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いつも、誰でも、そこから始まる

  北海道を旅した。娘の休みに合わせての家族旅行である。

 帯広から富良野、美瑛へ行った。ラベンダーは、もう終わりになっていた。

 それでも美瑛での前田真三という風景写真家との出会いは、貴重なものであった。

 といっても、前田真三は、もう10年前に亡くなっている。

 出会ったのは、彼が撮った美瑛の写真である。美瑛に設けられた拓真館での出会いであった。

 今まで写真の世界には、まったく興味がなく、前田真三という写真家もまったく知らなかった。

 だが、拓真館に入り、彼の写真を見たとき、その鮮烈さに驚いた。

 絵はがき風の風景ではない。説明風的に見るものに問いかけてくるという風景でもない。

 それは、今まで見たこともない風景写真であった。

 この写真を見ながら、「この前田真三さんが、この美瑛を有名にしたのだ」と思った。

 前田真三は、美瑛に出会ったときのことを次のように書いている。

「…先程から私はあまりにも大きく美しい眼前の風景に心奪われていた。かつてこれだけおおらかで、心にふれる風景に出合ったことがあったであろうか。そして、ふと我に返って何気なく足元から西側を振り返った時、馬の背のようななだらかな丘の上に整然と並んだ一条のカラ松林を見た。それはあたりの風景と実にうまく調和しているというよりも、この丘のカラ松のために丘を取りまく大風景が存在している、という感じであった。私は電気に打たれたように呆然と立ちつくしていた。“これこそ新しい日本の風景だ!”思わず心のうちで大きく叫んだ。急いでカメラを取り出すとカラ松の丘に向かって走った。この丘との出合である」(前田真三集 ブティック社)

 鮮烈な出合いは、いつもこのように訪れる。

 ★

 没10年を記念して、東京の渋谷東急百貨店で「前田真三写真展」が開かれていると言う。

 私も急ぎ出かけていった。多くの人たちで、いっぱいであった。

 今まで私が知らなかっただけで、この風景写真家は、もう有名な写真家であった。

 ★

 3日目は、あの有名な旭山動物園へ行った。

 暑い日であった。それでも人で溢れていた。

 小さな動物園。どこにでもいる動物たち。つぶれかかっていたというのは、まさにその通りであろうと思われた。

 私は、横浜ズーラシア動物園のそばにある小学校に通っていたので、その規模の大きさなどは問題にならないのである。

 この動物園は、何を変えたのか。

 動物の見方を変えた。今まで、物珍しい動物や物珍しい仕草で話題を作り、そこで人を集めることで成り立っていた動物園の手法を、画期的に変えた。

 動物をどのように見ていけばいいか、その見方を変えたのである。

 さまざまな工夫がなされていた。

 ペンギン館、シロクマ館、アザラシ館に人だかりがしていて、入館するには大変であった。

 ★

 風景写真家前田真三も、旭山動物園の人たちも、あちら側(風景、動物たち)が問題ではなく、こちら側の問題であるととらえたところから始めている。

 いつも、誰でも、そこから始まるのである。  

  

 

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コメント

野中先生ご無沙汰しております。ブログ復活めでたいですね。

私はここ5年ばかり毎年バイクで北海道を走っています。今年は仕事の関係で、7月第一週に行ってきました。

美瑛近くの上富良野に3泊し、オフロードバイクで山を走りました。前田新三さんが写した風景を眺めてきました。母の旅行と日程を合わせて、早咲きのラベンダーも見てきました。

またどこかでお目にかかれることを楽しみにしております。

投稿: J.SASE | 2008年8月12日 (火) 03時07分

野中先生、ブログの再開おめでとうございます(^o^)

私は先生の著書であるいくつかの本との出会いがあって、野中先生を師として心の拠り所とさせていただいています。

また~同じ地域で教職についておられる…それが私の勇気になりました(^o^)

今は夏の教育課程にむけて、しんどい?というか充実した夏休みを送っています。
これからのブログ拝読が私の日課となり、一日のまとめになりそうです。
たくさん学ばせていただきます!

投稿: Ma | 2008年8月13日 (水) 05時35分

 夏の北海道、いいですね。見方を変えること大切ですね。誰でもそうなのかもしれませんが、人は自分の経験値でしか判断出来ません。その意味では色々な経験が大事なのでしょうね。
 私もこの夏、沢山の体験をして、夏休み明けに備えて充電していきたいです。

 

投稿: よしドン | 2008年8月13日 (水) 07時10分

北海道に戻ってきました。パソコンを開いて、一番真っ先に野中先生のブログチェック。横浜ではお世話になりました。ありがとうございました。美瑛の風景・・・大好きです。空気の色が見えますよね。といっても、北海道に住んでいながら、なかなか行く機会がなく、写真でしか知らないのですが。旭山動物園には行きました。あそこは動物たちが、人間を観察していますね。というわけで、ブログ楽しみにしています。

投稿: katokyon | 2008年8月13日 (水) 19時59分

石川です。
仙台から東北、道南を経て戻りました。

私は前田真三の写真を拓真館ではじめて見たときに、柄谷行人の「風景の発見」という言葉を思い出しました。もちろん柄谷のそれは、近代における、ということなのですが、でも、この土地で、美瑛の景色を日常の延長として見ていた私にとって、それがこのような美しさのものとして切り取られる=「発見される」ことに衝撃を受けました。

日常=日々を積み上げるということがあるわけですが、その日常=日々自体も、実は、受け手・関わる者によって、違った価値も意味も有する(有しない)ものになる、ということなのだ、と。

旭山動物園についても、全く同じことが言えますが、私はあべひろしさんとも園長さんとも、親しいと言ってもよい近い距離にいましたので、もう少し、その意味を、リアルタイムで理解できていました。

そういう距離の問題もあるのだということも、改めて感じます。

投稿: いしかわしん | 2008年8月14日 (木) 17時33分

12日から郷里の佐賀へ里帰りをしておりました。
さまざまな親しい人たちからコメントをいただきありがとうございました。また、西川先生までも見ていただいているとは驚きました。粋なコメントありがとうございます。

投稿: 野中信行 | 2008年8月16日 (土) 09時58分

野中先生

北海道旅行は私たち家族も3年ほど前、日本語勉強を小6までがんばった上の娘のご褒美に行きました。行った場所はまさに、美瑛富良野の拓真館でした。写真家とは芸術家なのだと痛感させられたのが前田氏です。アメリカではヨセミテを本拠地にしたANSEL ADAMS と私はどうしても重ねてしまいますが。
旭山動物園では、一地方動物園が、正しい優先順位で「動物園とは何なのか」をつきつめた感動を感じました。結局教育にもつながりますね。正しい優先順位で邪念を捨てたときに人に感動を提供できることを立証してくれた動物園と思いました。
 今度北海道にいらっしゃる機会がございましたら、ぜひ陸別町をお訪ね下さい。僕の一番のお気に入りの牛の方が人よりも多い町です。でも日本で一番多くの☆が見ることができます。

投稿: 前川英樹 | 2008年8月19日 (火) 02時37分

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