ものすごい歌声であった
先日のことである。4階の多目的室にいた。初任の先生が、少人数学級の算数授業をしていて、私がその指導のために在室していたのである。
そのとき、隣の音楽室より歌声が聞こえてきた。
その歌声は、普通ではない。ものすごい合唱である。
どのクラスなのだろうと、わざわざ廊下へ出て、見に行った。6年生のあるクラスであった。
これは何なのだろうか。こんな歌声を1つのクラスが出せるものだろうか。その驚きである。
4時間目が終わり、指導している音楽のM先生に聞いた。どういうことなのだろうかと…。
「とにかくものすごいクラスです。このクラスは、そのまま横浜市の音楽会に参加しても、ものすごく目立つのではないでしょうか」
という答えであった。
★
今日、音楽の先生にお願いして、そのクラスの音楽の授業を参観させてもらうことにした。
どんな指導をされているのか。
この先生は、NHKの大会で、本校の合唱部を率いて全国大会へ出場する常連校へ押し上げてきた人である。
今年は、関東甲信越大会で惜しくも銀賞になり、全国大会への出場を逃した。
昨年は、全国大会で銅賞になった実力校なのだ。
授業の最初は、挑戦曲への練習である。「四季のソネット(二部合唱)<冬>」である。
音楽の授業では、はじめて扱ったものらしい。
今まで10曲の挑戦曲をクラスで練習し、すべて先生より合格の印をもらっていた。
今回は、11曲目で、中学校などが合唱曲に選ぶ曲にしたということ。
練習をはじめて、驚く。なんと難しい曲なのだろうか。この曲を知っている人は、分かってもらえるだろう。何カ所かで転調があり、しかも二部合唱なのである。
「いい声だ!」「うまいね」「すごいよ」……ほめ言葉を連発して、子どもたちをのせていく。
どうしても乗り越えられない難所があった。
先生は、「息に声をのせる気持ちで」「ひといきで」「高い音のときにはお腹に力を入れて息を強めに」……と指導を加えて、またたくまに乗り越えさえていく。
子どもたちが躓いているところは、即座に「ちょっとちがうかな」と指摘して、何度も練習させていく。
最後に、「○○さんの隣が歌いやすかった人は手を挙げて!」と指示をして、その人の名前を発表させた。
そして、「じゃあ、この人の隣にいきたいと思うところに行きます。今並び替えてごらん」と指示をされた。
2,3分で並び替えが行われた。
そして、もう一度挑戦。
途中で止めて、「さっきよりもいいよ。歌の発信地ができたね」とほめあげる。
叱り言葉はまったくない。したたかな指導である。
おそらくこのような指導の連続で、このクラスは作り上げられてきたのである。
★
もちろん、このクラスだけではない。このようなクラスが、全クラスに波及している。
学級経営の中心に合唱をおき、さかんに挑戦曲を練習している歌声が聞こえてくる。
合唱がこの学校の伝統であり、歌いつないでいく子どもたちは、その合唱にあこがれ、それを自慢の種にしている。
学校作りのヒントがここにはあると私は思う。
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