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演じればいいのだ

   ふとNHKの生活ほっとモーニングを見ると、山際寿一さんと平田オリザさんとの対談があっていた。

 「ゴリラに学ぶ家族のいい関係」というのが、テーマである。

 久しぶりにおもしろい対談だった。

 平田さんは、「演ずるというのは、マイナスイメージで受け取られているが、それぞれが自分の役割を演じていかなくてはならない」と強調されていた。

 私も、造語である「生徒する」「教師する」という言葉は、ともすればマイナスイメージで受け取られてしまうが、これは大切なことである。学校では、それぞれがきちんと演じなければいけないことなのだ。

 平田さんは、最後に言われた。

「今、子供の中には、『良い子を演じるのに疲れた』と言うようにギブアップする子供がいるが、こんなことに疲れない子供を育てて行かなくてはならない。ほんとうの自分なんてないんだから、自分というのはそれぞれ関係の産物でしかないのだから…」

 私は、ここのところが最も大切なところだと受け取れた。

 ★

 一時「ほんとうの自分探し」をしようということが流行ったことがあった。

 今でも、多くの若者がそのように思っているのではないかと想像する。

 私たちも、誤解しているところがある。

 「あの子は、学校ではあのように良い子に見せているけど、ほんとうはすごくわがままで、自分勝手なところがあるらしいの。家では、すごいらしいよ」と言い交わすことがある。

 学校で見せる顔は、仮の顔で、ほんとうの顔は、隠したままであるというように。

 誰も気づかない、ほんとうの自分がある。それが、当たり前のように考えられている。

 私は、違うなあといつも思っていた。

 人間を理解する方法を逃してしまうよと、思い続けてきた。

 ★

 11日の月曜日に、思い立って東京の町田に「ターシャ・テューダー展」を見にいった。

 アメリカバーモンド州の山中で、ほとんど自給自足の生活を営みながら、花を育て絵を描き、現代人にとっては夢のような生活を実現させて、世界中の人たちのあこがれの的であった。また、彼女の描いた絵本は、世界中の大人から子供までを楽しませている。

 92歳まで生き、昨年亡くなった。

 月曜日だというのに、多くの人たちで溢れかえっていた。

 やはり、ターシャは、みなさんのあこがれの的であるのだ。そう思いつつ、展示品を見ていった。

 私は、彼女の言葉にずいぶん励まされた。

 それは、普通の日常をどのように生きればいいかを簡単な言葉で明らかにしてくれたからである。

 しかし、ターシャ自身は、みなさんが憧れるとは反対に、「自分は、意地悪で頑固、横柄で執念深い」と公言していた。

 また、マーク・トウェーンの言葉を引用しながら「みんな月と同じように、だれにも見せない影の部分をもっている」とも言っている。

 正直な人だなと思った。そういうことをきちんと公言しているだけでも、ターシャをすごい人だと思ってきた。

 「みんな月と同じように、だれにも見せない影の部分をもっている」なんて、当たり前じゃないか。

 しかし、それは、ターシャの一つの顔であって、ほんとうの顔なんかではない。

 そう思っていた。

 ★

 人は3つの顔を基本的に持っている。

 1つは、みんなの前で見せる顔、2つめは、家族の中で見せる顔、3つめは、一人の時の顔。

 それぞれが違う。それぞれの関係の中で見せる顔であり、これがほんとうのその人の顔であるということは言えない。

 大切なのは、それぞれの顔をきちんと演じればいいのだ。

 「私は、ほんとうはそんな顔じゃない」なんて言わないで、それも私の顔だと思って演じればいいのである。

 その顔を拡大することも縮小することもしないで、等身大で演じればいいのである。

 きっと平田さんも、そう言いたいのだと思った。 

 

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コメント

私も朝の対談みました。とても興味があり面白いトークでした。出勤前のバタバタしたときなのであまり聞けなかつたのが残念です。このブログで分かりました。

投稿: 団塊のおばさん | 2009年5月15日 (金) 16時56分

まったく同感です。
いいお話でした。なんだか気が楽になります。
どの顔も自分。そう思っていけば、楽になりますよね。ありがとうございます。

投稿: ムッシュ | 2009年5月16日 (土) 06時17分

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