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その灯りは、自分で灯さなくてはならない

 親しい知り合いの先生からメールをもらった。

 関西青年塾の講師の荒井賢一先生が、「学級づくりは、覚悟と技術です」と言われたということだった。

 ずばり、うまいことを言われるものである。

 私ならなんと言うだろうかと考えてみた。

 「覚悟」という言葉に替わる言葉というのは、あるのだろうか。

 「決意」、「プロ意識」……という言葉を考えてみたが、どうもしっくりしない。

 やはり、「覚悟」というのがいい。

 学級崩壊立て直し記のA先生の「腹のくくり方」がまさにこの「覚悟」に当てはまる。

 荒井先生、すみません。この言葉をパクリます。

 そして、つぎのように言いたい。

 「学級づくりは、覚悟とビジョンと方法です」

 ★

 全ての組織のトップたちは、「覚悟とビジョンと方法」の3つを持っていなくては、もはやその組織を動かしていくことはできなくなっている。

 もちろん、担任教師もまた、学級組織のトップの位置にいる。

 「覚悟」が、いるのである。いま「学級づくり」さえも、腹くくらなければできないほどのものになっている。

 「ビジョン」とは、「学級をこうしていきたい」という抱負である。

 初任者の先生達には、とても思い描けないのかもしれない。しかし、この抱負があるからこそ、子供たちへ向かっていける。

 ところが、最も大切なのが、この「方法」である。

 だいたいが、覚悟やビジョンがあっても、空回りする。方法論を持っていないためである。

 方法は、2つ。

 1つは、組織にいる人たち(子供たち)をどのようにしてその気にさせていくかである。

 2つめは、具体的な仕組み作り、システム作りなどの手立てがきちんと打てることである。

 ★

 A先生の学級崩壊立て直し記についての感想などが多数送られてきた。まことにありがとうございます。

 返信を送れなかった方が多数おられる。全部きちんと読ませていただいた。

 記して感謝に代えたいと思う。

 さまざまな感想の中で、学級へ入られた1時間目の算数の授業は、どのような授業だったのか、という問い合わせが多数寄せられていた。

 A先生に問い合わせをした。

 「どんな授業だったのかという質問が多数寄せられています。」

 A先生は、そのことについて、手紙をくださった。

 文面そのままには、紹介できないが、箇条書きにすると次のようになる。

  1. まず、そのクラスに入るときは、そのクラスの子たちを“まず、こちらから好きになる”、そんな気持ちで始める。どんな子供でも、その言動の裏には必ず“気持ち”があるから、そこをくみ取れば、いとおしくなる。
  2. だから、このクラスに入るときも、(他のクラスもそうですが)ニコニコして入っていった。もう腹をくくっているので、逆に、どこまでこの子たちを集中させられるかと、楽しみでもあった。
  3. がんばろうとしている子を見つけて、かたっぱしから認めていって、授業に巻き込んで、子供たちをがんばらせていった。
  4. いろいろな事情を背負っている子供たちもいる。しかし、学校ぐらいは、教室ぐらいは、子供たちにとって安心していられる場にしなくてはいけない……と、楽しい場にしなくては……と崩壊クラスに限らず、毎年、どの学校でも、そう願って授業をしていた。
  5. ですから、たとえ週1回の授業でも、先生が先生として物理的にも、精神的にも、そのクラスにドンといて、子供たちを受け止めていくこと……私は授業の技術もないので、せめてそのくらいのことはさせていただこうと…、思っていた。

 A先生は、5,6年の教師生活をされて、結婚退職されている。二十代の時である。

 そして、8年前に、非常勤講師として現場に戻られている。

 しかし、A先生の教師としての「覚悟」は、並ではないということを文面から読み取れると思う。

 現場の教師達が、子供たちと真正面から向き合うことを避け、逃げ始めようとしている(?)時、A先生は、まさに独自に、このように子供と向き合おうとされていたのである。

 ★

 A先生の崩壊立て直し記を紹介してきた私に対して、「おや、野中の今までの主張点と違っているのではないか」と思われた方もいると思う。

 確かに、A先生の子供のとらえ方と私のとらえ方は、違っている点がある。

 私の場合の子供のとらえ方は、もっと悲観的である。

 日本全国の崩壊しているクラスでの中心の子供たちを、A先生が紹介しているクラスの子供たちと同じように考えることはできないとも思っている。

 私は、日本全国のさまざまな事例を耳にしながら、その凄まじさに言葉を失う。

 だが、あえてA先生の崩壊立て直し記をどうしても公開したいと思ったのは、その現実の中で、こうして子供たちに立ち向かい、その壁を越えていこうとするA先生の心意気に感動したからである。

 そして、この心意気には、きちんとした「ビジョン」と「方法」が備えられていたことを読み取ったからである。

 考え方の違いなどというものに拘ることなんか、たいしたことはない。

 私は、どうしてもこのA先生の心意気を、私のブログを見ている先生たち(私が信頼し、多くの期待を込めている先生たち)に伝えたいと思ったからである。

 ★

 ふと目に留めた、NHKのクローズアップ現代のピーター・ゲルブの言葉には、吸い寄せられるような余韻があった。

 観客が高齢化し、動員数が年々減少する中で、古典芸術を復興させたいと新たな仕組み作りに挑戦しているのが、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の総裁に就任したピーター・ゲルブ。

 時代が大きく動く中で、いかに魅力的なオペラを作り出し、改革を成し遂げていくのかが問われている。

 ゲルブは言った。

「出口の灯りは見えるが、それは自分で灯さなければならない」

 私たちは、出口の灯りさえも見えないが、しかし、その灯りは自分で灯さなくてはならないことだけは確かだと、ぜひとも知っておいてほしいと、……。 

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コメント

野中先生
そしてA先生

記録を公開してくださり、大変感謝しています。
算数の1時間の内容、うなずくところばかりでした。
私も昨年・・・だったクラスをそのまま引き継ぎ、
今卒業させようとしています。
まさに「覚悟」の学級開きでした。
A先生の記録や野中先生の解説を読んで、自分の至らなさも痛感しました。
あの記録を何度も読み直して、自分の力にしたいと思っています。
ありがとうございました。

投稿: 岡山 松森 | 2009年2月21日 (土) 00時23分

私は5回荒れたクラスにかかわりましたが、2つの方法に似たような方法で毎回対応しています。
カウンセリングを受けに来る方、学級経営での相談等でも概ねこの2つの方法を意識してセッションしています。
当然いろいろな解決方法があっても良いわけで、野中先生のように、皆さんが納得しやすく活用しやすい形を提示なさるやり方、A先生のご実践のように、しっかり向き合うようなやり方等、多くの形が今後もいろいろな形で発信され、「この方法なら自分でも出来る」と悩み、苦しむ教師が自ら選択できるようなものを形に出来ないものかなあと思っています。
私八巻は、教師も子どもも、保護者もその気にさせる“その気理論”を提案したいと思っています。
勉強になりました。

投稿: やまかん | 2009年2月22日 (日) 10時23分

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