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へこむんじゃないですよ。凌ぐのだ

  14日(金)は、朝7時30分にタクシーで新横浜へ向かう。

 岡山までの4時間。新幹線である。

 そこから津山まで1時間少し。岡山県教育委員会の津山事務所での講演である。

 岡山から津山までの道のり。電車に乗りながら、だんだん不安になっていく。

 少しずつ紅葉が進む、素晴らしい田園風景。ちらほらとある家並み。

 私が予定している講演内容が、果たしてこんな土地に合うのかどうか。

 こののどかな田園地帯で、教師と子どもたちの望ましい関係が実現しているのではないか。

 そこで、その関係をかき乱すような私の話が通用するものかどうか、とてもとても心配になる。

 迎えにみえた参事のM先生に、津山を少し案内してもらう。

「京都とそっくりですね」というほどに、昔の家並みが保存されていて、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

 静かな、落ち着いた津山の街。私は、こんな街が大好きである。

 ★

 なぜ津山まで出かけてきたのか。

 昨年のことであろうか。津山事務所の主事の方からメールがあった。(この方は、橘大学の大学院で研修されていたことが後で分かる。)

 もし講演が実現できるようでしたら、津山に来てもらえるかというメールであった。(この方自身は、教師免許はもたれていなかった)

 まさか、そのことが実現できるとは、実際のところ信じていなかった。

 ところが、津山事務所というのはすごいところで、一人の主事の方のこういう願いを実現してしまうのである。

 この日の講演に、鳥取からH先生、また、知り合いのS先生など車で2時間ほどの距離をかけつけてこられていた。ありがたいことである。

 夜、事務所の所長さんのK先生、参事のM先生、主事のYさんと一緒に食事をした。ざっくばらんに話される所長さんの話に大笑いしながら、この土地でしか飲めないという日本酒を飲ませてもらった。

 これが驚くほどのうまさであった。

 私は、ほんとうは日本酒の通である。外では、ほとんど焼酎のお湯割りにしていて、日本酒は飲まないことにしている。失敗が何度かあるからである。

 日本酒は、後でものすごくきいてくる。だから、調子に乗って飲んでいると、あとで分からなくなる。

 ところが、この日本酒は、ついつい飲んでしまった。それほどおいしかった。

 やはり、飲み過ぎて夜中に目を覚ましてしまった。

 その日は、津山で一泊していた。

 ★

 次の15日(土)は、昼から京都の橘大学での「明日の教室」である。

 池田修先生、糸井登先生、私と3人で語ろうという、今回の企画である。

 20分ずつ最初に問題提起をし、それについて見えている方々に質問を2つずつ出してもらい、さらにそれについて答えていくという企画である。

 50人の人たちの熱気がすごいのである。

 この会の熱気にまさる会合に私はあまり出たことがない。

 20人ほどは、教師を目指そうとする学生である。

 それぞれ3人の持ち味を出して迫ったのではないだろうか。

 私が提起したのは、「学級をきちんと成立させていく10ヶ条」「授業をきちんと成立させていく10ヶ条」「授業前準備5ヶ条」である。

 初任の先生の学級経営や授業を後ろで見ながら、まとめていった項目である。

 ★

 1970年前後に大学紛争があり、(これに私は関わった)1980年の初頭に中学校を中心にした校内暴力が起こり、そして1990年の最後にマスコミを賑わした小学校での学級崩壊である。

 私が冒頭に提起した内容である。

 学級崩壊は、90年の最初から静かに進行していた。最初は、力量がない先生のクラスが荒れるという形で始まり、90年の最後には、どの先生でも、その可能性があるという形になった。

 考えてみると、10年ごとに大学→高校・中学→小学校と問題が提起されてきていることになる。

 そうすると、今はどんな形で問題は進行しているのか。

 一つは、小学校の学級崩壊がさらに深刻になる形で進行していると私は考えている。

 どんな形か。

 一つの学校の学級崩壊が1クラスだけだったのが、2クラス、3クラスと進み、

学校全体が騒然とした雰囲気になっていく崩れ方である。

 実は、「明日の教室」に見えていた方で、私の知り合いの学校は、6年生の担任2人が入院し、5年生の1人が先ほど入院されたと聞いた。

 もうこの学校は、学校としての教育という形を実現できない状態に追いやられているのだと思う。

 ★

 危機を煽っていると考えられるかもしれない。

 「明日の教室」に見えている方は、大阪の方が大勢いる。

 私は、あえて「大阪が一番心配だ」と、懇親会などで話し回った。

 大阪の方、ごめんなさい。

 大阪の中学校の校長先生も見えていた。

 校長先生自ら、困難な事態を切り開こうとされているのである。

 なぜ、大阪なのか。

 今、教育界で一番危ないのが、大阪だと私は思っている。

 全国学力テストの最下位グループだということなのか。

 これもある。

 それよりも「大阪の子どもたちの生活の様子(公立小・中学校)ー児童・生徒質問紙調査より」(ホームページに載せられている)の結果に注目した。

 ほとんど全てが全国を下回るのである。

 全国を上回るのは、「就学援助を受けている」「補充的な学習サポート」などである。

 そして、「授業研究を伴う校内研修の実施回数」も下回っている。

 子どもたちの生活の実態はめちゃくちゃになっているのに、先生達は、その状況に立ち向かっていないのではないかという恐れが見えてくる。

 おそらく、大変な事態が大阪では進んでいるのだと、私は思っている。

 ★

 43年前の学力テストでは、大阪は、トップグループ争いをしていた。

 日本の教育の最先端を進み、民間教育サークルのメッカであった。

 私の若い頃は、大阪の教育にあこがれを持っていた。

 70年代の頃だ。

 それから40年ばかり、一体大阪はどうなってしまったのだろうか。

 橋元知事のもとで進められている施策は、住民の圧倒的な支持があるという。

 しかし、教師達のモチベーションはあがらない。

 給料は、ものすごくカットされ、子供たちの状況は大変である。

 呆然と路頭に迷う教師達の姿が、目に浮かぶ。

 それでも、「明日の教室」に来られていた先生達は、闘おうとされている。

 私は、少しの灯りを見つけたような思いになった。

 ★

 辛いときにはどうするか。プラスの状況が見えない時、どうするか。

 へこむんじゃないですよ。凌ぐのである。

 吉本隆明は、そのような時のことを言っている。

「何もできないなら、しのげばいい。そのうちに何か起こるし、起きなければしのぎきったってことですよ」

  

 

 

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コメント

野中先生、池田です。今回も、ありがとうございました。鼎談と言うのはなかなかスリリングで、私も十分に学ばせて頂きました。

同じテーマを違う立場の切り口から提案をするにもかかわらず、打ち合わせをしていた訳でもないのに、こんなに似ているのかということが驚きでした。

また、来年お待ちしております。よろしくお願いいたします。

投稿: 池田修 | 2008年11月18日 (火) 07時20分

津山をほめていただいてありがとうございますhappy01  
最近は田舎でも教師と子どもの関係は難しいと感じています。野中先生のお話とてもわかりやすく、自分のクラスの子を思い浮かべながら、聞かせていただきました。
ありがとうございました。

投稿: ホルモンうどん | 2008年11月18日 (火) 22時05分

同宿のご縁で南禅寺を散策できたこと、よい思い出になりました。

東京にも先生の話を聞かせたい若手教師が大勢います。その節はよろしくお願いします。happy01

投稿: J.SASE | 2008年11月20日 (木) 06時30分

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