一番に言いたくなる言葉が、一番の禁句
以前、サッカー代表監督をしていた岡田監督(今もしているが)が、言っていたことがある。
「言葉っていうのは難しいですねえ。今の選手たちは、『精神的』という言葉を使うと、それだけで拒否反応を起こすのですよ。だけど、『メンタルが弱い』というと素直に聞き入れるんですね」
なるほどそういうものか。言っていることは、同じなんだけどなあ。今でもサッカー界では、「精神」というのは、禁句になっているのだろうか。
若い選手に届くためには、少しでもスマートにいわなくてはならないようだ。
こういうふうに言ってはいけないこと、こう言ったほうがいいだろうということは、どこの世界でもありそうだ。
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オリンピックでの星野ジャパンの陣容を知ったときには、「これでは勝てない」と私は思った。
案の定、惨敗であった。
組織論という考え方がないなと思ったのである。
会社で、社長、部長、課長が全部60代とするなら、20代の若い従業員と気持ちが通じないというのは当たり前である。
星野仙一、山本浩二、田淵幸一という60代3人組が、若い人たちに星野野球の考え方を徹底しようと思っても、それはハナから無理だった。
20代前半の選手達に対して、40歳も離れている連中が、しっかりしたコミュニケーションがとれるはずはない。
私なら、もっと若手のコーチ達を選んだはずである。
監督と選手のハートが分かるコーチが間に立たないことには、チーム作り、組織作りはできないからである。
いわゆる若い選手に届く言葉を持っているかどうか、である。
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ずっと以前に、まだパソコンが一般に普及し始めたころのことである。
パソコンショップでの禁句ということがとりあげられていた。
当時、パソコンショップでは、PC商品には近づかず、遠巻きにうろうろしているおじさんがたくさんいた。パソコンには興味があるが、機会ものには弱い。そんな人たちである。
そのおじさんたちに、店員が言ってはいけない言葉があるというのである。
その禁句とは何か。
正解は、「簡単ですよ」なのだという。
私が、もしその店の店員だったら、絶対に何回も言っていたと思う。それしか言いようがないからだ。
それが一番親切だからだとも思う。
しかし、それが禁句というのだから、驚いたことがある。
よく考えると、実は、その言葉が一番彼らを傷つけるのだろう。
さすがに現場の人間は、よく分かっているものである。
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私たちも、知らず知らずのうちに人を傷つけていることがあるはずである。
たとえば、鬱病の人に、「がんばれ」が禁句になっているのは、代表的な例である。
そこで考えるのだけど、ほんとうは、一番に言いたくなる言葉が、一番禁句になるのかもしれない、と……。
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