全国学力テストが、問題になっている。
中山大臣の発言に端を発している。
「日教組の子供は成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低いんだよ。私がなぜ全国学力テストを提唱したかといえば、日教組の強いところは学力が低いんじゃないかと思ったから。現にそうだよ」
この人が文科省の大臣だったときに導入したものである。
このテストで何を調べたかったかの本音が出てきたとも受け取れる発言である。
朝日新聞は、早速日教組が強いところと学力テストの相関を調べ、「調べたら 関係なし」という記事を掲載していた。
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平成19年度の全国学力テストは、77億の税金を使って、小六と中三約225万人が参加したテストであった。43年ぶりのものである。
目的は、「競い合う心や切磋琢磨する精神が必要」というものだった。
私は、反対ではなかった。さまざまに学力低下が叫ばれている中で、きちんと全国を規模に調査していく必要はあると思っていた。
ただし、毎年やる必要などまったくないと思う。今年の結果も出ているが、昨年度とほとんど同じ結果であると言う。そんなに変わるはずはない。
これだけのお金を毎年使うなら、教員増などの費用に回してほしいと痛切に思う。
結果公表は、現在の形でおおむねいいのではないかと思う。
しかし、この結果をもって、どのようにこれから考えていくかが問われるはずである。
あえて、少し踏み込んでこの問題を考えてみたい。
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インターネットで検索してほしい。
平成19年度の学力テストの結果がさまざまに公開されている。
もちろん、文科省の結果発表をもとに全国都道府県の順位をつけることも可能である。その結果も出ている。
その結果を知ることもできる。その結果を知って分かることもある。
その結果を踏まえて分かることをはっきりしておこう。
<小学校の場合>
- 上位の都道府県は、ほとんど東北・北陸に限られている。秋田、福井、青森、富山、岩手、石川などが上位に連なっている。
- 人口集中地域である都市部では、関東エリアの東京や関西エリアの京都がベスト10に入っているが、総じて振るっていない。
- 特に顕著なのは、北海道エリア、九州エリアの落ち込みである。
- 最下位の沖縄は、戦後日本への復帰が遅れた歴史的背景や学習習慣の違い(宿題がほとんどない)などが指摘されている。
- また、橋下知事発言でクローズアップされた大阪府もまた、不足が目立つ。沖縄、北海道に続いて下から三番目の不足である。43年前の学力テストでは、上位を競っていたことを考えるとその落ち込みは考察に値する。
<中学校の場合>
- 小学校と同じく上位の顔ぶれは、東北・北陸である。富山、秋田、福井、山形、石川、青森などが上位に連なっている。
- 都市部では、東京都が全国平均を下回る30位に急落していることである。おそらく、公立学校のみの比較であるから、小学校の上位の子供たちが中学進学で私立へ行った結果であることが容易に予測できる。
- 興味深いのは、関東エリアでは、群馬県、栃木県が上位校に入っていること。中部エリアからも岐阜県、静岡県が上位に入っている。また、小学校の部では振るわなかった九州エリアでは、熊本県、宮崎県が上位に顔を出している。
- 関西エリア、中国四国エリアからは、上位校は姿を消しているが、香川県だけが孤軍奮闘をしている。
- 下位の顔ぶれは、沖縄、高知、大阪府、北海道ということになる。
このいう分析結果からもっと分析していく注目点を上げておく。
①上位は、東北・北陸である。これは、2年間の学力テストで完全に明確になった結果である。これはどうしてか。
②反対に、塾などへ行く子供たちが多い都市部が、まるっきり振るっていない。これはどうしてか。
③大阪府は、43年前の学力テストの時には上位を競っていたはずであるが、今では下位を低迷している。これはどうしてか。
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こういう注目点にきちんと考察を加えていくことが、今回の学力テストの意義があるはずである。
①②③に、きちんとした考察を加えていくだけでも、学力が不足している都道府県が、これから何をしていくべきかの指針が与えられるはずである。
なぜ文科省が、それをやらないのだろうか。(もちろん、やってはいるだろうが、公表していない。都道府県を特定しての公表には語弊があるということだろうが、少なくとも、上位の東北、北陸の子供たちが、どうして学力をつけているのかの考察ぐらいはきちんと公表すべきである)
この結果考察を公表することのメリットは、どこに学力向上の方向があるのかが明確になり、取り組みの指針ができるからである。
それでも、文科省は、今回「平成19年度の全国・学習状況調査追加分析結果」を公表している。(ホームページ)
次のようにまとめている。
「本分析により、『朝食を食べる』、『学校への持ち物を確認する』、『毎日同じくらいの時刻に寝たり起きたりする』などの基本的生活習慣と正答数との相関が比較的強いことが明らかになった。また、基本的生活習慣は、学習習慣にも関係しており、規則正しい生活習慣と学習習慣の確立が、学力と関係している様が示唆される。
家庭での生活・学習習慣は、基本的には家庭において形成されるものであると想定される。しかし、学校においても、適切な家庭学習の課題を与えるなど、生活・学習習慣の確率に向けた適切な指導を行っていくことが望まれる」
また、留意事項では、次のように加える。これも重要なので記しておきたい。
「本分析により、児童生徒の生活・学習習慣と学力の関係が強いことが明らかになったが、生活・学習習慣に係る特定の項目だけを行えば学力が向上すると短絡的に結論付けることはできないことに留意する必要がある。
例えば、朝食を毎日食べている児童生徒ほど学力が高いという傾向が見られたが、これは各児童生徒自身の特性や各家庭における子育て全般に対する姿勢などを反映している可能性があり、朝食を毎日食べれば学力が向上すると単純に結びつけることはできない。
また、学校の勉強より進んだ内容や、難しい内容を勉強する学習塾は学力とプラス、学校の勉強でよく分からなかった内容を勉強する学習塾は学力とマイナスの関係が見られたが、これで通塾の効果があると結論付けるのは早計である。学校の勉強より進んだ内容や、難しい内容を勉強する学習塾に通う児童生徒と学校の勉強でよく分からなかった内容を勉強する学習塾に通う児童生徒の学力状況がもともと異なっているなど様々な要因から、今回の分析結果が出たと考えられるからである」
先述した①②③の答えが、いくらか示唆されている。
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要するに、「早寝、早起き、朝ご飯」と文科省がずっと提唱していたことが、学力にも大きな影響を与えるということが、全国学力テストで証明されたということではないか。
この意義は大きいと思う。
こんなことは、以前から分かっていたことであったが、(陰山英男さんが今までずっと提唱されていたことであり、私もまた何年もずっとクラスで調べていった結果でそれは裏付けられる)それを全国的にはっきりさせたということは、大きいと思う。
ここからである。
○東北、北陸は、このような学習、生活習慣ができている児童が多い結果だと予想ができるが、ではなぜ東北、北陸なのだ。北海道では、なぜこのような習慣ができていないのか、九州では、なぜできないのか。ここがよく分からない。
○大阪の落ち込みは、この学習、生活習慣がかぎりなく壊滅していっている結果なのか、それとも他の要素があるのか。
ここまでくると、私一人ではどうにもできない。情報があまりにもないからである。
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