最近の親たちに特徴的なこと、2つ
福岡の小一殺人事件で母親が逮捕された。
この事件が報道されたとき、即座に母親はどうしていたのかと考えてしまった。
案の定、逮捕されるということになってしまった。嫌な時代である。
だが、このように発想するには、根拠がある。
小さな子供たちを抱える母親たちが、深刻な精神的なストレスを抱え込んでいて、それが急増していることを知っているためである。
多分、今回の事件の背景にも、母親の子育ての悩みがあるはずである。
「完璧志向が子供をつぶす」(原田正文 ちくま新書)がある。最近出た本である。
原田さんは、今まで、子育てをしている母親たちに接したり、小児や思春期外来で問題がある子供たちに多く接してきたりして、さまざまな問題提起をされてきている。
高学年の女の子たちが、すでに思春期に入ろうとしていると最初に提起されたのも原田さんだったと思う。
原田さんは、「育児における母親の『イライラ感』の急増は、現代日本の子育て現場の状況を最も象徴する調査結果の一つである」として、「兵庫レポート」を提出されている。
私は、このデータが、今回の事件を裏打ちしていくものになっているのではないかと推測する。
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37年間、ずっと間近で親子の子育てを見つめてきたことになる。
最近の親たちに特徴的なことは、2つある。
1つは、子供と一体化しているとしか見えない親たちである。
このような親は、我が子が学校などで問題化されていくと、それは自分のことのように受け止め、ものすごい反発が返ってくる。自分が批判されていると受け止めるわけである。
冷静に指摘されていることを受け止められない。
それは、我が子に対して距離をおいて見つめられていないことと同じである。
我が子は、家にいるときの顔と学校にいるときの顔では違ってくるという受け止めがない。だから、家にいるときの顔をもとにしてすべてを判断しているわけであるから、問題を指摘されると「そんなはずはない」と、指摘してきた教師たちに対して猛反発をするわけである。
このタイプの子供たちは、小さいときは「聞き分けが良く、素直な子」が多い。
そのように演じていると言っていい。
その子供たちは、親から、強烈に支配され、管理されているので、「素の自分を出せない、出し方がわからない」と訴える。そして、思春期につまづくことになる。
もう一つのタイプは、しつけに無頓着な親である。
往々にして、このタイプの子供は、きかん気な性格を持ち、やりたい放題を繰り返していく。
その結果、社会的なルールが身につかず、学級では、学級崩壊の中心になっていく場合が多い。
親は、「うちの子は、元気者だ。そのうちに落ち着いてくる」と考えているが、
ますます困り果てていく。「していいこと、して悪いこと」がまったく身についていないからである。
このタイプの親には、友達親子、人権尊重親子(私が命名している。子供も一人の人格として尊重していく。だから、ほとんど叱らないで、一人の人間として尊重して育てていく)がいる。
このタイプに共通していることは、「子供を叱らない、叱れない」ということである。
前述した原田さんは、「…現在の子育て現場では『親が子供を叱らない、あるいは叱れない』という奇妙な現象が起こっているのである」と指摘している。
その原因に、3つをあげる。
「ひとつは、『子供の意志を尊重するように!』という考え方が広まる中で、子どもに『しつけ』らしいことは何も言えなくなっているケースである。二つ目の理由は、社会の急激な変化の中で、社会規範が不明確になって叱るべき線が不明確になり、どこで叱るべきか、叱るべきでないか、が分からないケースである。そして、三つ目の理由は、緊張場面を避けたいという親が増えていることである。特に子どもが幼稚園から小学校に通うようになると、子どもは自分の『したいこと』『したくないこと』を強く訴えるようになる。親として子どもと対峙しないといけない場面が多くなる。ところが、子どもと対峙するという緊張場面を避けて、子どもの言いなりになってしまうのである」
この3つの指摘は、貴重である。
特に、緊張場面を避けたいと考える親が増えているという指摘は、子育ての現場に直接関わったものだけが指摘できることである。
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コメント
殴られ怒鳴られほめられぶつかり色々と教育されてきたのですが、今はそうじゃないんですね・・・?子供は大人を見て育ちます。大人がしめしをつけるべきです。何が良くて、悪いのか?わからない内は大人が教えなければいけません。時にはぶつかってもいいと思います。そして、大人も成長するべきです。
投稿: 人間だ者二世 | 2012年9月 7日 (金) 09時21分