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 生きるための「型」を身につけよう

   かつて新聞記事に、次のことが載せられていたことがある。

 村田兆治元投手のことである。若い人たちは、この投手については知らないかもしれない。

 現在でも、OBリーグなどで、140キロの速球を投げ続けている。もう60歳に近づいている歳だと思う。

 その新聞記事には、その秘密を次のように書いてあった。

「……その秘密の一端を『週刊朝日』連載の自分のコラム『まさかり戦記』で明かしている。いわく、江夏豊投手が、『最近の投手は型ができていない。いったん型をつくってしまえば楽なのに』と嘆くのを受けて、『自分の中に、速球を投げる型をもっているから』今やほとんど練習しなくても、速球を投げられるんだ、と」

 ★

 「型をつくる必要がある」という言葉を最近よく聞く。

 ところが、戦後この「型」ほと評判が悪いものはなかった。戦前の反動と思われるが、その代わりに「自由」「平等」「個性」がもてはやされた。

 「型にはまる」などという言い方は、個性のなさの代名詞みたいに使われた。

 「型をつくる」ということはどういうことか、ぴんとこないという人はいっぱいいるに違いない。

 たとえば、神戸女学院の内田樹さんは、「型」についてこのように書く。

「人間の『中身』はさておき、まず『型』が正しくできているかどうか、それをチェックするというのが『型の文化』的な発想法です。まず『型』を決める。そして、その外形的な『型』を身体に刷り込んでゆくうちに、『型』は身体の中に食い込むように内面化し、ついには誰もみていない場面さえ、その『型』のせいで、人間は心の欲望のままにふるまうことができなくなる、というのが日本的な倫理教育だったのではないか、とぼくは考えています。キリスト教的なアプローチとは正反対のプロセスなのですが、人間を社会化する目的が、『自分の利己的な欲望を制御して、社会規範を遵守して生きる人間』つまり『市民』を創出するということであるならば、どういうコースを選ぼうと構わないと思います。神奈川県から登っても、山梨県から登っても、富士山は富士山です」(「疲れすぎて眠れぬ夜のために」角川書店)

 この「型をつくる」という発想は、学校で子供たちを、「生徒」するように育てるという私の発想ととても似ていると思っている。

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 この型をつくるという発想は、言葉こそ使われなかったが、70年代までは子供の世界にも身近であった。

 たとえば、「8時までが子供の時間、8時からは大人の時間」という合い言葉は、この当時、ほとんどの家庭で守られていた規範であった。

 8時まではテレビを見て、8時から寝る準備をして、9時には就寝する。

 いわゆる「早寝、早起き、朝ご飯」という習慣は、だいたいどこの家庭でも、当たり前のように機能していたのである。

 もうこのような習慣は、ほとんどの家庭で失われている。

 日本が、どっぷりと消費社会に浸かってしまった結果である。家庭の子育ての機能が大きく崩壊していったのである。

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 生きていく自分の「型」を大切にするということ。

 このことを失っているのだと、最近の事件を考えながら、思い浮かべる。

 これだけは絶対譲れないという志が、まったく成り立っていない。

 「金儲け」のためには、どんなことでもやる。

 大阪の三笠フーズの汚染米の問題は、内部告発で問題化したのだろうが、従業員は、誰でもが倉庫に偽造して置かれていた事故米のことを知っていたはずである。

 しかし、何年も明らかにならなかった。悲しいことである。

 人ごとではない。私たちの一人一人が、もし三笠フーズの職員だったら、どういう立場が取れたであろうか。

 私たちは、絶対にこれだけは譲れないという、生きる「型」をもっていなくてはならないのであろう。

 ★

 冒頭の村田投手の弁。

 「今は、『せいぜい一日に腹筋が300回と背筋が300回、それに手の屈伸が1000回』『わずかそんなものだ』『53歳だから仕方ないだろう』」と、…。

 おい、おい……。   

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