若い世代に伝えたい法則化運動の教訓
「今日は、私も授業をやりましょうか?」
と、その日、3時間の授業をした。1年生のクラスでのこと。
初任者指導教員として、時には示範授業をして、見本を示すことになっている。
私はしょっちゅう行う。
ほとんどがぶっつけ本番の授業である。
その日も、ぶっつけ本番。
朝、どこを授業すればいいかを聞き、それで始める。
その日は、体育、算数、国語の授業。
体育は、鉄棒運動とボール運動。算数は、発展教材としての「とけい」の授業。国語は、「じどうしゃくらべ」の1時間目。
教材研究をしていない授業である。
そんなものが示範授業になるのか?
充分なると、思っている。
授業は、当然教科書に従ったものになる。
何を1時間の本時目標にするか、どういう段取りで授業を進めるか、ノートへ書かせることは何かなどを瞬時に考える。
頭にあるのは、空白の時間をなるべく作らないで、テンポ良く授業をすること。
授業スタイルは、一時に一事の原則を使い、個別評定を駆使し、できるだけ多くの子供に発言と作業をさせるようにするというものである。
……と書いているが、何せぶっつけ本番である。その場任せになる。
★
こういうぶっつけ本番の授業が、初任者にとってはすごく勉強になるのではないかと最近思っている。
授業は、初任者の授業に限りなく近くなる。
でも、違う。
何が違うんだろうと、考えさせる。
昨年の初任者(少人数学級、算数)にも、同様なパターンで授業を行った。
初任者が、1組の授業をする。
まったく同じ流し方で、2組で、私が授業をする。
「どうだ?」と聞く。
「まったく同じ流し方なのに、まったく違う授業です!」と…。
「どこが違うと思うの?」
「??分かりません!」
私は分かっている。
私は、授業を発問・指示・説明のそれぞれにおいてはっきり区別し、使い分けている。初任者は、発問なのか、指示なんか分からないような使い方をし、説明も曖昧である。
そこの違いで、授業が違っている。
それが分かって、初任者は、3組での授業を行ってみる。
そんな取り組みを何度か、やってみたことがある。
★
初任者のために、それぞれの教科の主任の先生達が、示範授業をしてくれる。
これが、なかなか示範授業にならないことがある。
特別な授業を要求しているわけではないが、授業の基本を踏み外していく授業をされたら、示範にも何にもならない。
悪しき授業(初任者にはそれが分からない)の模範を教えていることになる。
最低限の授業の基本とは何か。
1,本時のねらいを明確にし、そのための授業を組み立てている。
2,発問・指示をきちんとして、説明を明確にする。
これだけである。私は、その善し悪しを問うていない。
しかし、これだけのことが主任の先生たちにできないことがある。それは、何なのだろうか。
身につけないままに、今まで過ごしてきているというわけであろう。
今、このことは、少数の例ではない。そこがちょっと深刻だと、私は思っている。
★
北海道の「ぶらっしゅ・あっぷ教師力」(手作りの教育雑誌)に、私は、連載している。
今回の2号の特集テーマは、「教育技術の法則化運動」の教訓 である。
私も、その原稿の依頼を受けている。
特集解説には、次のように書いてある。
「教育技術の法則化運動」を知らない世代が現場の多くを占めるようになってきました。それに伴い、「法則化運動」を知っていれば起こらなかったトラブルが頻発しています。「法則化運動」を外側から眺めてきた我々にとっても、この状況には忸怩たる思いを抱きます。「法則化運動」が歴史と化している現在、私たちは彼らに何を伝えなければならないのでしょうか。中堅・ベテラン教師が提案します」
時機を得たテーマである。
今更「法則化運動でもないだろう!」と思っておられるかもしれない。
しかし、現実には、法則化運動が提起した貴重な教訓が、法則化運動を知らない世代にまったく伝わらないままに過ぎていこうとしている。
これは深刻なことである。
なぜ深刻かというと、授業の基本的なことがほとんど伝わらないままに、テキトーなことをみんなし始めていると思えてならないことである。
★
私が、ぶっつけ本番の授業をし、しかも初任者の授業よりも良い授業(多分)をしているのは、法則化運動が提起した教訓をきちんと身につけてきたからである。
そのことは、絶対に若い世代に伝えなければいけない。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 「自己流」で身に付けた力量で対応できなくなっている!(2019.03.16)
- 『教師1年目の教科書』が重版になる!(2019.03.13)
- 再び横浜野口塾のお知らせです(2019.03.10)
- つれづれなるままに~飛行機ができてきた~(2019.03.09)
- 『教師1年目の教科書』(学陽書房)が発売される(2019.03.05)
コメント