ではありません。また、最近問題な「中1ギャップ」の対象生徒は「私立中学校挫折組」です。意外と小学校では「できる」と思っていた自分。あいつには負けないと思っていたのに、受験で全て不合格。こういう生徒の「深い」挫折感はとても大きく、入学時に「どうせ俺なんて」という想いでいる生徒が増えました。都市部の公立中学校にとって、これはとても大きな問題です。
ですから、まず安易な中学校受験をさせないこと。それから、特に高学年担任と中学校教師は、ともに学ぶ機会を増やすことです。私はたまたま、友人や教育サークルで小学校の先生方と腹を割った話ができます。こういう関係をもっと増やすことだと思います。
いかがでしょうか?

投稿: 合田淳郎 | 2010年6月18日 (金) 23時39分

 合田先生、コメントありがとうございます。
 指摘されたこと、確かに、確かに、不利とは言えませんね。
 私は、担任という立場で考えただけで、6人の違った目で見ていけば、確かに不利とは言えないでしょうね。
 ただ、小学校の担任は、子どもたちの全てを通して一日見ていることができるという有利さはあると思うのです。だから、ちょっとした問題をつなげて把握することができる有利さですね。
 中学校は、チームとして把握していくことができる利点はあると思います。
 小学校は、まだチームとしての発想がない(システムにない)ので、高学年での問題に対処する方法を身につけていません。そこが大きな問題です。

投稿: 野中信行 | 2010年6月19日 (土) 09時15分

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